筆者の見解
危機が迫った世代交代という賭け
この再編の眼目は、単なる人員削減にはなかった。過剰生産という目先の危機に大ナタをふるう一方で、同じ時期に32歳の後継者への世代交代を重ねた点に、この判断の性格が表れている。番頭格の取締役が一斉に退き、先代が信頼を託した若い社長のもとで痛みの伴う整理が整然と進んだ——創業家の代替わりと構造改革が同時に走ったことで、責任の所在がはっきりし、社内の動揺が抑えられたと推察される。危機のさなかに経営を若返らせる賭けが、結果として第一幕を成立させた。
もっとも、円高への対処が一段落しても、トミー工業が抱えた本当の弱みは製造の側ではなく商品の側にあった。工場を安定して回すために定番を長く売る流儀は、素早い新商品の投入という点ではむしろ制約になりうる。バンダイやタカラが玩具の外へ踏み出していく時代に、定番の強さと開発の速さをどう両立させるか。この問いは、後年のタカラとの統合やキャラクター事業の拡大にまで尾を引くことになる。第2幕の再編は、その長い問いの入口に立った判断であったといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月