この転換は、多角化のリスクを断つという意味では筋が通っていたとみられる。穐田体制の広げた結婚情報や海外レシピの事業は、料理という本業との距離が遠く、統合の負担も小さくなかった。それらを売り払い、食という一つの領域へ資源を集中した判断は、創業者の一貫した主張とも重なっていた。ただ、集中の先で選んだ動画・生鮮EC・スマートキッチンは、いずれも先行投資が重く回収に時間を要する事業で、本業が細るなかで支え続ける原資は乏しかったと推察される。
結果として、集中化は失った成長を取り戻す道ではなく、残った本業を守る守勢の入り口になった側面がうかがえる。動画で先行したクラシルなどが規模でクックパッドを追い抜き、賭けた新事業が主力事業へ育つ前に会社は人員半減の縮小へ向かった。領域を狭める判断そのものより、狭めた先で何に賭け、どこまで投資を続けるかの見極めが、その後の明暗を分けたと思われる。集中と投資のあいだの均衡をどう取るかは、いまなお同社に残された課題といえる。