不二家の51%子会社化(2007年・山崎製パンの決断)

更新:
論点 老舗菓子の再建支援を引き受けるか
山崎製パン:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
二度重ねた第三者割当増資の引受と、菓子の老舗の再建支援

何をなぜ決めたか:二度重ねた第三者割当増資の引受と、菓子の老舗の再建支援

概要

2007年3月26日の取締役会で不二家の第三者割当増資新株式の引受を決議し、同日付で業務資本提携契約を締結した。払込期日は4月11日、引受株式数は普通株式68,032,000株、引受価格総額は159億87百万円(1株235円)で、資金は金融機関から借り入れた。これにより発行済普通株式の35%を保有し、持分法適用関連会社とした。

2008年11月7日には新たな業務資本提携契約を締結し、同月27日に63,470,000株を引き受けた。保有株式は131,502,000株、発行済普通株式の51%となり、不二家とその子会社6社を連結子会社としている。

背景

引受の狙いは、それまで続けてきた食品安全衛生管理体制の整備支援だけでは事業の立て直しに足りないと判断し、出資と人材の派遣を加えて経営を支えることにあった。不二家の売上高は2006年3月期で848億43百万円。山崎製パンは2006年7月に東ハトの株式を取得して製菓部門の中核会社に位置づけたばかりで、菓子は拡大の余地が残る領域だった。

内容

入口は資本ではなく技術だった。2007年2月5日に食品安全衛生管理体制整備の支援に関する覚書を締結し、AIB(American Institute of Baking)食品安全システムの導入を支援している。資本提携に伴い、取締役5名(うち代表取締役1名)と監査役1名を派遣した。派遣は不二家の定時株主総会の承認を条件とした。業務提携の中身は両社製品の相互販売、相互OEM生産、共同プロモーションの展開、販売拠点の共同開発、物流の共同化で、両社に業務提携推進委員会を設置した。

含意

みなし取得日が2008年12月31日のため、2008年12月期は貸借対照表のみを連結し、損益計算書は持分法によっている。数字が動いたのは翌期で、製菓・米菓・その他商品類部門の売上高は982億54百万円から1,491億67百万円(前期比151.8%)、洋菓子部門は827億54百万円から1,108億19百万円(同133.9%)へ跳ねた。

一方で連結開始時に計上したのれんは35億56百万円にとどまる。新規連結子会社株式の取得価額80億99百万円に対し、新規連結子会社が持っていた現金同等物は100億84百万円で、差引では19億85百万円の収入となった。

いつ何が起きたか 6件
考察:救済と拡大が同じ一手になるとき
考察

考察:救済と拡大が同じ一手になるとき

この判断の性格は、救済と事業拡大がひとつの取引に重なったところにある。独占禁止法の制約でパンの規模をこれ以上積み増せなかった山崎製パンにとって、菓子と洋菓子の両方を持つ会社は本来なら高い買い物であったはずが、不祥事によって自ら支援を求める立場に回っていた。逆に不二家は、洋菓子を切り離さずに立て直すという条件を守れる相手を探していた。互いの制約が噛み合った結果として、覚書による技術支援から始まる段階的な関与が成り立っただろう。

もっとも、この取引が安く済んだという読み方には留保がいる。連結開始時ののれんは35億56百万円で、159億87百万円を払った第1回の引受を含めれば、支出の大半は増資の払込として不二家の手元へ入っている。買収というより延命のための資金供給に近く、回収は洋菓子と製菓の売上が積み上がるかどうかに委ねられた。製菓・米菓部門が連結初年度に前期比151.8%となった一方、食品事業のセグメント利益は241億20百万円から226億91百万円へ下がっている。量販店やコンビニへ通じる営業と物流を貸すという再建の方法が効いてくるまでには、なお時間が要ったとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

