楽天グループの直近の動向と展望
楽天グループの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
Q1/2025にEBITDA黒字化、1000万回線到達の意味
2025年3月期第1四半期、楽天モバイルは固定資産税控除後のEBITDA黒字化(1億円の水準)を達成した。三木谷は通期での黒字化の実現可能性を「極めて高い」と明言し、2025年12月期には2年連続の営業黒字144億円、新規獲得費を除いたEBITDAは約900億円弱に到達した。契約回線数は2025年末に1000万を突破し、携帯電話事業への参入から5年半での事業基盤の確立となっている。モバイル経由の新規および既存顧客による楽天市場での購入金額は前年比約50%の増加となり、楽天経済圏全体への相乗効果が数値で確認された。通信単独での黒字と電子商取引への送客増加が同時に立ち上がり、2019年の参入表明の時点で掲げた二重の狙いが実数値で並んだ局面となっている。
三木谷は2025年の決算説明会で「楽天モバイルには3つの目的がある。1つ目は楽天エコシステムへの多大な貢献、2つ目は単体事業としての収益性、3つ目は楽天シンフォニーのソフトウェア技術をテストドライブ的に証明すること」(三木谷浩史 決算説明会 FY25)と事業の位置付けを整理した。財務レバレッジは計画8.5倍に対し6.5倍で着地し、非有利子負債性調達と資産マネタイゼーションの組み合わせで社債償還原資を確保する計画を進めている。楽天銀行の単独上場や楽天カードへの15%出資受入は、グループ資産を市場と提携先に渡して通信投資の借換え資金へ振り向ける一連の動きだった。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY25-1Q
- 決算説明会 FY25-3Q
- 決算説明会 FY25
AI実装と営業利益1兆円という長期目標
2026年の設備投資計画は前年の遅延分を含めて2000億円強と発表された。基地局の3セクターから6セクターへの高密度化、マッシブMIMOのソフトウェアアップグレード、ミッドバンド(1.6GHz帯)のフル活用、5Gスタンドアローンの開始により単局の通信容量を引き上げる方針である。長期目標として営業利益1兆円を掲げ、モバイル先行投資の回収段階への移行を打ち出した。人工知能戦略では自社大規模言語モデル「Rakuten AI 7B」を2024年3月に公開し、同年12月にはMixture of Experts採用の「Rakuten AI 2.0」を発表している。通信・人工知能・金融・電子商取引の4層を1つのIDで束ねる構想に対し、投資負担と回収の期待の接点が数値目標として示された段階に入ったといえる。
各事業にAI担当者(CAIO)を配置し、楽天市場・楽天トラベル・Rakuten Linkへセマンティック検索を統合してコンバージョン向上を図っている。AI活用による利益創出額は300数十億円予想を「保守的」と三木谷が評した水準に達した。AST SpaceMobileとの衛星連携で全国カバレッジを強化し、楽天シンフォニーは顧客数74社に到達してO-RAN外販事業の成長を示した。1997年の月額5万円から始まったエコシステムは、通信とAIを抱えた総合事業体として次の局面へ移行している。ノータッチモデルで組み上げた楽天経済圏の外枠に、通信という資本集約レイヤーを付け足す10年越しの試みが、ようやく黒字回収の入口に到達した段階にある。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY25-1Q
- 決算説明会 FY25-3Q
- 決算説明会 FY25