DeNA 横浜ベイスターズの買収 ゲーム以外の看板を得るため、95億円を投じてプロ野球球団の運営を引き受けるという選択

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時期 2011年11月
当時の社長 守安功
論点 事業投資とブランド
何をなぜ決めたか
概要

2011年12月、モバゲーで急成長したディー・エヌ・エーが、東京放送ホールディングスとBS-TBSから株式会社横浜ベイスターズの議決権66.92%を取得し、プロ野球へ参入した。取得した株式は870,000株、対価は現金6,500百万円で、取得に直接要したアドバイザリー費用等6百万円を加えた取得原価は6,506百万円。日本プロフェッショナル野球組織への保証金等30億円を含めた資金総額は95億円となった。球団は同日付で株式会社横浜DeNAベイスターズへ商号を変更し、のれん5,935百万円が20年間の均等償却で計上された。

背景

取得の理由に挙げたのは、日本プロ野球界の発展への寄与と地域社会への貢献を通じた、ブランド価値・知名度の向上による事業拡大である。当時のディー・エヌ・エーはモバゲーのゲーム関連売上が伸び、2012年3月期の売上高は前期比29.3%増の145,729百万円、営業利益は63,415百万円と上場以来8期連続で過去最高を更新していた一方、会社名の知名度は事業規模ほど高くなかった。引き受けた球団は、企業結合が期首に完了したと仮定した場合の連結売上高への影響が7,604百万円、当期純損失が106百万円と算定される規模であった。

内容

企業結合日は2011年12月2日、みなし取得日は当連結会計年度末に置いたため、2012年3月期の連結業績に球団の損益は含まれていない。企業結合日に受け入れた資産は2,195百万円、引き受けた負債は1,343百万円で、その差額と取得原価の開きがのれんとなった。

IFRSへ移行した翌期の組替では、移転された対価6,500百万円に非支配持分305百万円を加え、取得した識別可能な純資産の公正価値921百万円を控除したのれん5,883百万円が計上された。12月2日から3月31日までの球団の売上収益は453百万円、当期損失は1,220百万円である。2012年9月26日には議決権の30.77%を追加取得し、所有持分は97.7%となった。

含意

球団の運営は当初「その他」に含まれて区分が開示されず、2015年4月の管理区分の変更で「スポーツ事業」が報告セグメントとして新設された。セグメントの売上収益は2016年3月期が9,892百万円でセグメント損失1,003百万円、2017年3月期は13,761百万円でセグメント利益1,087百万円となり、取得から5年目に黒字へ転じた。2016年1月には横浜DeNAベイスターズが公開買付けで株式会社横浜スタジアムの議決権76.87%を取得し、球団と球場を一体で運営する体制が整った。2025年3月期には主催試合の観客動員数が球団史上最多を記録している。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

赤字球団を「最も効く広告」と見なした投資の帰結

この判断の核心は、赤字の球団を損失の源泉としてではなく、会社の知名度とブランドを高めるための出費として読み替えた点にある。取得の理由に据えたのは、プロ野球界の発展と地域社会への貢献を通じたブランド価値・知名度の向上であり、狙いは商品の宣伝そのものというより、事業の規模に見合わない知名度を補い、採用や利用者の獲得を有利に運ぶことにあったと思われる。株式の取得費用と保証金等を合わせた95億円は、売上高が1,457億円に達していた当時の規模からすれば、赤字の続く球団を抱えたまま数年を待てる大きさであった。

もっとも、球団取得を広告と見なす発想だけでは、その後の黒字化までは説明しきれない。ディー・エヌ・エーは池田純氏のもとで集客を立て直し、2016年には球団を通じて横浜スタジアムを取得し、興行と施設を一体で運営する体制を構築した。費用として割り切ったはずの球団は、報告セグメントとして独立した翌期には黒字へ転じている。当初の説明は赤字を許容して参入するための入り口であり、そこから先の企業努力が、費用を資産へ転じる差を生んだと読み取れる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社横浜ベイスターズ 事業の内容はプロ野球球団の運営。企業結合日に横浜DeNAベイスターズへ商号を変更した
譲渡した相手 東京放送ホールディングス・BS-TBS 両社が保有していた議決権付普通株式の一部を取得した
取得の法的形式 株式の取得 対価の種類が現金であるため、現金を交付した当社を取得企業としている
企業結合日 2011年12月2日 2012年3月31日(当連結会計年度末)をみなし取得日としている
取得した議決権比率 66.92% 取得した株式数は870,000株
取得原価 6,506百万円 対価は現金6,500百万円。取得に直接要したアドバイザリー費用等が6百万円
球団取得に要した資金総額 9,500百万円 株式取得費用65億円に日本プロフェッショナル野球組織への保証金等30億円を加えた額
企業結合を行った主な理由 ブランド価値・知名度の向上による事業拡大 日本プロ野球界発展への寄与及び地域社会への貢献を通じて図る
受け入れた資産 2,195百万円 流動資産778百万円、固定資産1,417百万円。現金及び現金同等物321百万円を含む
引き受けた負債 1,343百万円 流動負債1,107百万円、固定負債236百万円
のれん 5,935百万円 20年間の均等償却。IFRSへ移行した第15期の組替後は5,883百万円で非償却となる
のれんの発生原因 事業拡大により期待される超過収益力 球場来場者数の増加、広告売上の増加、球団グッズ販売の増加を見込んだ
連結に含めた被取得企業の業績 含めていない みなし取得日が期末のため。IFRSでは12月2日から連結し売上収益453百万円・当期損失1,220百万円
期首に完了したと仮定した影響額 売上高7,604百万円 当期純損失は106百万円。監査証明を受けていない概算額
追加取得 2012年9月26日に30.77% 所有持分は97.7%となり、持分の変動として資本剰余金に△384百万円を認識した

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第14期(2012年3月期)【企業結合等関係】、第15期(2013年3月期)【企業結合】、第16期(2014年3月期)【子会社】

スポーツ事業の売上収益とセグメント損益

DeNA:スポーツ事業の売上収益とセグメント損益

(百万円) 売上収益セグメント損益 備考
2015年3月期 7,764△1,389 スポーツ事業を新設した際の組替後の前期欄。当期欄としての開示はない
2016年3月期 9,892△1,003 スポーツ事業を報告セグメントとして新設。1月に横浜スタジアムを子会社化
2017年3月期 13,7611,087 取得から5年目で黒字へ転じた。横浜スタジアムが通期で業績に寄与した

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第18期(2016年3月期)・第19期(2017年3月期)【セグメント情報】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • DeNA プレスリリース(2011年11月4日)「プロ野球への参入について」
  • 横浜DeNAベイスターズ 公式サイト(2024年 観客動員235万人)
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第14期(2012年3月期)【企業結合等関係】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第15期(2013年3月期)【企業結合】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第16期(2014年3月期)【子会社】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第18期(2016年3月期)【セグメント情報】【企業結合】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第19期(2017年3月期)【セグメント情報】」
  • 東京放送ホールディングス 有価証券報告書「第85期(2012年3月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」

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