岩田屋をTOBで子会社化(2005年・伊勢丹の決断)

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論点過半に満たぬ持分で連結子会社にするか
伊勢丹:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
議決権43.1%のまま実質支配で連結し、福証上場を残した子会社化

何をなぜ決めたか:議決権43.1%のまま実質支配で連結し、福証上場を残した子会社化

概要

2005年2月、伊勢丹が株式の公開買付により福岡の岩田屋を連結子会社とした経営判断。株式の追加取得額は3,077百万円で、議決権の所有割合は43.1%にとどまったが、実質的に支配しているとして連結子会社とした。岩田屋の福岡証券取引所への上場と有価証券報告書の提出はその後も続いた。武藤信一社長のもとでの決断である。

背景

岩田屋は福岡・天神の老舗百貨店で、資本金2,240百万円、決算日は2月28日の有価証券報告書提出会社であった。伊勢丹は公開買付の前から持分法適用の関連会社として株式を保有し、債務保証と運転資金の貸付、商品の卸売を行う関係にあった。伊勢丹は支店を地域一番店とする方針のもと、本部で作り上げた売り場と業務の仕組みを外の百貨店へ移す方策を探っていた。

内容

追加取得額3,077百万円に対し、連結開始時に受け入れた資産は流動資産25,267百万円と固定資産47,996百万円、引き受けた負債は流動負債41,011百万円と固定負債28,853百万円であった。連結調整勘定2,023百万円は発生年度に一括償却している。岩田屋が持っていた現金5,828百万円が取得額を上回り、連結では2,750百万円の収入超過となった。

含意

連結の初年度にあたる2006年3月期、連結売上高は760,038百万円と131,041百万円の増収になり、うち百貨店業が127,619百万円を占めた。連結営業利益30,061百万円、連結経常利益30,925百万円、連結当期純利益18,710百万円といずれも過去最高となった。販売費及び一般管理費も28,062百万円増加し、その多くが岩田屋の連結によるものであった。

いつ何が起きたか8件
考察:43.1%という選び方
考察

考察:43.1%という選び方

伊勢丹が岩田屋に投じた追加取得額は3,077百万円で、受け入れた固定資産47,996百万円に比べれば小さい。岩田屋が抱えていた現金は5,828百万円あり、連結のうえでは2,750百万円の収入超過となった。議決権の所有割合も過半に満たぬ43.1%にとどまり、有報は「持分は100分の50以下でありますが、実質的に支配しているため連結子会社としたもの」と記すにすぎない。買い取ったというより、債務保証と運転資金の貸付で支えてきた関係を、支配へ一段進めた手続きに近い。

岩田屋はその後も福岡証券取引所への上場と有価証券報告書の提出を続け、連結売上高の10%を超える規模を保った。看板ごと塗り替える完全子会社化を取らず、地元の店として残したまま仕組みだけを移したことになる。連結の初年度にあたる2006年3月期、百貨店業の売上高は127,619百万円増加し、販売費及び一般管理費も28,062百万円増加した。数字の上では規模の拡大だが、伊勢丹が得たのは売り場と業務の型を外へ移せるという確かめであったのだろう。その型は2007年3月の東急百貨店との包括的業務提携へ続き、2008年4月の三越との株式移転で伊勢丹自身の連結決算は幕を閉じた。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

伊勢丹:連結業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
伊勢丹:連結業績の推移
(百万円)売上高経常利益当期純利益備考
2002年3月期615,67021,69012,513
2003年3月期601,89717,1097,701
2004年3月期614,81016,157△3,093第119期。当期純損失3,093百万円を計上した
2005年3月期628,99621,90712,6192005年2月に公開買付け。岩田屋は期末から連結し、損益は翌期から取り込んだ
2006年3月期760,03830,92518,710売上高は131,041百万円の増収。うち百貨店業が127,619百万円を占めた
2007年3月期781,79833,41618,291
2008年3月期785,83933,68513,760伊勢丹単独の連結決算はこの期が最後となった
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期・第123期(最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移)
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期・第123期(最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移)

伊勢丹:総資産額と純資産額の推移

総資産額(百万円)純資産額率(%)
伊勢丹:総資産額と純資産額の推移
(百万円)総資産額純資産額備考
2002年3月期448,948150,429
2003年3月期420,938154,664
2004年3月期423,565153,128
2005年3月期461,579163,930岩田屋の流動資産25,267百万円と固定資産47,996百万円を期末から連結した
2006年3月期493,553194,789
2007年3月期474,895213,194純資産の部の表示に関する会計基準を適用し、少数株主持分を含む
2008年3月期466,542218,716
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期・第123期(最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移)。純資産額は2007年3月期から純資産の部の表示に関する会計基準を適用
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期・第123期(最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移)。純資産額は2007年3月期から純資産の部の表示に関する会計基準を適用

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
公開買付けの実施2005年2月沿革に「株式の公開買付により、㈱岩田屋を連結子会社化」と記載
被取得企業㈱岩田屋(福岡市中央区)百貨店業。資本金2,240百万円で、福岡証券取引所に株式を上場していた
取得した議決権比率43.1%2006年2月28日現在。岩田屋の決算日が2月28日のため同日の割合を記載
過半に満たずに子会社とした理由実質的に支配しているため議決権の所有割合は100分の50以下だが連結子会社としたと注記している
株式の追加取得額3,077百万円既に持分法適用の関連会社として保有していた株式の評価額は767百万円
取得による収入(純額)2,750百万円の収入超過新規連結子会社の現金及び現金同等物5,828百万円が取得額を上回った
受け入れた資産流動資産25,267・固定資産47,996単位は百万円。岩田屋と岩田屋友の会の連結開始時の額
引き受けた負債流動負債41,011・固定負債28,853単位は百万円。少数株主持分は1,576百万円
連結調整勘定2,023百万円重要なものを除き発生年度に一括償却する方針で、2005年3月期に全額を償却
同時に関連会社となった会社㈱エージーカード・㈱浜屋百貨店岩田屋株式の追加取得に伴い、持分法適用の関連会社に加えた
連結を始めた時期2005年3月期末貸借対照表から連結し、損益の取り込みは2006年3月期から始まった
岩田屋の上場福岡証券取引所に維持有価証券報告書の提出会社で、売上高は連結売上高の10%を超えていた
その後の持株比率51.7%2008年3月31日現在。2007年3月期末までは43.1%にとどまっていた
買付価格・買付期間・応募株券数記載なし決議期にあたる第120期の有報が未取得。第121期の重要な契約等は記載なし
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期(2006年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】/第123期(2008年3月期)【関係会社の状況】
出所:伊勢丹 有価証券報告書 第121期(2006年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】/第123期(2008年3月期)【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • 伊勢丹 有価証券報告書【沿革】
  • 伊勢丹 有価証券報告書(2006年3月期・連結)
  • 伊勢丹 有価証券報告書「第121期(2006年3月期)」
  • 伊勢丹 有価証券報告書「第122期(2007年3月期)」
  • 伊勢丹 有価証券報告書「第123期(2008年3月期)」

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