この分社の中心にあるのは、競争政策上の要請と、実際に移された事業の中身とのずれである。効率的な事業展開と公正競争の確保という二つの理由は、いずれも新会社の外側にある論理であった。切り出された側が持って出たのは、銀行ANSERやCAFIS、郵便貯金や厚生年金といった、公社でなければ作れなかった基幹システムである。競争を促すために別法人にした結果、その独占的な資産だけが親会社の外へ移り、独立した会社の収益基盤になっただろう。
藤田史郎氏(社長)が語った『借金こそあれ、蓄積はない』という自己認識は、資産の側からみると正確ではない。財務の蓄積はなくとも、顧客と基幹システムという蓄積は最初から手元にあった。1995年の上場が分離時に引き受けた借入金の返済を動機の一つにしていた点も含め、この会社は最初から親会社との貸借の上に立っていた。分離独立から37年後の2025年9月30日、NTTデータグループはNTTの完全子会社となり、上場企業としての歩みを終えている。