メルカリ 即決価格型CtoCの創業 スマホ前提の個人間取引への再定義による新市場の開拓

更新:

時期 2013年7月
当時の社長 山田進太郎
論点 スマホCtoCの再定義
何をなぜ決めたか
概要

2013年2月、ウノウの設立・売却を経た山田進太郎社長が東京都港区六本木に資本金20百万円で株式会社コウゾウを設立し、同年7月にスマートフォンに完全特化したフリマアプリ「メルカリ」を公開した。価格を競り上げるオークションではなく、出品者が値を決める即決価格のフリマ形式を採った創業判断である。商号を株式会社メルカリへ改めたのは同年11月で、サービスの名がそのまま社名になった。

背景

当時の国内CtoCはパソコン前提のオークションが中心で、出品にも取引にも手間がかかっていた。一方でスマートフォンの普及により写真撮影も決済も日常の動作になり、スマホに最適化したCtoCの一番手はまだ定まっていなかった。すでに複数のフリマアプリが世に出て一定の利用者を得ており、市場そのものの存在は確かめられていた。狙いは先行するアプリからシェアを奪うことではなく、オークションとは別の売買の形でCtoCの伸びしろそのものを開くことにあった。

内容

ヤフオク!型のオークションを採らず、実際のフリーマーケットのように出品者が値を決める即決価格を選んだ。写真撮影から数分で出品でき、事務局が決済を介在させることで個人間取引の不安を抑えた。開発は当初HTML5で進めたが、動作の重さから2013年4月に既存のコードを捨ててフルネイティブへ作り直し、同年7月にAndroid版とiPhone版を公開している。資金は自己資金に頼らず、公開の翌月にユナイテッドを割当先とするA種優先株式11,000株の第三者割当で220百万円を集めた。

含意

価格が決まっていることで購入の判断が速く、出品から購入までの回転が上がり、個人間の売買が日常の行為に近づいた。商品代金に応じた手数料の徴収を始めたのは2014年10月で、それまでは売上を立てずに利用の厚みだけを積んだ。2014年3月にはB種優先株式16,114株の第三者割当で1,450百万円を調達し、2015年6月期の売上高は4,237百万円、2018年6月期には33,424百万円に達した。完成度より実利用からの学習を優先した創業設計が、フリマアプリという新しいカテゴリを市場に定着させた。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

規模より速さ、「1位」を賭けた創業設計

この創業判断の核心は、資金や技術の制約への対応ではなく、CtoCという取引の形そのものをスマートフォン前提で組み替えた点にある。ヤフオク!以来の日本のCtoCはオークションを前提としてきたが、山田進太郎社長は価格を競り上げる方式を捨て、出品者が値を決める即決価格のフリマを選んだ。価格が確定していることは購入の判断を速め、出品と購入の回転を上げ、個人間の売買を特別な行為から日常の行為へと近づけた。HTML5で書いたものを捨ててまでネイティブへ作り直した選択にも、完成度ではなく体験の軽さを取る姿勢が表れている。既存のシェアを奪うのではなく、新しいカテゴリそのものを立ち上げにいった決断だったのだろう。

もっとも、この創業設計は、その後の成長モデルの原型でもあった。商品代金に応じた手数料を取り始めたのはサービス開始から1年3か月後で、その間は売上を立てずに利用の厚みだけを積んでいる。それを支えたのが優先株式による外部資金で、2014年3月の第三者割当だけで1,450百万円が入った。持ち分の希薄化をいとわず先に規模を取る型は、ネットワーク効果の働くCtoCでは強く効く一方、広告に厚く張った固定費は成長が鈍った局面で調整の幅を狭める。速さを賭けた2013年の選択は、その後の強さと難しさを同時に用意しただろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
創業と初期増資の条件

創業と初期増資の条件

科目 概要 備考
設立 2013年2月 東京都港区六本木。設立時の商号は株式会社コウゾウ
設立時の資本金 20百万円
サービス開始 2013年7月 スマートフォン向けCtoCマーケットプレイス「メルカリ」の提供開始
商号変更 2013年11月 株式会社コウゾウから株式会社メルカリへ
創業直後の第三者割当 220百万円 2013年8月30日、A種優先株式11,000株。発行価格20,000円・資本組入額10,000円
その割当先 ユナイテッド株式会社 資本金・資本準備金がそれぞれ110百万円増加した
2014年3月の第三者割当 1,450百万円 B種優先株式16,114株。発行価格90,000円・資本組入額45,000円
その主な割当先 グローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合ほか グロービス4号ファンド、テクノロジーベンチャーズ3号ほか3社と1名
上場までの優先株式 A種からD種の4種類 2017年7月2日に取得請求権の行使で普通株式4,965,647株へ転換し、全て消却
株式公開 2018年6月 東京証券取引所マザーズ。有償一般募集18,159,500株
公開価格 3,000円 引受価額2,865円・資本組入額1,432.50円。払込金総額52,026百万円

出所:メルカリ 有価証券報告書 第6期(2018年6月期)【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】

売上高・経常損益・純資産の推移

メルカリ:売上高・経常損益・純資産の推移

(百万円) 売上高経常損益純資産額資本金 備考
2014年6月期 −△1,373351885 手数料の徴収開始は2014年10月で、売上高は記載されていない
2015年6月期 4,237△1,0991,6072,065 連結財務諸表の作成は第4期から。表は提出会社の単体で通した
2016年6月期 12,2563,26213,0616,286
2017年6月期 21,2544,4696,0716,286 経常利益に対し当期純損失は△6,990百万円で、純資産が減少した
2018年6月期 33,4247,10754,67634,803 2018年6月に東証マザーズへ上場。公募で資本金が26,013百万円増加
売上高と純資産額
売上高(百万円)

出所:メルカリ 有価証券報告書 第6期(2018年6月期)【主要な経営指標等の推移】提出会社の経営指標等

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参考文献
出典・参考

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