メルカリ メルペイ設立で決済参入 スマホ決済への参入による、フリマと決済をつなぐ自社経済圏の構築

更新:

時期 2017年11月
当時の社長 山田進太郎
論点 決済への進出と経済圏構築
何をなぜ決めたか
概要

2017年11月20日、メルカリは金融関連の新規事業を行うことを目的に、100%子会社の株式会社メルペイを東京都港区に設立した。資本金は600百万円、主要な事業内容は資金移動業等の金融関連事業の企画・開発・運営で、フリマで得た売上金を実店舗やネットの決済でも使える経済圏の構築を子会社に担わせる形をとった。

2018年7月31日に3,000百万円を払い込んで増資し、同年12月1日には決済サービス事業に関する権利義務の一部を吸収分割でメルペイへ移した。2019年2月にスマホ決済サービス「メルペイ」の提供が始まり、フリマに次ぐ第二の柱として金融・決済への参入が形になった。

背景

スマホ特化のフリマアプリで国内の個人間取引を定着させた一方、手数料収入は取引総額に連動し、市場の成熟と競争激化のなかでフリマ単体の成長を描きにくくなっていた。アプリ内には、出品者が商品を販売して得た売上金でポイントを購入し、そのポイントで商品を買う仕組みが既にあった。メルペイの狙いは 『元々メルカリの売上金をメルカリの外でも直接使えたら、お客さまにとっての利便性が向上するという発想から始まった』 というもので、メルカリを補完し強化する位置づけの事業として構想された。

設立にあたっては資金決済法上の第三者型前払式支払手段の発行者および資金移動業者の登録を受け、あと払いの提供に伴い割賦販売法のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者としても登録した。

内容

設立時の資本金600百万円は、2018年7月31日の3,000百万円の増資を経て2019年6月末には6,000百万円まで積み増された。同年7月には加盟店利用基盤の拡大を担う株式会社メルペイコネクト(資本金100百万円)を置き、2019年6月にメルペイへ吸収合併している。代表には元グリー取締役常務の青柳直樹氏が2017年11月28日付で就任した。

2019年2月にiD対応のスマホ決済を開始し、2020年1月のOrigami買収でコード決済を統合、翌2月にはNTTドコモと業務提携して決済網と顧客基盤を広げた。2022年11月には独自与信のクレジットカード「メルカード」で後払い・与信へ参入した。

含意

立ち上げ期の先行投資でグループの営業損益は2019年6月期に121億円、2020年6月期に193億円の赤字まで沈み、2021年6月期に51億円を計上して初めて通期の営業黒字へ転じた。2023年6月期の営業利益は170億円、Fintechの売上高は204億円で連結売上高の1割強を占める。

一方でメルペイスマート払いの利用が広がるにつれ、未収入金はメルペイ設立期の27億円から2023年6月期には1,157億円へ膨らみ、貸倒引当金も54億円に達した。決済と与信は、フリマとは異なる資本と規律を求める事業でもある。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

フリマの「その先」を、決済という別の原理で

この判断の核心は、フリマで積み上がる"売上金"という滞留資産を、アプリの外でも使える貨幣に変え、取引のたびに生まれる決済と信用そのものを新たな収益源に据えようとした点にある。楽天やPayPayが進めた、自社サービスで消費を囲い込む"経済圏"とは力点がやや異なり、メルカリのフリマ利用データを与信に転換する"信用"を軸に置いた構想であった。フリマに次ぐ第二の柱を、既存事業の延長ではなく金融・決済という別の事業原理の上に築こうとしたところに、この決断の性格がうかがえる。

もっとも、決済と与信は、フリマの高収益とは異なる資本集約と規律を求める事業でもある。設立から6期を経て未収入金は1,157億円まで膨らみ、後払いの拡大は貸倒れのリスクを恒常的な経営課題に変えた。それでも、メルペイとメルカードによって、フリマの単発の取引が決済・与信を通じて継続的な関係へと結び直された意義は小さくない。フリマの"その先"を決済に賭けたこの選択が、規模の拡大と与信リスクの管理をどう両立させるかという問いを、以後のメルカリに残したとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
メルペイ設立の条件

メルペイ設立の条件

科目 概要 備考
設立日 2017年11月20日 新規設立に伴い第6期(2018年6月期)より連結子会社となった
本店所在地 東京都港区
議決権の所有割合 100.0% 役員の兼任は設立期1名、第7期は2名。第7期からは特定子会社に該当する
主要な事業内容 資金移動業等の金融関連事業の企画・開発・運営
設立時の資本金 600百万円 2018年6月末時点
増資額 3,000百万円 払込日は2018年7月31日。増資後の資本金は2,100百万円、持株比率は100%
第7期末の資本金 6,000百万円 2019年6月末時点。設立時の600百万円から10倍に積み増した
資金決済法上の登録 第三者型前払式支払手段の発行者・資金移動業者 割賦販売法のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者としても登録している
決済サービス事業の承継 2018年12月1日 2018年8月9日の取締役会で決議した吸収分割。共通支配下の取引として処理する
承継の対価 なし メルペイから当社への株式の割当て、金銭その他の財産の交付はない
スマホ決済の提供開始 2019年2月 サービス名は「メルペイ」。三井住友カードとの連携でiDに対応した
子会社メルペイコネクト 2018年7月2日設立 資本金100百万円・議決権100%。2019年6月1日にメルペイへ吸収合併され消滅

出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第6期(2018年6月期)【沿革】【関係会社の状況】【重要な後発事象】・第7期(2019年6月期)【沿革】【関係会社の状況】

未収入金と貸倒引当金の推移

メルカリ:未収入金と貸倒引当金の推移

(百万円) 未収入金貸倒引当金 備考
2017年6月期 1,133− メルペイ設立前。流動資産に貸倒引当金の計上はない
2018年6月期 2,774△148 2017年11月にメルペイを設立。決済サービスの提供はまだ始まっていない
2019年6月期 14,176△1,094 2019年2月にメルペイの提供を開始し、未収入金が11,401増加
2020年6月期 15,612△1,404
2021年6月期 47,001△2,416 メルペイスマート払いの利用増加で未収入金が31,388増加
2022年6月期 80,287△4,807 メルペイスマート払いの利用増加が続き未収入金が33,133増加
2023年6月期 115,714△5,455 2022年11月のメルカード投入も加わり未収入金が35,381増加
未収入金と貸倒引当金
未収入金(百万円)

出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第5〜11期(連結貸借対照表・連結キャッシュ・フロー計算書)

売上高・営業損益とFintechの売上高

メルカリ:売上高・営業損益とFintechの売上高

(百万円) 売上高営業損益うちFintech売上高 備考
2016年6月期 12,256−− 連結初年度。連結損益計算書の開示は2017年6月期からで営業損益は不明
2017年6月期 22,071△2,775−
2018年6月期 35,765△4,422− 2017年11月にメルペイを設立。2018年6月に東証マザーズへ上場
2019年6月期 51,683△12,149− メルペイの提供開始に伴う先行投資で営業損失が拡大
2020年6月期 76,275△19,308−
2021年6月期 106,1155,184− 通期で初めて営業黒字を計上
2022年6月期 147,049△3,71514,434 Fintechの売上高はJapan Region内の内訳として開示が始まった期
2023年6月期 172,06417,02320,485 Fintechの売上高は連結売上高の1割強
売上高と営業損益
売上高(百万円)営業損益率(%)

出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第6期・第11期(主要な経営指標等の推移) / 株式会社メルカリ 有価証券報告書 第6〜11期(連結損益計算書・セグメント情報等)

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参考文献
出典・参考

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