この創業が示すのは、周到な事業計画からではなく、好きな音楽を売る趣味の延長から起こされた事業が、業態を何度も組み替えながら育っていった経緯である。輸入CDの紙カタログ通販から、CD の EC 化、買取型のアパレルEC、そして単一ドメインのファッションモールへと、前澤氏は扱う商材と事業モデルを段階的に置き換えていった。固定した青写真を追うのではなく、そのつどの市場の反応に合わせて形を変えていった柔らかさが、初期の成長を支えていたとみられる。
もう一つ見えてくるのは、2004年のファッションモール化で運営側が握った雑誌のような編集権と受託販売の仕組みが、その後の ZOZO の性格を決めていったことである。出店ブランドの体験を守りながら販売以外の作業を肩代わりする提供価値は、ユナイテッドアローズをはじめとする有力店の参画によって業界の信用を得ていった。趣味から出発した個人の事業が、編集と物流を握るプラットフォームの運営会社へと転じたこの初期十数年の積み重ねが、後の成長を支える土台になっていったといえる。