米国縮小とメルカリ ハロ投入(2024年・メルカリの決断)

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論点 米国を縮小し国内へ回帰するか
メルカリ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
海外の拡大に区切りをつけ、成長の軸を国内へ戻す転換

何をなぜ決めたか:海外の拡大に区切りをつけ、成長の軸を国内へ戻す転換

概要

2024年6月期第4四半期、メルカリは米国事業で人員削減を含む組織再編に踏み切った。USセグメントの従業員数は1年で260人から147人へ減り、マーケティング費用の見直しとあわせてセグメント損失は8,758百万円から5,293百万円へ縮んだ。

同じ2024年3月には空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を国内で始め、開始3か月弱で登録ユーザ数は500万人、パートナー拠点数は全国5万店舗に達した。海外の拡大に区切りをつけ、成長の軸を国内へ戻す転換であった。

背景

2014年1月に設立したMercari, Inc.は、サービスの発展とユーザ層の拡大に向けた投資に伴い、継続的な広告宣伝費用などの負担で損失の計上が長期に及んでいた。2024年3月には米国マーケットプレイスで初めて出品手数料を無料化し、購入者が手数料を負担するモデルへ切り替えたが、想定以上のインフレの長期化をはじめとする外部環境の影響が大きく、成長軌道への復帰には至らなかった。2024年6月期の「Mercari」の通期GMVは前期比10%減の913百万米ドル(1,361億円)、売上収益は43,653百万円で前期比1.8%減にとどまった。

内容

削ったのは人と広告費で、資産の切り捨てではない。有形固定資産にも無形資産にも2024年6月期の減損損失は計上されておらず、USセグメントの従業員数は147人、提出会社に属する米国要員は28人まで縮んだ。

同時に示したのが国内を軸とする収益の目標である。2027年6月期に向けた連結目標として売上収益CAGR2桁成長・コア営業利益CAGR25%以上を掲げ、2025年6月期のコア営業利益220〜250億円という通期のガイダンスを初めて開示した。

含意

山田進太郎CEOは米国への投資について 『コロナ禍でGMVが大きく成長したフェーズにおいて、更なる成長に向けて、人員も含めて大きく投資をするという経営判断を下したが、結果を出すことができずに経営陣としても反省している』 と、判断の誤りを認めている。人員を絞った米国は2025年6月期に売上収益36,418百万円と前期比16.6%減まで縮みながら、セグメント利益737百万円で通年の黒字化に達した。一方、国内の主力事業に据えた「メルカリ ハロ」は2025年4月に手数料チャージを開始したものの、2026年6月期に終了が決まった。投入から2年での撤収である。

いつ何が起きたか 10件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2023年9月株主総会決議)

考察:攻めの成長から規律ある成長へ
考察

考察:攻めの成長から規律ある成長へ

この判断は、未開拓の市場で先行を狙う攻めの成長から、収益の輪郭が見える領域へ資源を引き戻す規律への転換であったのだろう。手数料の無料化やプロダクトの磨き込みを重ねても米国の流通取引総額は下げ止まらず、10年続けた投資は黒字に届かなかった。人員を260人から147人へ絞る重い手段に着手しながら、なお撤退はせず継続を選んだあたりに、創業者が自ら育てた事業への未練と、市場への説明責任のはざまで揺れる姿がうかがえる。

もっとも、国内への回帰と初のガイダンス開示は、成長株から収益株への性格の切り替えとも読める。絞ったあとの米国は翌期に通年の黒字へ転じ、切り替えは数字の上では実を結んだ。ただ、国内で次の主力事業に据えた「メルカリ ハロ」は投入から2年で終わり、規律を効かせた投資が新しい成長の芽をどこまで育てられるのかは、なお見届ける段階にあるといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

