DeNA コンプガチャの自主廃止 主力の課金手法を規制の前に廃止し、業界6社の自主規制へ移した判断
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
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「Mobage」のソーシャルゲームにコンプリートガチャが入ったのは2011年10月以降で、DeNAはそれを半年ほどで取りやめることになる。2012年5月9日の2011年度第4四半期決算説明会で、順次中止の方針が表明された。
影響は2012年度第1四半期で5月中旬以降の1か月半に、第2四半期ではその全期間に及ぶ。中止しなければ増えるはずだった「モバコイン」消費、約50億円が消える計算である。第1四半期の業績予想は開示されなかった。改修の範囲がタイトルによって違い、全体への影響をつかみにくかったためである。
- 背景
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「Mobage」のソーシャルゲームは、ゲーム内専用仮想通貨「モバコイン」の消費で稼ぐ仕組みで、2012年3月期の消費額は前期比83.5%増の162,515百万円へ膨らんだ。ソーシャルメディア事業の売上高も130,499百万円と3割強伸び、全社の営業利益はほぼこの一事業が生んでいた。
特定のアイテムを揃えると希少なアイテムを得られるコンプガチャは、その伸びを支える課金手法として2011年10月以降に導入された。青少年に設けた月額課金の上限による影響は「モバコイン」購入高の約1.1%にとどまっていたが、コンプガチャの中止はその比ではなかった。
- 内容
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表明の段階ではサードパーティ各社への周知がまだ終わっておらず、スケジュールやガイドラインは以後の協議に回された。タイトルごとに改修範囲が違い、サードパーティを含めた全体への影響を見極められないままの決定であったが、利益についてはコンプガチャ導入前の2011年度第1・第2四半期の水準より下がることはないとの見通しを示している。
守安功社長は 『マーケットを引っ張ってきたグリー株式会社と当社が、訴訟関連の件もあり今まで協調的な体制が取れてこなかったことは、大きな反省点です』 と述べ、協議会の設置が遅れた背景を認めている。その協議会は、プラットフォーム事業者6社が業界として設けたソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会で、ユーザの適正利用の促進と利用環境の向上に向けたガイドラインをまとめた。
- 含意
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廃止した期にあたる2013年3月期の国内「Mobage」のモバコイン消費額は前期比40.6%増の228,466百万円、ソーシャルメディア事業の売上収益は179,627百万円、セグメント利益は78,106百万円へ伸びた。主力の課金手法を外した痛みは、内製・協業タイトルとサードパーティ提供タイトルの成長に吸収された。
減退が表面化したのは翌期で、2014年3月期の国内「Mobage」のモバコイン消費は15%減の1,948億円、セグメント利益は26.9%減の57,122百万円まで減少した。2012年11月には一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)が発足し、会社はこれと連携して適正利用環境の整備にあたる立場に回った。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
規制を待たずに主力の課金手法を廃止する判断が意味したもの
この判断の核心は、規制がまだ確定していない段階で主力の課金手法を廃止した速さよりも、廃止しても崩れない収益構造を会社が読み切っていた点にあるだろう。中止の表明では、影響の及ぶ期間を5月中旬からの1か月半と第2四半期の全体に区切り、導入前の2011年度第1・第2四半期の利益水準は下回らないと言い切っている。失う額は約50億円と見積もりながら、第1四半期の業績予想だけは開示を控えた。射幸性の高い手法を外しても、内製・協業タイトルとサードパーティの厚みで埋められるという算段が、規制に先んじる自由を与えたのだと思われる。
もっとも、実際に事業が縮小したのは廃止の期ではなく、その次だった。2014年3月期の国内モバコイン消費は15%減へ転じ、セグメント利益も26.9%減まで減少している。原因を課金手法の喪失だけに帰すことはできず、ブラウザからアプリへの市場の移り変わりが重なっている。それでも、規制を待たずに自ら撤退した会社が、業界団体の設置は遅かったと社長自身に認めさせたことは残る。速く動けたのは事業の話であって、業界の秩序づくりでは後手に回っていた、と推察される。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
経緯と対応
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 中止を表明した日 | 2012年5月9日 | 2011年度第4四半期決算説明会。同日の質疑応答で中止の影響を説明した |
| 対象の課金手法 | コンプリートガチャ | 「Mobage」で提供するソーシャルゲームに導入していた課金手法 |
| 導入していた期間 | 2011年10月以降 | 2011年10月以降に初めて導入した。中止の表明までは半年ほど |
