Hulu日本事業の承継(2014年・日本テレビHDの決断)

更新:
論点動画配信は自社構築か事業承継か
日本テレビHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
持分の全部取得による定額動画配信への参入

何をなぜ決めたか:持分の全部取得による定額動画配信への参入

概要

2014年2月26日、日本テレビホールディングスの連結子会社である日本テレビ放送網が、フールージャパン合同会社との間で持分取得契約を締結した経営判断。4月1日付で、定額制動画配信サービスHuluの日本市場向け事業を運営するHJホールディングス合同会社の全持分を取得し、子会社に収めた。取得原価は36億7,600万円で、現金の対価35億8,400万円に取得に直接要した費用9,100万円を加えた額である。支払いは自己資金によった。

背景

2012年10月に吸収分割と株式交換により認定放送持株会社体制へ移行し、地上波・BS・CSを一つの傘下に収めたところであった。それまでは日テレオンデマンドにおいてTVOD(都度課金制動画配信)による有料動画配信に取り組んでおり、本件を通じて新たにSVOD(定額制動画配信)へ参入すると有価証券報告書は書いている。中期経営計画2012-2015 Next60に沿うものであり、地上波放送・BS放送・CS放送に加えてインターネットの伝送路を持つことでグループ全体のコンテンツ価値の最大化を図る、というのが会社の説明であった。

内容

運営会社は米Hulu,LLCからブランドとテクノロジーに関するライセンスを受けて日本の事業を続ける建て付けで、サービスは月額933円(税抜)の見放題、常時1万3,000本以上を配信していた。決算説明会資料は、当年度は会員数の増加をめざしてコンテンツ調達費とプロモーション費を戦略的に投入するとしたうえで、2014年度の営業損失予想30億円と、2016年度単年度黒字という目標を示している。企業結合日に受け入れた資産は59億300万円、引き受けた負債は24億300万円で、のれんは1億7,600万円と重要性が乏しく一括償却した。

含意

会員数は2019年3月期に200万人を突破し、コンテンツ販売収入の増収要因として有価証券報告書に挙がった。一方、2017年4月にHJホールディングスは株式会社へ組織変更し、資本金が4百万円から99百万円へ増加するとともに、議決権所有割合は100%から70.0%へ下がっている。2025年3月期には、インターネット動画配信事業を取り巻く厳しい競争環境を理由に、事業用資産へ44億500万円の減損損失を計上した。

いつ何が起きたか7件
考察:赤字を承知で時間を買う
考察

考察:赤字を承知で時間を買う

サービスを一から立ち上げる案はとらなかった。2014年4月に日本テレビ放送網が36億7,600万円で引き取ったのは、月額933円で1万3,000本以上を配信し、会員と技術と契約を抱えた稼働中のプラットフォームであった。当年度の営業損失予想を30億円と置き、黒字化の目標を2016年度に定めたうえでの参入であり、赤字を承知で時間を買う判断だったのだろう。のれんが1億7,600万円にとどまり一括償却で済んだことは、値段の大半が将来の超過収益力ではなく、手元の資産と負債に対して払われたことを示している。

ただ、買ったものが大きな収益源に育ったとは言いにくい。会員数は2019年3月期に200万人を突破したものの、2017年4月の株式会社化に伴って議決権所有割合は100%から70.0%へ下がり、単独では支えきれなかった。2025年3月期には、インターネット動画配信事業を取り巻く厳しい競争環境を理由に、事業用資産へ44億500万円の減損損失を計上している。それでも、十年余り前に放送の外へ自前の配信路を持ち始めた意味は、後発で組み立てる手間と比べて測るほかない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

日本テレビHD:地上波テレビ広告収入とコンテンツ販売収入の推移

地上波テレビ広告収入(百万円)コンテンツ販売収入(百万円)
日本テレビHD:地上波テレビ広告収入とコンテンツ販売収入の推移
(百万円)地上波テレビ広告収入コンテンツ販売収入備考
2011年3月期209,26333,449新しいセグメント基準による製品・サービス別開示が始まった期
2012年3月期213,38936,661
2013年3月期221,26233,917
2014年3月期227,78937,181持分取得契約の締結は2014年2月26日。連結は翌期から
2015年3月期238,14646,679HJホールディングスの連結は2014年4月から。通期で寄与している
2016年3月期247,83052,087
2017年3月期255,18555,637
2018年3月期254,51758,477
2019年3月期255,93661,446Huluの会員数が200万人を突破した期
出所:日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第78期〜第86期(セグメント情報の関連情報、製品及びサービスごとの外部顧客への売上高)。地上波テレビ広告収入はタイムとスポットの合計
出所:日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第78期〜第86期(セグメント情報の関連情報、製品及びサービスごとの外部顧客への売上高)。地上波テレビ広告収入はタイムとスポットの合計

取得の条件

取得の条件
科目概要備考
取得の主体日本テレビ放送網持株会社の連結子会社。持株会社にとっては孫会社化にあたる
被取得企業HJホールディングス合同会社事業の内容はSVOD(Subscription Video On Demand:定額制動画配信)事業
取得の相手方フールージャパン合同会社米Hulu,LLCの日本市場向け事業を担っていた会社
持分取得契約の締結日2014年2月26日決議した期の【経営上の重要な契約等】および【重要な後発事象】に記載
企業結合日2014年4月1日連結に含めた業績の期間は2014年4月1日から2015年3月31日まで
企業結合の法的形式現金を対価とした持分の取得事業の譲受ではなく、運営会社の持分を全部取得する方式をとった
取得した持分比率100%結合後企業の名称はHJホールディングス合同会社のまま
取得企業を決定した根拠現金対価による全持分の取得日本テレビ放送網が現金を対価として被取得企業の全持分を取得したため
取得原価3,676百万円現金の対価3,584百万円と、取得に直接要した費用91百万円の合計
取得関連費用91百万円アドバイザリー費用等。当時の基準により取得原価に含めている
対価に含まれる出資譲受直後の出資を含む取得の対価には、持分の譲り受け後ただちに行われた出資の額を含む
支払資金の調達自己資金決議した期の【重要な後発事象】に記載
のれん176百万円取得原価が受け入れた純額を上回った差額。重要性が乏しく一括償却した
受け入れた資産合計5,903百万円流動資産5,743百万円、固定資産160百万円。譲受直後の出資額を含む
引き受けた負債合計2,403百万円全額が流動負債
取得後の組織変更2017年4月1日に株式会社へ資本金は4百万円から99百万円へ増加し、議決権所有割合は70.0%となった
2026年3月期末の議決権所有割合79.4%2024年3月期末までは70.0%で推移していた
取得後の減損損失4,405百万円(2025年3月期)事業用資産。回収可能価額は割引率15.3%で割り引いた使用価値による
出所:日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第81期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第82期(2015年3月期)【企業結合等関係】
出所:日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第81期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第82期(2015年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第82期(2015年3月期)【企業結合等関係】
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第81期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書 第78期〜第93期
  • 日本テレビホールディングス 2013年度 決算説明会資料
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書「第82期(2015年3月期)【企業結合等関係】」
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書「第81期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書「第84期〜第93期(関係会社の状況、連結損益計算書関係)」
  • 日本テレビホールディングス 有価証券報告書「第78期〜第86期(セグメント情報の関連情報)」
  • 日本テレビホールディングス 決算説明会資料「2013年度 決算説明会資料」

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