カカクコム 食べログの立ち上げ 価格比較に続く二本目の収益源としての、飲食店口コミ事業の育成

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時期 2005年3月
当時の社長 穐田誉輝
論点 新規事業と収益の第二の柱
何をなぜ決めたか
概要

2005年3月、購買支援サイト『価格.com』に収益を頼っていたカカクコムが、レストラン検索・予約サービス『食べログ』を別ブランドで開設した新規事業の判断。開設当初の名称は『食べログ.com』で、グルメ・レストランのクチコミサイトとして価格比較とは別の看板を掲げた。売上は当初『価格.com』の広告業務と集客サポート業務に紛れており、独立した数字が現れるのは2011年3月期の「食べログ業務」区分からである。

背景

連結財務諸表を作り始めたのは開設と同じ第8期(2005年3月期)からで、連結売上高は2,139百万円。収益の中心は『価格.com』の集客サポート業務・広告業務・販売サポート業務にあった。

2004年10月に入社した村上敦浩氏は、飲食店は価格でなく食べた人の評価で選ばれるとし、価格.comの中でグルメを扱えば安さ中心の印象になるとして、穐田誉輝社長のもとで別ブランドでのクチコミサイト立ち上げを求めた。2008年3月期には、新規事業の展開が対処すべき課題の筆頭に置かれている。

内容

月間利用者数は2008年3月度に約522万人・月間総ページビュー数約6,445万、2009年3月度には約830万人・約1億4,374万ページビューへ伸びた。2007年10月には中核の『価格.com』とともに大幅リニューアルを実施し、媒体力と収益力をともに引き上げている。2009年4月に飲食店向けの有料サービスを始めて課金レストラン数を積み上げ、2011年3月期には個人向けの「食べログプレミアムサービス」を加えた。

含意

「食べログ業務」として売上の区分が分かれた2011年3月期の売上高は1,584百万円。ここから14年をかけ、2025年3月期には食べログ事業が独立した報告セグメントとなり、売上収益33,473百万円・セグメント利益18,079百万円を計上した。

年間のネット予約人数は10,600万人、有料プラン契約店舗数は3月末で88,400店舗。中期経営計画は2030年3月期に売上収益54,000百万円・セグメント利益30,000百万円を掲げている。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

価格比較の隣に築いた「食」のプラットフォーム

食べログの出発点には、価格.comという成功した創業事業への依存を薄めたい、という新規事業の動機があった。ここで選ばれたのは、価格.comの機能を広げて食を取り込む道ではなく、あえて別ブランドを立てる道だった。安さを競う色を持ち込めば、店を選ぶうえで肝心の評価が埋もれる——村上敦浩氏のその読みが、価格比較で名を上げた会社に、自らの看板を新規事業へは貸さないという選択をとらせた。投稿とデータベースと検索という価格.comの強みを、ブランドだけ切り離して外食へ持ち込んだところに、この判断の要があった。

もっとも、その別ブランドが数字として立ち上がるまでには時間がかかっている。開設から6年を経た2011年3月期にようやく「食べログ業務」として売上高1,584百万円が独立して現れ、報告セグメントとして扱われるのは20年後の2025年3月期であった。その2025年3月期の売上収益は33,473百万円で、開設期の連結売上高2,139百万円の15倍を超える。飲食店から月額で受け取る広告料と、来店1人あたり100円から200円の予約手数料という二つの課金は、価格比較とは似ても似つかない。単一事業のリスクへの答えを、模倣でも買収でもなく、収益の形まで違う自前の事業として用意したと読めるのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
立ち上げと収益化の条件