山崎製パン:洋菓子・製菓部門の売上高と連結ののれん

洋菓子部門(百万円)製菓・米菓・その他商品類部門(百万円)
山崎製パン:洋菓子・製菓部門の売上高と連結ののれん
(百万円) 洋菓子部門製菓・米菓・その他商品類部門のれん 備考
2006年12月期 76,61284,39319,974 東ハトを子会社化し、のれんを199億74百万円計上した
2007年12月期 79,29797,04318,950 4月に不二家株式の35%を取得し、持分法適用関連会社とした
2008年12月期 82,75498,25421,475 11月に51%へ。みなし取得日が期末のため貸借対照表のみを連結
2009年12月期 110,819149,16720,278 不二家グループの損益を連結。製菓は前期比151.8%、洋菓子は133.9%
2010年12月期 121,882168,11819,076
2011年12月期 115,544155,64517,875
2012年12月期 116,531158,07717,165
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59〜65期(【業績の概要】部門別売上高・連結貸借対照表)
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59〜65期(【業績の概要】部門別売上高・連結貸借対照表)

山崎製パン:食品事業の売上高とセグメント利益

外部顧客に対する売上高(百万円)セグメント利益率(%)
山崎製パン:食品事業の売上高とセグメント利益
(百万円) 外部顧客に対する売上高セグメント利益 備考
2006年12月期 691,70615,584
2007年12月期 716,45219,012
2008年12月期 750,95324,120
2009年12月期 824,10122,691 不二家グループを損益連結した初年度。増収だが利益は前期を下回った
2010年12月期 856,19024,017
2011年12月期 856,45626,544 この期から報告セグメントに移行。区分と主要製品は従来と同じ
2012年12月期 875,64023,455
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59〜65期(事業の種類別セグメント情報・セグメント情報)
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59〜65期(事業の種類別セグメント情報・セグメント情報)

出資と子会社化の条件

出資と子会社化の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社不二家 菓子・食品・アイスクリームなどの製造卸、洋菓子販売チェーン店・喫茶・レストランの経営
取得の法的形式 第三者割当増資新株式の引受 2007年と2008年の2回に分けて引き受けた
引受の目的 出資と人材派遣による経営支援 それまでの食品安全衛生管理体制の整備支援だけでは、事業の立て直しに足りないと判断
第1回の決議日 2007年3月26日 同日に業務資本提携契約を締結。契約上の出資額は15,987百万円
第1回の引受株式数 普通株式68,032,000株 引受後の持分比率は35%
第1回の引受価格総額 15,987百万円(1株当たり235円) 資金は金融機関から借り入れ、払込は振込
第1回の払込期日 2007年4月11日 同日付で持分法適用関連会社とし、2007年9月30日の中間財務諸表を使用して取り込んだ
派遣した役員 取締役5名・監査役1名 取締役5名のうち1名は代表取締役。派遣は不二家の定時株主総会の承認が条件
第2回の契約日 2008年11月7日 新たな業務資本提携契約。一体となって諸施策を実施し事業再生と企業価値の向上をはかる
第2回の引受株式数 普通株式63,470,000株 払込は2008年11月27日
取得した議決権比率 51% 保有株式数131,502,000株。企業結合直前に所有していた比率は35%
企業結合日 2008年12月31日(みなし取得日) 貸借対照表のみを連結し、損益計算書は持分法により作成した
新規連結子会社株式の取得価額 8,099百万円 新規連結子会社の現金同等物10,084百万円との差引で1,985百万円の収入
のれん 3,556百万円 連結開始時に計上。発生日以後20年以内で均等償却
受け入れた資産・負債 流動資産21,549/固定資産37,269百万円 流動負債18,532、固定負債10,612、評価差額143、少数株主持分97(単位はいずれも100万円)
連結の範囲に加わった会社 不二家とその子会社6社 不二家の関連会社B-Rサーティワンアイスクリームほか1社は持分法の適用範囲に加えた
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59期(2006年12月期)【重要な後発事象】・第60期(2007年12月期)【経営上の重要な契約等】・第61期(2008年12月期)
出所:山崎製パン 有価証券報告書 第59期(2006年12月期)【重要な後発事象】・第60期(2007年12月期)【経営上の重要な契約等】・第61期(2008年12月期)
参考文献

参考文献

参考
  • 山崎製パン 有価証券報告書【沿革】
  • 山崎製パン 有価証券報告書「第59期(2006年12月期)【重要な後発事象】」
  • 山崎製パン 有価証券報告書「第60期(2007年12月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 山崎製パン 有価証券報告書「第61期(2008年12月期)【経営上の重要な契約等】・連結キャッシュ・フロー計算書注記」
  • 山崎製パン 有価証券報告書「第62期(2009年12月期)【業績の概要】」

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