メルカリ Mercari USへの継続出資 6億米ドルを注ぎ、11年目に営業黒字へ届いた米国事業
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2014年1月、日本でのサービス開始から半年で米国子会社Mercari, Inc.をカリフォルニア州パロアルト市に設立し、同年9月にCtoCマーケットプレイス「Mercari」の提供を米国で始めた。議決権は100.0%を保有し、企画・開発・運営は現地法人が担いながら開発業務は日本側が受託する形をとった。
商品代金に応じた手数料の徴収は日本より2年遅い2016年10月まで見送り、無料のまま利用者を積み上げた。出資はその後も積み増され、Mercari, Inc.の資本金は2018年6月期末の240,555千米ドルから2025年6月期末には620,511千米ドルに達している。
- 背景
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国内では2013年7月の提供開始から短期間でフリマアプリという新しい市場を立ち上げたが、日本市場だけでは長期の成長を描きにくかった。米国のオンラインCtoC市場ではeBayがインターネットオークションサービスを提供していたものの、そのサービスはモバイルに特化しておらず、多くの商業目的の事業者が参加するマーケットプレイスになっていた。他の潜在的な競合も、特定の地域を対象としたクラシファイドサービスや、特定の商品カテゴリーのみを扱うアプリであり、オールジャンル・モバイル中心・事業者ではなく個人中心という組み合わせは空いていた。日本でフリマアプリ市場を新たに創り出したのと同じ事業機会が米国にも存在するとみた。
- 内容
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米国事業は投資段階にあり、2018年6月期において営業利益の計上には至っていない。置かれた歯止めは、一定の事業規模を達成できれば米国事業の売上高の範囲内に広告宣伝費などのコストを抑えられる、という採算の道筋であった。
2017年6月にはジョン・ラガーリング氏を採用して現地の経営体制を強化し、2018年3月にはアプリロゴのデザイン変更を含むリブランディングを実施、ラジオ広告などオフライン広告の試行も始めた。米国内流通総額は2019年6月期に402億円、2020年6月期に736億円へ伸び、目標としていた月間流通総額100million USDを2020年6月期第4四半期に達成した。
- 含意
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2022年7月の経営管理区分の変更で米国はJapan Regionと並ぶ報告セグメントになり、区分初年度の2022年6月期は売上高41,611百万円に対しセグメント損失12,135百万円を計上した。以後は投資を絞る側へ舵が切られる。
2024年6月期にはUS事業で人員削減を含む組織再編を実施してリストラクチャリング費用870百万円を計上し、米国の従業員数は2025年6月期末で121人まで縮んだ。売上収益は36,418百万円へ減った一方、セグメント損益は737百万円の黒字に転じ、区分開示のはじまりから4期目で損益分岐に届いた。
いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
「再現」ではなく「再発明」——海外展開が突きつけた規律
この判断は海外展開というより、日本で当てたプロダクトを別の市場でもう一度作り直す試みだったと思われる。山田進太郎社長はみずからサンフランシスコに長期滞在し、開発は日本側が受託し、商品代金に応じた手数料は2年にわたって取らなかった。日本での成功が、未開拓の市場と短期間の認知獲得がかみ合って生まれたのに対し、eBayと対面取引の慣行が先にある米国では、スマホで手軽にという価値だけでは決め手にならなかった。同じ仕組みを持ち込むのではなく、同じ発明をもう一度やり直すことが求められたのだと思われる。
もっとも、11年をかけて営業黒字へ届いた道筋は、拡大一辺倒だった投資が規律へ置き換わっていく過程でもあった。売上高の範囲にコストを収めるという上場時の一線は、人員削減と固定費の圧縮という形で遅れて効いている。2025年6月期の黒字737百万円は、6億米ドルを超える出資に対して小さい。それでも、撤退の是非を毎期問われる事業が撤退せずに損益分岐まで戻ったこと自体が、海外市場での学習にどれだけの時間と資本を割けるのかという問いへの、ひとつの回答になっている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
米国子会社の設立条件
米国子会社の設立条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 設立 | 2014年1月 | 日本での「メルカリ」提供開始(2013年7月)から半年後 |
| 商号 | Mercari, Inc. | |
| 所在地 | 米国カリフォルニア州パロアルト市 | |
| 議決権の所有割合 | 100.0% | 2025年6月期末まで一貫して完全子会社 |
| 主要な事業の内容 | 米国におけるCtoCマーケットプレイス「Mercari」の企画・開発・運営 | |
| 資本金 | 240,555千米ドル | 2018年6月期末。2025年6月期末は620,511千米ドル |
| 提出会社との関係内容 | 役員の兼任2名、開発業務の受託、ロイヤリティーの受取 | |
| 特定子会社への該当 | 該当 | |
| サービス開始 | 2014年9月 | 商品代金に応じた手数料は徴収せず無料で提供 |
| 手数料の徴収開始 | 2016年10月 | 日本の「メルカリ」は2014年10月に徴収を開始しており2年遅れ |
出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第6期(2018年6月期)【沿革】【関係会社の状況】
米国事業の売上と営業損益の推移
メルカリ:米国事業の売上と営業損益の推移
| (百万円) | 売上 | 営業損益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2020年6月期 | 7,791 | − | 顧客所在地別の売上高。米国内流通総額は736億円 |
| 2021年6月期 | 17,879 | − | 顧客所在地別。Mercari, Inc.単体の当期純損失は5,137百万円 |
| 2022年6月期 | 41,611 | △12,135 | 翌期のセグメント区分変更に伴い遡って開示された数値。日本基準 |
| 2023年6月期 | 44,440 | △8,804 | 日本基準。IFRSへ組み替えた後のセグメント損失は8,758百万円 |
| 2024年6月期 | 43,653 | △5,293 | 第12期よりIFRS。US事業の人員削減で870百万円を計上 |
| 2025年6月期 | 36,418 | 737 | 区分開示のはじまりから4期目で黒字へ。従業員数は121人 |
出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第8〜9期(【関連情報】地域ごとの情報) / 株式会社メルカリ 有価証券報告書 第10〜13期(【セグメント情報】報告セグメントごとの売上高・利益)
Mercari, Inc.の資本金の推移
メルカリ:Mercari, Inc.の資本金の推移
| (千米ドル) | 資本金 | 備考 |
|---|---|---|
| 2018年6月期 | 240,555 | 上場後最初の有価証券報告書。議決権の所有割合は100.0% |
| 2019年6月期 | 320,606 | |
| 2020年6月期 | 463,511 | |
| 2021年6月期 | 473,511 | |
| 2022年6月期 | 588,511 | |
| 2023年6月期 | 633,511 | |
| 2024年6月期 | 633,511 | |
| 2025年6月期 | 620,511 |
出所:株式会社メルカリ 有価証券報告書 第6〜13期(【関係会社の状況】)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- 株式会社メルカリ ニュースリリース 2017年6月21日「Mercari welcomes John Lagerling to the management team」
- エンジニアtype「なぜメルカリはUS版も日本で作るのか?山田進太郎氏が試みる、海外展開の新常識」(キャリアデザインセンター)
- メルカリ 決算説明会質疑応答「FY2019.6 通期決算説明会 質疑応答の要約」
- メルカリ 決算説明会質疑応答「FY2025.6 通期決算説明会 質疑応答の要約」
- メルカリ 有価証券報告書「第6期(2018年6月期)【沿革】【関係会社の状況】【事業の内容】」
- メルカリ 有価証券報告書「第8期(2020年6月期)【経営成績等の状況の概要】【関連情報】」
- メルカリ 有価証券報告書「第11〜13期(2023年6月期〜2025年6月期)【セグメント情報】」