前身コアプライスとkakaku.comの誕生
1997年12月、当時24歳の[1]槙野光昭氏が有限会社コアプライスを設立した[2]のが事業の始まりである。1997年は日本でインターネットが家庭に普及し始めた時期で、ヤフーの日本サービスが1996年4月開始、楽天市場が1997年5月開始という前後関係にあった。価格比較サービスは、家電量販店ごとに異なる売価をユーザーが横並びで確認できるという、当時として新規性の高いサービスだった。槙野氏は事業を在学中に着想し、5億円稼いだら辞めると決めていたと後年語っているとおり、起業から早期売却を視野に入れた事業設計が当初から組み込まれていた。
1999年12月、本社を東京都台東区に移転[3]。2000年5月、有限会社コアプライスから株式会社[4]カカクコムへ組織変更と商号変更を実施し、株式会社としての法人形態を整えた。2000年9月にも台東区内で本社を移転し[5]、組織拡大に対応した。創業から2年半で個人事業に近い形態から、組織化された株式会社へ転換する作業を進めた時期である。
2001年、槙野氏は28歳でkakaku.comの事業[6]をICP(インターネット総合研究所系の投資会社)に約25億円で売却し、自らはリタイアした[7]。槙野氏は新R25インタビューで5億円稼いだら辞めると決めていたと、起業時に立てた終了基準が25億円という売却額で5倍超に達した経緯を語った。ICPの代表だった穐田誉輝氏が、売却後の第2代社長として就任し[8]、カカクコムの経営を引き継いだ。創業者退場と買い手側経営者就任の連続性が、IT黎明期の日本における事業承継の典型事例の一つとして残った。
穐田誉輝氏は1969年生まれ、青山学院大経済卒で、ICPの代表からカカクコム社長に就任した。穐田誉輝氏(社長)体制の下で、価格比較サイト『kakaku.com』の事業基盤強化と上場準備が並行で進められた。2002年6月、株式会社デジタルガレージの資本参加を受け[9]、翌7月にデジタルガレージから役員を招聘し、同社の子会社[10]となった。デジタルガレージは伊藤穣一氏らが創業したインターネット投資企業で、当時の日本のネットビジネスのキーマンが集まる立場にあった。
2003年10月、カカクコムは東京証券取引所マザーズ[11]に株式を上場した。創業から6年で公開企業へ移行する短期サイクルは、IT企業としても速い部類に属し、価格比較サイトという新規性の高いサービスが市場に評価された結果である。2004年6月、本社を東京都文京区に移転[12]。2005年1月にフォートラベル株式会社[13]を株式取得及び株式交換により完全子会社化、3月に東京証券取引所市場第一部へ市場変更を完了した[14]。上場から1年半で一部昇格を達成する速さも、当時のIT業界としては破格だった。
2005年、食べログ(tabelog.com)[15]が立ち上げられた。後の第5代社長となる村上敦浩氏(2004年入社)が立ち上げの中心人物として関与し[16]、ユーザー投稿型のレストラン口コミサイトとして開始された。食べログは初期から本サイト『kakaku.com』とは別カテゴリの主力サービスとなる潜在性を持ち、2010年代を通じて急成長した。
2006年6月、第3代社長として田中実氏(1962年生[17]、東京外大卒、三菱銀行→デジタルガレージ)が就任した[18]。田中氏は2016年まで10年間社長を務め[19]、その間カカクコムは連続増収増益を続け、食べログを主力サービスに育てた経営期間として残った。田中氏は経営プロのインタビューで、カカクコムには熱いおたく集団がいます、うちには、競合とどう差別化するかといったことを、ビジネススクール的なアプローチで分析するような社員はいないんですと、同社の現場主導の事業文化を語った。
田中実社長の在任期間、カカクコムは比較・評価領域のサービスを買収で取り込んだ。2007年4月に映画情報サイトの株式会社エイガ・ドット・コムを株式取得により子会社化し[20]、2014年3月に旅行関連の株式会社タイムデザイン[21]、2015年2月に自動車情報の株式会社webCG[22]を相次いで子会社化した。すでに2005年1月には旅行クチコミのフォートラベル株式会社[23]を完全子会社化しており、映画・旅行・自動車という消費者の関心領域ごとに、比較・評価サービスを自社グループへ取り込む動きを続けた。
価格比較サイト・クチコミサイト・レビューサイトといった『比較・評価』を軸に据えるサービス群を、自社の傘下へ集約することで総合プラットフォーム化を進めた。田中実社長の在任期間における事業拡大は、本サイト『kakaku.com』と食べログの自社開発に、関連領域の買収を併用する形で進んだ。価格・飲食店・旅行・映画・自動車と、ユーザーが意思決定の前に『比較し評価を確かめる』場面を、領域横断で押さえる方向の拡大である。
2009年5月、株式会社デジタルガレージが保有する自社株式の一部[24]をカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)へ譲渡完了し、デジタルガレージ及びCCCの持分法適用関連会社となった。2012年5月、CCCが保有する自社株式の一部[25]を株式会社電通(現・電通グループ)へ譲渡完了し、2012年6月に株式会社電通の持分法適用関連会社となった[26]。この間、カカクコム本体の事業は田中実社長の下で連続増収増益を続けており、株主の側だけが3年ごとに入れ替わる構図だった。
