1999年9月、大阪市住之江区に夢の街創造委員会株式会社を設立した。社長には花蜜伸行氏が就任した。翌2000年4月の時点で、インターネットで複数の店の出前を受け付ける日本初のウェブサイトはすでに動いていた。利用者が飲食店のチラシなどに示されたURLからサイトにアクセスすると、その時間に自分の所在地周辺で出前できる店のサイトにつながる。あとはネット経由で注文するだけでよい。支払いは通常の出前と同じ現金決済で、原則として割引が付くため、利用者には得になる。同年10月、夢の街創造委員会はデリバリー総合サイト"出前館"を正式に開設した。
加盟する飲食店に、夢の街創造委員会は初期負担も会費も求めなかった。各飲食店が配っているチラシは平均5万枚程度で、そこに出前館のURLを印刷する。あとはインターネット経由の売上高の原則5%を夢の街創造委員会へ支払うだけでよい。ホームページの作成と保守は夢の街創造委員会が引き受けるため、飲食店の側にネットの知識も要らない。2001年1月からは月会費3000円を徴収する予定を立てた。導入した店では、注文の平均20%弱がネット経由に変わった。2000年4月の時点で、ピザ店や弁当店などを中心に約10社500店以上が加入済みだった。
受注の手順も、飲食店がパソコンを持たない前提で組み立てた。加盟店にはNTTドコモの携帯メール端末"エクシーレ"を無償で貸与し、ネット経由の注文をその端末で受け取らせた。端末からは料金設定の変更など自社サイトの中身も操作できた。チラシにURLを印刷した店から順に、ネット注文へ対応させる予定だった。加えて、ポータルサイトなどへ出前館だけを出店させ、チラシ以外にネット利用者へも訴える計画を持っていた。年内の黒字化と早期の株式上場を見込み、花蜜社長は4月中に加盟1000店という目標を掲げた。
2001年、中村氏はハークスレイを退社し、経営コンサルティング会社の有限会社キトプランニングを設立して独立した。夢の街創造委員会はクライアントの1社として残り、中村氏は当時の社長から社外取締役を依頼されて引き受けた。夢の街創造委員会の損益は、2002年8月期から3期続けて当期純損失となる。それでも中村氏には、出前館が大化けする可能性があるという見立てがあった。独立後の中村氏は毎月50万円ほどの給料を取り、コンサルティング会社の年商は3000万円ほどに達していた。一方の夢の街創造委員会は、月商が20万円を超える程度だった。
夢の街創造委員会は2億8000万円の負債を抱え、そのままでは倒産しかねない経営状態にあった。そこで、ベンチャー企業支援に力を入れていた大阪ガスにプレゼンして出資を仰ぐ。当時の社長は、出資が決まれば最後のチャンスだとして、中村氏に社長を引き受けるよう求めた。出前館はインフラにあたる事業であり、やりよう次第で年商20億円にも200億円にも届きうると中村氏は見ていた。大阪ガスは4000万円の出資を決めた。2002年1月、中村氏は夢の街創造委員会の代表取締役社長に就任した。
給料を社内最低の10万円に据え、誰より働く姿を見せたのは中村利江社長自身である。その下で社員は総入れ替えとなり、やる気を失った者が辞めて、ともに踏ん張ろうとする者だけが残った。
並行して、加盟店を増やす営業にも取り組んだ。登録店に注文が入るようにと、店ごとのチラシを手作りして周辺に配布した。ピザハットは何度訪ねても会ってもらえなかった相手で、マイクロソフトのMSNと出前館の提携契約をまず結び、MSNを通してアポイントを取った。テストで10店舗の出店が決まると、他の大手ピザチェーンも加盟した。2004年7月に"モバイル出前館"を始め、2005年7月にはヤフー運営の"Yahoo! JAPAN"に"Yahoo! 出前注文サービス"を設けて、注文の入口を外部へも広げた。
3億円近い負債は解消し、社長就任から3年目の2005年、夢の街創造委員会は創業以来初の黒字を計上した。花蜜社長が2000年春に見込んだ年内の黒字化は、5年遅れで実現した。東京にも足場を作った。2004年9月に東京都千代田区へ東京営業所を開設し、上場を控えた2006年6月に東京都港区へ移している。同じ2006年6月、大阪証券取引所ヘラクレス市場に株式を上場した。2006年8月期の売上高は649,446千円、経常利益は149,872千円、当期純利益は152,432千円である。中村利江社長が就任した頃に月商20万円ほどだった会社が、年商6億円の規模になった。料理を運ぶのは加盟店であり、夢の街創造委員会が担ったのは注文の取り次ぎと手数料の回収だった。
2006年6月、夢の街創造委員会は大阪証券取引所ヘラクレスへ株式を上場し、公募売出増資により資本金を10億4377万5千円とした。同月、東京営業所を東京都港区へ移転している。翌7月には電話オペレーターが注文を代行する"宅配ホットライン"を始め、10月には三井住友カードおよびGMOペイメントゲートウェイと業務提携してクレジット決済を導入した。2007年9月には1株を3株とする株式分割を実施した。2008年6月にはポイントを使って注文できるサービスを加えている。2009年3月にカルチュア・コンビニエンス・クラブと資本業務提携し、同年5月に任天堂の"Wii"で"出前チャンネル"を、6月に"TSUTAYA×出前館"を開いた。注文の入口は、自社サイトの外側へ広がっていった。