立ち上げと収益化の条件

科目 概要 備考
開設 2005年3月 レストラン検索・予約サービス「食べログ」として開設。当初の名称は『食べログ.com』
位置づけ 『価格.com』に続く新規事業のひとつ 2008年3月期の対処すべき課題では、新規事業の展開が第一の課題に挙げられた
開設時の会計上の区分 独立した区分なし マーケットプレイス事業が売上・利益・資産のいずれも90%超のため記載を省略
売上の計上先 広告業務と集客サポート業務 2011年3月期より『食べログ』の手数料収入と広告収入を「食べログ業務」へ分離
飲食店向け有料サービス 2009年4月開始 課金レストラン数が増加し、集客サポート業務の増収に寄与した
個人向け有料サービス 食べログプレミアムサービス 2011年3月期に開始。同期の食べログ業務の売上高は1,584百万円
飲食店広告事業の料金 月額10,000〜100,000円 サービス内容に応じた4段階の月額固定。取引先は飲食店
飲食店予約事業の料金 ディナー200円・ランチ100円 来店人数に応じた1人あたりの従量課金。取引先は飲食店
報告セグメント化 2025年3月期 2024年4月1日付の組織変更に伴い、食べログ事業を含む4区分へ変更した
掲げた目標 2030年3月期に売上収益54,000百万円 セグメント利益30,000百万円。5年CAGRは売上収益10%・セグメント利益11%

出所:カカクコム 有価証券報告書 第9期(2006年3月期)・第11期(2008年3月期)・第13期(2010年3月期)・第14期(2011年3月期)・第28期(2025年3月期)/カカクコム Annual Report 2024-2025

食べログの月間利用者数とページビュー

カカクコム:食べログの月間利用者数とページビュー

(万) 月間利用者数月間総ページビュー 備考
2008年3月期 5226,445 2008年3月度の実績。サイト別の開示はこの期から始まった
2009年3月期 83014,374 2009年3月度の実績
2010年3月期 1,37229,340 2010年3月度のパソコン経由。携帯電話による月間利用者数は約208万人
食べログの月間利用者数
月間利用者数(万)月間総ページビュー(万PV)

出所:カカクコム 有価証券報告書 第9〜13期(業績等の概要)

連結業績の推移

カカクコム:連結業績の推移

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2005年3月期 2,139791478 3月に食べログを開設。連結財務諸表はこの第8期から作成している
2006年3月期 2,921780417 不正アクセスによる運営サイトの一時閉鎖で特別損失41百万円を計上
2007年3月期 4,8871,304856 出店店舗への従量型料金体系の導入が通期で寄与した
2008年3月期 6,9411,9301,307 10月の『価格.com』『食べログ.com』大幅リニューアルが寄与
2009年3月期 9,7133,9362,271
2010年3月期 13,0485,4653,187 4月に食べログで飲食店向け有料サービスを開始した期
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:カカクコム 有価証券報告書 第9〜13期(主要な経営指標等の推移・連結損益計算書)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

プラットフォームの構築2004年楽天グループカード会社の取得による個人金融事業への参入と、後の自社ブランド化金融事業の内製化(カード・個人与信の取得)
2007年SBIホールディングス米ゴールドマン・サックスとの折半出資で始めた私設取引システム(PTS)事業への参入取引所インフラの自前化と市場間競争への参入
2001年東日本旅客鉄道交通ICから電子マネー・生活決済へ広げた事業領域の拡張交通ICを軸とした決済・生活サービスへの多角化
2010年LINE63億円を投じた検索サービス「NAVER」への取り込み検索事業の立て直しと、外部資産の取得
2014年日本テレビホールディングス持分の全部取得による定額動画配信への参入動画配信への参入とコンテンツの出口
隣接領域への展開2004年楽天グループ宿泊予約からDLJ証券にまで及んだ連続買収と、三領域にまたがる事業圏づくり事業領域の拡大(経済圏の構築)
2016年ビジョナル隣接市場への広がりによる成功報酬型からの収益源の分散単一収益源への依存と収益モデルの分散
2016年freee国内初のメガバンクとの接続と、北国銀行への会計データの開放金融機関との接続と会計データの共有
1994年ソニー家庭用ゲーム市場への進出新規事業の創出とコンテンツ戦略
1988年太陽誘電That''sブランドによる消費財市場への参入と、追記型光記録メディア材料技術の応用先としての消費財市場への進出
参考文献
出典・参考
  • NTT東日本 BizDrive「株式会社カカクコム 代表取締役社長 田中実氏」
  • カカクコム 有価証券報告書「第9期(2006年3月期)【事業の内容】【業績等の概要】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第11期(2008年3月期)【対処すべき課題】【業績等の概要】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第13期(2010年3月期)【業績等の概要】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第14期(2011年3月期)【業績等の概要】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第28期(2025年3月期)【業績等の概要】【セグメント情報】」
  • カカクコム 統合報告書「Annual Report 2024-2025」

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