DeNA 任天堂との資本業務提携 相互出資を伴う、スマートデバイス向けゲームの共同開発への着手

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時期 2015年3月
当時の社長 守安功
論点 資本業務提携
何をなぜ決めたか
概要

2015年、成長が鈍ったDeNAは任天堂と業務・資本提携を締結し、相互に株式を持ち合った。任天堂の知的財産を活用したスマートデバイス向けゲームアプリと、専用機・PC・スマートデバイスを統合する新しい会員制サービスを共同開発する提携である。

資本では、保有する自己株式15,081,000株(発行済株式数の10.00%)を1株1,458円・総額約220億円で任天堂へ第三者割当により処分し、ほぼ同額で任天堂株1,759,400株を引き受けた。任天堂は新たにDeNAの主要株主となった、守安功社長のもとでの経営判断である。

背景

DeNAのソーシャルゲーム事業は成熟し、連結売上収益は2013年3月期の2,024億円をピークに、2014年3月期1,813億円、2015年3月期1,424億円と2期続けて減った。営業利益も768億円から247億円へ減少している。任天堂はスマートデバイスへの提供に慎重とみられてきたが、2014年1月に岩田聡社長がゲームを禁じ手にしないと表明し、世界的な知的財産とDeNAの運営経験を組み合わせる余地が生まれていた。

内容

2015年3月17日、両社は取締役会で資本・業務提携契約の締結を決議し、同日に共同で発表した。DeNAは保有する自己株式15,081,000株を1株1,458円・総額21,988,098,000円で任天堂に第三者割当で処分し、同時に任天堂が保有する自己株式1,759,400株(任天堂の発行済株式数の1.24%)を21,987,221,800円で引き受けた。払込期日はいずれも2015年4月2日である。

互いの株式を持つ方式を選んだのは、業務提携を確実に推進するうえで安定した信頼関係の構築が必要という判断からであった。

含意

業務提携に株式の持ち合いまで重ねたのは、互いのノウハウを預け合う関係を資本で担保するためであった。以降「ファイアーエムブレム ヒーローズ」などのヒットを生む一方、2022年5月にDeNAは保有する任天堂株の半数にあたる879,700株を売却し、49,580百万円を得ている。取得から売却までにその他の包括利益で認識した利得は38,586百万円にのぼった。信頼の担保だった持ち合いが、事業の自走とともに一部を解かれた提携であった。

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筆者の見解
筆者の見解

なぜ提携に、株の持ち合いまで重ねたのか

この判断の核にあるのは、業務提携だけでは足りず、株式の持ち合いまで重ねた点にある。任天堂は世界で通用する知的財産を、DeNAはモバイル向けサービスの構築・運営の経験を、それぞれ相手に開いて見せる必要があった。互いの強みの源泉であるノウハウを預け合う関係は、契約書の条項だけでは守りにくい。長期的に強固な信頼関係を築くための相互出資は、簡単には離れられないという担保を資本の形で用意したものと読める。ほぼ同額を出し合った釣り合いは、どちらかが優位に立つ支配ではなく、対等な協働を意図した設計であった。

もっとも、資本の紐帯は永続を前提としていなかった。共同開発が実を結び、複数のヒットタイトルが生まれたのちの2022年5月、DeNAは持ち株の半数を49,580百万円で売却し、政策保有株式の見直しという当時の市場の要請にも応じた。信頼を資本で担保する必要が最も高いのは関係の立ち上がりで、事業が自走し始めれば、その必要は薄れるのだろう。相互出資が縮んでもなお提携が続いたことは、株の持ち合いが目的ではなく、協働を定着させるための手段であったことを裏づける。成長が鈍ったソーシャルゲーム会社が、外部の強力な知的財産と組んで次の成長を探るにあたり、資本をどう使い、いつ売却するかまでを含めて描いた提携であったと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
資本業務提携の条件