創業期の親会社デジタルガレージが筆頭株主の座を保ったまま、2009年にレンタル・流通のCCCが、2012年に広告最大手の電通が株主として加わった。デジタルガレージの筆頭株主としての継続と、CCC・電通という主要株主の相次ぐ参入は、上場後10年間のカカクコムを資本面から特徴づける動きである。事業の主導権は一貫してカカクコム経営陣が握り続けた一方、資本側ではネット投資会社に加えメディア・広告系の事業会社が株主として加わっていった。
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|---|---|---|---|---|
| 1997〜2001年槙野光昭氏が在学中に立ち上げた価格比較サイトと28歳での売却 | ウェブサイト「価格.com」を創設 | ★★ | ||
| 価格情報提供サービスを開始 | ★ | |||
| 槙野光昭 | コアプライス設立 | ★ | ||
| 槙野光昭 | サイト名称を「価格.com」に変更 | ★ | ||
| 槙野光昭 | コアプライスからカカクコムへ組織・商号変更 | ★ | ||
| 2002〜2015年田中実社長体制10年の連続増収増益と食べログの主力化 | 穐田誉輝 | 主要株主の変遷(デジタルガレージ→CCC→電通→KDDI) カカクコムは2002年にデジタルガレージ(DG)の連結子会社となって以降、主要株主だけがCCC、電通、KDDIへと入れ替わりながら、いずれの買い手も過半を握らず、事業の独立を保ち続けた。2026年にはDGとKDDIが約38%の共同保有を届け出て、非公開化をめぐる争奪戦の前提を作った。 詳細を読む | ★★★ | |
| 穐田誉輝 | デジタルガレージの子会社に | ★ | ||
| 穐田誉輝 | 東京証券取引所マザーズに株式を上場 | ★ | ||
| 穐田誉輝 | フォートラベルを株式取得・株式交換により完全子会社化 | ★ | ||
| 穐田誉輝 | 食べログの立ち上げと「第二の柱」化 2005年3月、価格.comに収益を頼っていたカカクコムが、飲食店のユーザー投稿型クチコミ・評価サイト『食べログ』を別ブランドで立ち上げた新規事業の判断。社員2人・サーバー1台で始めた小さな試みは、掲載料と予約手数料を積み上げ、のちにグループ最大の売上・利益源へ育った。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 穐田誉輝 | 価格.com不正アクセス事件とサイト全面閉鎖 2005年5月、不正アクセスで価格.comが改ざんされ、閲覧しただけでトロイの木馬型ウイルスに無差別感染しかねない被害を前に、社長の穐田誉輝氏が主力サイトを約10日間にわたり全面閉鎖した危機対応。60台を超えるサーバーを丸ごと停止・入れ替え、掲載料・広告料の全額返金と販売機会損失の補償を打ち出した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 田中実 | エイガ・ドット・コムを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 田中実 | デジタルガレージが保有株式の一部をカルチュア・コンビニエンス・クラブへ譲渡 | ★★ | ||
| 田中実 | カルチュア・コンビニエンス・クラブが保有株式の一部を電通へ譲渡 | ★★ | ||
| 田中実 | 電通の持分法適用関連会社に | ★ | ||
| 田中実 | タイムデザインを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 田中実 | webCGを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 田中実 | 求人情報の一括検索サービス「求人ボックス」を開設 | ★★ | ||
| 2016〜2026年畑彰之介社長体制から村上敦浩社長体制への承継と食べログの収益柱化 | 畑彰之介 | LCLを株式取得により子会社化 | ★ | |
| 畑彰之介 | ガイエを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 畑彰之介 | 九州支社を開設 | ★ | ||
| 畑彰之介 | 電通が保有する株式をKDDIへ譲渡完了 | ★★ | ||
| 畑彰之介 | KDDIの持分法適用関連会社に | ★ | ||
| 畑彰之介 | 渋谷オフィスを開設 | ★ | ||
| 畑彰之介 | フォートラベルを吸収合併 | ★ | ||
| 畑彰之介 | 東京証券取引所プライム市場へ区分移行 | ★ | ||
| 畑彰之介 | Patheeを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 村上敦浩 | Pathee の全株式を譲渡 | ★ | ||
| 村上敦浩 | 連結の範囲から除外 | ★ | ||
| 村上敦浩 | 非公開化をめぐる買収争奪戦とLINEヤフーの対抗提案 2026年、価格.com・食べログを運営するカカクコムの非公開化をめぐり、スウェーデンの投資ファンドEQTと筆頭株主デジタルガレージの連合による1株3,000円・総額約5,900億円のTOBに、LINEヤフーと米ベインキャピタルの連合が最大3,500円・約6,700億円の対抗提案をぶつけた買収争奪戦。取締役会は当初EQT案に賛同したが、7月に株主への応募推奨を撤回して中立へ転じ、本稿の時点で決着していない。 詳細を読む | ★★★ |
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事実根拠:出所(カカクコム)