メルカリ:USセグメントの売上収益とセグメント損益

US 売上収益(百万円)US セグメント損益率(%)
メルカリ:USセグメントの売上収益とセグメント損益
(百万円) US 売上収益US セグメント損益Japan Region 売上収益 備考
2023年6月期 44,440△8,758122,199 IFRSへ組み替えた比較情報。第12期の連結財務諸表に載る前期の数値
2024年6月期 43,653△5,293138,108 第4四半期に人員削減を含む組織再編。US売上収益は前期比1.8%減
2025年6月期 36,418737149,807 USは通年で初の黒字化。売上収益は前期比16.6%減まで縮んだ
出所:メルカリ 有価証券報告書 第12期・第13期(セグメント情報、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
出所:メルカリ 有価証券報告書 第12期・第13期(セグメント情報、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)

メルカリ:従業員数の推移

USセグメント(人)連結従業員数(人)
メルカリ:従業員数の推移
(人) 連結USセグメント 備考
2019年6月期 1,826− 単一セグメントのため、セグメント別の従業員数は開示していない
2020年6月期 1,792−
2021年6月期 1,752−
2022年6月期 2,209− 事業の拡大に伴う人員の増加により、1年で457人増えた
2023年6月期 2,101260 Japan Regionは1,464人。セグメント別の開示はこの期から
2024年6月期 2,080147 USは1年で113人減。臨時雇用者は年間平均で3人
2025年6月期 2,159121 Japan Regionは1,587人へ増え、連結では組織再編前の水準へ戻った
出所:メルカリ 有価証券報告書 第7期〜第13期(従業員の状況)
出所:メルカリ 有価証券報告書 第7期〜第13期(従業員の状況)

米国縮小とスポットワーク投入の条件

米国縮小とスポットワーク投入の条件
科目 概要 備考
対象事業 USセグメント 米国でフリマアプリ「Mercari」を運営するMercari, Inc.。2014年1月設立
実施時期 2024年6月期第4四半期 人員削減を含む組織再編。マーケティング費用の見直しをあわせて実施した
USセグメントの従業員数 147人 前期末は260人で1年に113人減。臨時雇用者は年間平均で3人
提出会社のUS要員 28人 2024年6月30日現在。提出会社の従業員1,417人のうちの人数
減損損失 計上なし 有形固定資産・無形資産のいずれにも当期の減損損失は認識していない
手数料モデルの変更 2024年3月 販売手数料を無料化し購入者負担へ。2025年1月に主に出品者負担へ再変更
USセグメント損失 5,293百万円 前期は8,758百万円の損失。2025年6月期は737百万円の利益に転じた
投入した新規事業 メルカリ ハロ 2024年3月に空き時間おしごとサービスを開始し、4月に全国展開へ広げた
メルカリ ハロの登録ユーザ数 500万人 開始3か月弱で突破。パートナー拠点数は全国5万店舗に達した
米国事業の目標 ブレイクイーブン 日本「メルカリ」との越境取引を開始し、成長軌道への復帰を目指すとした
中期の連結目標 2027年6月期 売上収益CAGR2桁成長、コア営業利益CAGR25%以上を掲げた
2025年6月期のコア営業利益予想 220〜250億円 通期のガイダンスを初めて開示。下限は超えるべき数値目標と位置づけた
出所:メルカリ 有価証券報告書 第12期(2024年6月期)【従業員の状況】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 / FY2024.6 4Q 決算説明会 質疑応答の要約
出所:メルカリ 有価証券報告書 第12期(2024年6月期)【従業員の状況】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 / FY2024.6 4Q 決算説明会 質疑応答の要約
当時の取締役 10名

当時の取締役(2023年9月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • メルカリ 決算説明会「FY2024.6 4Q 決算説明会 質疑応答の要約」
  • メルカリ 決算説明会「FY2026.6 1Q 決算説明会 質疑応答の要約」
  • メルカリ 有価証券報告書「第12期(2024年6月期)【従業員の状況】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • メルカリ 有価証券報告書「第13期(2025年6月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」

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