ソフトウェア流通の空白を突いた創業構想自体は合理的だが、注目すべきは23歳の孫正義氏がシャープ副社長や野村証券社長といった財界重鎮の人脈を動員して信用力を調達した点にある。卸売業は取引先の信頼が事業基盤となるため、大森氏の招聘と1000名規模の歓迎パーティーは、事業そのものの設計…
売上高1711億円の企業が2200億円の社債を発行した事実は、通常の信用分析では説明しにくい。北尾吉孝氏の招聘に象徴されるように、ソフトバンクは証券市場の論理を社内に持ち込むことで銀行依存から脱却し、FA債という新方式で調達コストまで圧縮した。買収戦略と財務戦略を一体で設計した点…
Ziff-Davisの買収は表面的にはメディア企業の取得だが、実態はシリコンバレーのベンチャー情報を収集するための情報基盤への投資であった。買収リターンをZiff-Davisの営業利益ではなくベンチャー投資の成果に依存させた構造は、のちのSVFにおける投資モデルの原型といえる。個…
注目すべきは投資規模の非対称性である。米Yahoo株式5%を2億円で取得し、追加出資を含めても約102億円の投下資本が、ネットバブル期には3兆円超の含み益を生んだ。Ziff-Davis買収による情報ネットワークがYahoo発掘の起点となっており、約21億ドルの買収費用を回収する論…
テレビ朝日株式21.4%を間接取得するスキームは財務的には合理的だったが、テレビ局側が経営の独立性を優先してIT企業の介入を排除した点が本件の核心である。1990年代の日本のメディア業界では、新聞社とテレビ局の資本関係が強固であり、外部資本による経営参画を受け入れる土壌がなかった…
トレンドマイクロへの出資は、利益率29%の高収益企業を売上高の約5倍で評価した投資である。1996年のソフトバンクはZiff-Davis、Yahoo、テレビ朝日、キングストンと年間で数千億円規模の投資を連発しており、トレンドマイクロの35億円は相対的に小粒であった。しかし、パソコ…
ネットバブル期のソフトバンクの時価総額はYahooの含み益に依存しており、株価下落が即座に企業価値の毀損に直結する構造であった。バブル崩壊後の対応として、2年間で合計4000億円超の売却益を確保しつつ、Ziff-Davisや日本債券信用銀行など1990年代の投資資産を段階的に処分…
ADSL事業の本質は技術選択ではなく、先行投資で市場シェアを確保し数年後の黒字転換を狙う事業展開モデルの確立にある。売上高399億円に対して営業赤字962億円という数字は、通常の事業判断では許容されない水準であり、孫正義氏の「百数十万ユーザーで損益分岐」という計算に基づくリスクテ…
ボーダフォン買収で注目すべきは買収金額の大きさよりも、ノンリコースローンによるLBOスキームの設計にある。ボーダフォンの資産を担保に1.2兆円を調達し、買収が不調でもソフトバンク本体への影響を限定する構造は、1990年代のZiff-Davis買収時にMAC(個人会社)を噛ませたス…
SVF1では外部投資家が運用額の3分の2を占め、ソフトバンクのリスクは限定的であった。しかしSVF2では資金調達の不調により自己資金比率が96%に達し、投資先の評価変動がほぼ直接的にソフトバンクの損益に反映される構造となった。WeWorkの損失に象徴されるように、ファンドの成績が…