2010年11月、"出前館"の加盟店数が1万店を突破した。会員数は340万人に達していたが、その構成比は首都圏が55%、近畿圏が19%で、残る26%が地方だった。2010年8月期の流通金額は約160億円で、食品宅配市場全体の1%程度にすぎない。注文の経路も広げた。2010年6月にヤマトシステム開発と提携してネットスーパー向けのシステムパッケージの提供を始め、同年12月にiPhone専用アプリを、2011年8月にAndroid専用アプリを出した。2011年7月には凸版印刷の電子チラシサイト"Shufoo!"とサービスを連携させた。
一方で、売上高の伸びは年を追って細った。2008年8月期の売上高9億4052万8千円は前期比23%増、2009年8月期の10億7402万7千円は14%増、2010年8月期の11億5769万5千円は8%増にとどまる。営業利益率は2007年8月期の30.1%から2009年8月期には16.1%へ低下した。大型システム投資と戦略的マス広告を実施したためである。会社が挙げた課題は2つある。会員数そのものは伸びていてもオーダー数と連動せず、会員1人あたりの注文数が増えていないこと。そして店舗が首都圏と近畿圏に集中し、大手チェーンの加盟がほぼ完了していることである。加盟店と会員の数を積む手は、このとき尽きかけていた。
2010年10月8日、夢の街創造委員会は2011年8月期から2013年8月期までの中期経営計画を公表した。掲げたのは3つの事業の柱である。出前のポータルサイトとしての絶対的地位の確立、出前館に続く2本目の収益の柱の確立、そして新しい事業ポートフォリオの創出だった。計画を出したのは中村利江氏ではない。前年の2009年11月に中村氏は代表取締役会長へ退き、野村総合研究所から2008年10月に入社した葭田徹氏が代表取締役社長に就いていた。葭田氏はシステム企画グループのシニアマネージャーとして入社し、執行役員としてシステム部門を管掌したのち、社長就任後はネットスーパー部門と社長室を管掌した。3年後の目標は、非連結で売上高20億円・営業利益率30%である。
2本目の柱に据えたのはネットスーパー事業である。会員が集中する首都圏190万人・近畿圏65万人を中心に出店し、既存の大手ネットスーパーと会員IDを連携させる筋道を描いた。ネットスーパーの市場規模は2008年の231億円から2013年に468億円へ、約2倍に伸びる見通しがあった。3本目が中国事業である。北京だけで1日1000万人以上が出前を注文する一方、現地の出前サイトはネットだけで受注が完了するものが少なく、完成度は出前館の開業当初の日本に近いとみた。2011年12月、北京市に全額出資の夢創会(北京)商務諮詢有限公司を設立し、翌2012年1月にデリバリーサイト"得利好"を開いた。2012年7月にはソウル特別市にも夢の街株式会社を設立している。
2012年10月12日、夢の街創造委員会は中期経営計画を修正した。2013年8月期の目標は、単体の売上高が20億円から15億5000万円へ、営業利益が6億円から2億7000万円へ引き下げられた。理由として挙げたのは、新規事業の開始時期がビジネスモデルの模索と見極めによって当初の計画値と相違したこと、そして事業自体が見込みどおりに推移しなかったことである。本業のほうは、売上高もオーダー数も会員数も加盟店舗数もいずれも過去最高値を記録し、九州・中部・北海道に営業所を設けていた。実際、2013年8月期の出前館事業の売上高は14億2720万6千円、セグメント利益は4億7591万8千円に達している。
2012年11月、中村利江氏が代表取締役社長へ復帰した。同年9月にいったん代表取締役会長に就いたうえでの復帰である。翌2013年5月17日、夢の街創造委員会は薩摩恵比寿堂の株式100%を取得して連結子会社とした。薩摩恵比寿堂は、コールセンターのオペレーターが電話で全国の飲食店へセールスをかけ、店名やロゴ入りのオリジナルラベルを貼った高級焼酎を通信販売する会社である。ポスターやテーブルPOPを作って販売促進も請け負っていた。連結に加わった2013年5月から8月までの4か月で、通信販売事業は売上高6億5977万5千円、セグメント利益3868万4千円を計上している。
自分の手で市場を開く投資は畳んでいった。2014年8月、夢創会(北京)商務諮詢有限公司の全株式を売却した。翌2015年1月にはソウルの夢の街株式会社と、2013年7月に設立したDeliDeliを解散している。代わりに取りに行ったのは他社の事業と経路だった。2013年3月に日本フードデリバリーの第三者割当を引き受けて資本業務提携し、同年12月にZENの株式100%を取得、2014年5月にはPT Klik Eat Indonesiaの株式55.4%を取得して子会社とした。2014年4月には"出前館"がNTTドコモと"dデリバリー"サービスで業務提携している。
2014年8月期の連結売上高は35億5843万1千円となった。内訳は通信販売事業が18億3589万円、出前館事業が17億2254万1千円で、買収の翌期には売上の過半を焼酎の通信販売が占めた。ただしセグメント利益は出前館事業が5億2794万7千円、通信販売事業が1億4048万円である。2014年11月12日、夢の街創造委員会は2015年8月期から2017年8月期までの中期経営計画を公表し、柱を出前館事業と通信販売事業の2つに整理した。中長期の目標にはWEBからの発注によるデリバリー流通金額のシェア50%の獲得を掲げ、2017年8月期に売上高48億600万円・営業利益9億1800万円を置いた。3本立ての構想は、本業と買った事業の2本に畳み直された。
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事実根拠:出所(出前館)