大塚家具の完全子会社化(2021年・ヤマダHDの決断)

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論点 不振の家具子会社を完全子会社化するか
ヤマダHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
父娘騒動で疲弊した名門家具の救済と取り込み

何をなぜ決めたか:父娘騒動で疲弊した名門家具の救済と取り込み

概要

2021年6月9日の取締役会で株式交換を決議し、9月1日を効力発生日として、議決権の51.74%を保有していた大塚家具を完全子会社とした経営判断。交換比率は大塚家具株1株にヤマダ株0.58株で、交付した16,174,022株はすべて自己株式を充当し、新株は発行していない。2019年12月30日に第三者割当を引き受けて子会社化してから1年8か月での追加取得であった。

背景

家電量販は人口減少とEC拡大でビジネスモデルが限界に近づき、ヤマダは家電と家具を組み合わせる「家電住まいる館」など住関連への拡張を進めていた。一方の大塚家具は2015年の父娘のお家騒動を境に客離れと赤字が常態化していた。両社は2019年2月に業務提携の基本合意を結び、大塚家具から家電住まいる館への商品提供と家具販売のノウハウ・人的リソースの提供、法人分野での協業を重ねていた。

内容

ヤマダは2019年12月30日、大塚家具が実施した第三者割当の新株式と新株予約権を4,374百万円で引き受け、議決権の51.74%を取得した。受け入れた資産20,099百万円と負債6,243百万円の純額が取得原価を上回り、負ののれん発生益2,721百万円を特別利益に計上している。その1年8か月後、両社のさらなる協業関係の強化と、グループ内の迅速かつ柔軟な意思決定や方針徹底を実現する体制構築を目的に、株式交換による完全子会社化へ着手した。

含意

大塚家具の高級メーカー仕入れルートと富裕層の販売ノウハウは、安売りで伸びたヤマダがニトリやECと競合を避けるための資源であった。すでに子会社だったため株式交換にのれんは生じず、非支配株主との取引として資本剰余金が3,263百万円減っている。完全子会社化の翌2022年5月、大塚家具はヤマダデンキに吸収合併されて法人格を失い、家具販売事業はデンキセグメントへ移された。

いつ何が起きたか 10件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

考察:名門を抱えるということ
考察

考察:名門を抱えるということ

この判断の核心には、家電量販という業態が単独では立ちゆかなくなるという見通しがあった。安さと量で築いた土俵がECに侵食されるなかで、ヤマダは家具・住関連という隣接領域へ踏み出し、ニトリと競合しない高級の入り口として大塚家具を選んだ。もっとも支払った額は二段階で12,024百万円にとどまり、最初の出資では受け入れた資産と負債の純額が取得原価を上回って負ののれん発生益2,721百万円が利益に立っている。救済の形をとりながら、帳簿の上では安い買い物であった。

有報は2022年3月期に「その他」セグメントが2,154百万円改善して黒字に転じた主な理由を、大塚家具の収益改善だと記す。ヤマダデンキの店舗での大塚家具商品の販売拡大、来店客数の回復、家具と家電のシナジーが挙げられている。ところがその直後の2022年5月、大塚家具はヤマダデンキに吸収合併されて法人格を失い、家具販売事業は「その他」から「デンキ」へ移された。合併の目的として掲げられたのは、大塚家具の持つノウハウと経営資源をヤマダデンキに集約することであった。屋号は店舗ブランドとして残ったが、数字の上で大塚家具という単位は消え、名門を抱えた実験の帰趨を外から測る手がかりは、そこで途切れているだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ヤマダHD:大塚家具が属した「その他」セグメントの売上高と営業利益