資本業務提携の条件

科目 概要 備考
契約を決議した日 2015年3月17日 取締役会で任天堂との資本・業務提携契約の締結を決議し、同日に共同で発表した
払込期日 2015年4月2日 自己株式の処分と任天堂株式の取得を同じ日に実行した
業務提携の対象 スマートデバイス向けゲームアプリの共同開発・運営 グローバル市場が対象。多様なデバイスに対応した会員制サービスの共同開発も含む
資本提携を行う理由 安定した信頼関係の構築 業務提携を確実に推進するため、両社が互いの株式を保有する体制が必要と判断した
任天堂へ処分した株式数 15,081,000株 発行済株式数の10.00%。新株を発行せず、保有していた自己株式を充てた
処分価額 1株につき1,458円
処分価額の総額 21,988,098,000円 第18期の取得自己株式の処理状況では21,988百万円の処分として計上した
処分方法 第三者割当による 処分先は任天堂1社
取得した任天堂株式 1,759,400株 任天堂の発行済株式数の1.24%。同社が保有する自己株式を第三者割当で引き受けた
任天堂株式の取得価額 21,987,221,800円 1株につき12,497円。DeNAが受け取った処分価額の総額との差は876,200円
任天堂の所有比率 10.00% 2016年3月末の大株主で第3位。新たに主要株主となった
会計上の取扱い その他の包括利益を通じて公正価値で測定 特定投資株式として保有。関連会社には当たらず、持分法は適用していない
任天堂株式の貸借対照表計上額 28,150百万円 2016年3月末・提出会社。取得価額21,987百万円に対し評価益が乗った

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第17期(2015年3月期)【重要な後発事象】【大株主の状況】、第18期(2016年3月期)【自己株式の取得等の状況】【株式の保有状況】

保有する上場株式と資本合計の推移

DeNA:保有する上場株式と資本合計の推移

(百万円) 上場株式資本合計 備考
2012年3月期 6698,045
2013年3月期 47123,676
2014年3月期 3,041145,555
2015年3月期 6,906164,502 決議は3月17日。株式の授受は払込期日の4月2日で、翌期に入る
2016年3月期 31,761196,328 任天堂株式の取得により、上場株式が24,855百万円増えた
2017年3月期 47,953236,696
2018年3月期 84,871271,150
2019年3月期 57,339256,865
2020年3月期 74,406187,319 営業損失45,676百万円を計上した期
その他の包括利益を通じて公正価値で測定する上場株式
上場株式(百万円)

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第15〜22期【主要な経営指標等の推移】、連結財務諸表注記「その他の金融資産」

自己株式数と任天堂の所有株式数

DeNA:自己株式数と任天堂の所有株式数

(株) 自己株式数任天堂の所有株式数 備考
2010年3月期 11,236− 自己株式数に株式付与ESOP信託口の保有分は含まれない
2011年3月期 3,339,646−
2012年3月期 6,864,069−
2013年3月期 16,114,278−
2014年3月期 20,634,757−
2015年3月期 20,580,584− 処分は払込期日の2015年4月2日で、期末時点ではまだ自己株式のまま
2016年3月期 5,295,58815,081,000 任天堂への15,081,000株と新株予約権の行使による203,996株を処分した
2017年3月期 5,295,58815,081,000
2018年3月期 5,295,67115,081,000
2019年3月期 5,185,28515,081,000
2020年3月期 25,098,43515,081,000

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第12〜22期【自己株式の取得等の状況】【大株主の状況】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 任天堂 経営方針説明会(2014年1月・岩田聡社長)
  • 任天堂 お知らせ(2015年7月11日、代表取締役社長 岩田聡 逝去)
  • 任天堂 スマートデバイス向けアプリ 配信リリース(Miitomo/スーパーマリオ ラン/ファイアーエムブレム ヒーローズ ほか)
  • ディー・エヌ・エー 適時開示「任天堂株式会社との業務・資本提携に関するお知らせ」
  • 任天堂・ディー・エヌ・エー 共同記者発表「業務・資本提携に関する共同記者発表(プレゼンテーション・質疑応答)」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第17期(2015年3月期)【重要な後発事象】【大株主の状況】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第18期(2016年3月期)【自己株式の取得等の状況】【株式の保有状況】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第25期(2023年3月期)連結財務諸表注記「金融商品」」

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