| 中止の進め方 | タイトルごとに順次改修 | 改修の範囲が明確でなく、サードパーティを含む全体の影響を見極めづらい |
| 影響を受ける期間 | 2012年5月中旬から | 第1四半期は5月中旬以降の1か月半、第2四半期は四半期全体にわたる |
| 失われる増加額 | 約50億円 | 中止がなければ見込めた2012年度第1四半期の「モバコイン」消費の増加分 |
| 利益水準の見通し | 導入前の水準を下回らない | コンプガチャ導入前の2011年度第1・第2四半期の利益水準が下限との考え |
| 回復の見通し | 2012年度第3四半期以降 | 新たなゲームシステムの導入等により「モバコイン」消費高は上向くとした |
| 青少年の課金制限の影響 | 「モバコイン」購入高の約1.1% | コンプガチャの中止に先立ち青少年に設けた月額課金の上限による影響額 |
| 業界の枠組み | プラットフォーム事業者6社 | ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会を設置し活動を開始した |
| 協議会の取り組み | ガイドラインの策定 | ユーザによる適正利用の促進と利用環境向上のために策定した |
| 業界団体の発足 | 2012年11月 | 一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)。連携して適正利用環境を整備 |
| リスクとして記した内容 | 規制強化による制約 | サービスに大きな制約が生じた場合、事業及び業績に影響を与える可能性 |
出所:ディー・エヌ・エー 2011年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約(2012年5月9日)、有価証券報告書 第14期(2012年3月期)・第15期(2013年3月期)【業績等の概要】【対処すべき課題】【事業等のリスク】
ソーシャルゲーム事業の売上高とセグメント利益
DeNA:ソーシャルゲーム事業の売上高とセグメント利益
| (百万円) | 売上高 | セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2008年3月期 | 23,638 | 13,153 | 区分はモバイル事業。2012年3月期までは日本基準 |
| 2009年3月期 | 30,730 | 16,249 | 区分はモバイル事業 |
| 2010年3月期 | 32,759 | 18,490 | ポータル・マーケティング事業へ区分を改めた期 |
| 2011年3月期 | 97,193 | 53,734 | ソーシャルメディア事業へ区分を改めた期。売上高は196.7%増 |
| 2012年3月期 | 130,499 | 62,447 | 日本基準。IFRSでは売上収益130,492・セグメント利益60,343 |
| 2013年3月期 | 179,627 | 78,106 | コンプガチャを中止した期。IFRSへ移行し売上収益・セグメント利益で表示 |
| 2014年3月期 | 155,871 | 57,122 | 売上収益は13.2%減。国内の内製・協業タイトルの売上収益が減少した |
| 2015年3月期 | 115,511 | 30,508 | 区分はソーシャルメディア事業。売上収益は25.9%減 |
| 2016年3月期 | 109,640 | 25,900 | ゲーム事業へ区分を改めた期 |
| 2017年3月期 | 101,427 | 28,262 | |
| 2018年3月期 | 97,970 | 25,117 |
出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第10〜20期(2008年3月期〜2018年3月期)【業績等の概要】【セグメント情報】
「Mobage」のモバコイン消費額
DeNA:「Mobage」のモバコイン消費額
| (百万円) | モバコイン消費額 | 備考 |
|---|---|---|
| 2012年3月期 | 162,515 | 83.5%増。国内・海外を区分せず「Mobage」全体の消費額として記載 |
| 2013年3月期 | 228,466 | 国内「Mobage」の消費額。前期比40.6%増。コンプガチャを中止した期 |
| 2014年3月期 | 194,800 | 国内「Mobage」の消費額。1,948億円と記載され前期比15%減 |
出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第14〜16期(2012年3月期〜2014年3月期)【業績等の概要】
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- DeNA「コンプリートガチャの取り扱いに関するお知らせ」(2012年5月9日)
- 消費者庁「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」(2012年5月18日)
- ディー・エヌ・エー 決算説明会 質疑応答「2011年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第14期(2012年3月期)【業績等の概要】【事業等のリスク】」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第15期(2013年3月期)【業績等の概要】【対処すべき課題】」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第16期(2014年3月期)【業績等の概要】」