ヤマダHD:大塚家具が属した「その他」セグメントの売上高と営業利益
(百万円) その他セグメント売上高その他セグメント営業利益 備考
2021年3月期 89,581△1,107 大塚家具を通期で連結した最初の期。店舗等固定資産の減損損失411百万円を計上
2022年3月期 65,109274 前期から2,154百万円改善し黒字転換。主な理由は大塚家具の収益改善と有報は記す
2023年3月期 32,5261,065 子会社間の合併に伴い家具販売事業を「デンキ」へ移した後の区分
2024年3月期 25,262676 減収・減益の主要因はコスモス・ベリーズにおけるビジネスモデルの変更
2025年3月期 24,684673
2026年3月期 10,118177 住設建材・家庭機器の卸売及び販売事業を「デンキ」へ移した後の区分
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第44〜49期(セグメント情報等・経営者による財政状態及び経営成績の状況の分析)
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第44〜49期(セグメント情報等・経営者による財政状態及び経営成績の状況の分析)

取得の条件

取得の条件
科目 概要 備考
被取得企業の名称 株式会社大塚家具 事業の内容は家具小売(収納、寝具、ダイニング、応接家具等)。本社は東京都江東区
企業結合を行った主な理由 大塚家具との連携を強固なものにするため 業務提携により大塚家具の改革の進展と当社の利益向上が確認できたため
第一段階の企業結合日 2019年12月30日 2019年12月12日開催の取締役会で資本提携の締結と引受けを決議した
第一段階の法的形式 株式取得 大塚家具が実施した第三者割当による新株式及び新株予約権の引受け
取得した議決権比率 51.74% 【関係会社の状況】の表記は51.7%。それ以前は業務提携のみで資本関係はない
取得原価(第一段階) 4,374百万円 対価の種類は現金
取得関連費用 28百万円 デュー・ディリジェンス及びアドバイザリー費用
受け入れた資産・引き受けた負債 資産20,099百万円/負債6,243百万円 流動資産15,400、固定資産4,698、流動負債5,325、固定負債918百万円
負ののれん発生益 2,721百万円 配分された純額が取得原価を上回ったため。のれんは発生していない
業績に与える影響(通期換算) 売上高25,545百万円、営業利益△3,246百万円 期首に完了したと仮定した概算額。当該注記は監査証明を受けていない
初年度に連結した期間 2020年1月1日から1月31日まで 大塚家具の決算期は4月30日。1月31日現在の仮決算に基づき連結している
第二段階の決議 2021年6月9日 同日の取締役会で株式交換を決議し、大塚家具と株式交換契約を締結した
第二段階の企業結合日 2021年9月1日 大塚家具は2021年7月29日開催の定時株主総会で本株式交換契約を承認
第二段階の法的形式 簡易株式交換 会社法第796条第2項により当社側は株主総会の承認決議を要していない
株式交換比率 ヤマダ1に対し大塚家具0.58 野村證券とデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが個別に算定
交付した株式数 16,174,022株 自己株式146,871,443株を充当し、新たな株式は発行していない
取得原価(第二段階) 7,650百万円 対価はヤマダの普通株式。第一段階と合わせて12,024百万円
第二段階の会計処理 共通支配下の取引等のうち非支配株主との取引 すでに子会社であったためのれんは発生せず、資本剰余金が変動する
減少した資本剰余金 3,263百万円 子会社株式の追加取得による持分変動。ヤマダ保有分に株式の割当てはない
完全子会社化後の議決権比率 100.0% 大塚家具の資本金は4,581百万円から100百万円になった
大塚家具の吸収合併 2022年5月1日 2022年2月14日の取締役会決議。ヤマダデンキを存続会社とし大塚家具は消滅
出所:ヤマダ電機 有価証券報告書 第43期(2020年3月期)・ヤマダホールディングス 第45期(2022年3月期)・第46期(2023年3月期)【企業結合等関係】
出所:ヤマダ電機 有価証券報告書 第43期(2020年3月期)・ヤマダホールディングス 第45期(2022年3月期)・第46期(2023年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役 10名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ヤマダ電機 有価証券報告書「第43期(2020年3月期)【企業結合等関係】」
  • ヤマダホールディングス 有価証券報告書「第44期(2021年3月期)【セグメント情報等】【重要な後発事象】」
  • ヤマダホールディングス 有価証券報告書「第45期(2022年3月期)【企業結合等関係】」
  • ヤマダホールディングス 有価証券報告書「第46期(2023年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報等】」

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