クックパッド 穐田誉輝氏の解任と岩田林平氏への継承 創業者に戻った経営権と、取締役9名への入れ替え

更新:

時期 2016年3月
当時の社長 佐野陽光
論点 経営権とコーポレートガバナンス
何をなぜ決めたか
概要

2016年3月24日の第12回定時株主総会で、取締役は7名から9名に改まり、うち5名が新任となった。総会後、2012年5月から代表執行役を務めてきた穐田誉輝氏は代表を解かれ、就任からひと月の岩田林平氏が代表執行役に就任した。

創業者の佐野陽光氏は46,582,800株を持ち、発行済株式総数に対する割合は43.57%、議決権では1,068,874個のうち465,828個を占める。取締役の過半と3委員会の委員長は、この日を境に入れ替わった。

背景

クックパッドは2007年7月から指名委員会等設置会社で、業務執行を執行役が担い、社外取締役が過半を占める取締役会と指名・報酬・監査の3委員会が監督する。2012年5月に佐野陽光氏が代表執行役を退き、穐田誉輝氏が後を継いだ。

以後、事業は料理レシピの外へ広がる。2014年12月期にEC事業が、2015年12月期にはみんなのウェディングの連結子会社化で結婚関連が加わり、売上収益は8か月決算の6,213百万円から13,338百万円へ伸びた。

内容

新たに取締役となったのは岩田林平氏・北川徹氏・柳澤大輔氏・出口恭子氏・藤井宏一郎氏の5名で、退いたのは熊坂賢次氏・山田啓之氏・岩倉正和氏の3名。いずれも社外取締役だった。

指名・報酬・監査の3委員長も、柳澤大輔氏・藤井宏一郎氏・北川徹氏という新任の社外取締役に替わった。岩田林平氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーのプリンシパルから2016年2月に執行役へ迎えられ、その翌月に代表執行役となっている。

含意

事業は料理レシピへ絞り込まれた。連結従業員数は2015年12月期末の519名から2016年12月期末に321名へ減り、みんなのウェディングは2016年12月22日の株主間契約の解約で持分法適用関連会社に戻った。穐田誉輝氏の持株比率も14.76%から2.39%へ下がっている。

株価は第20期に最高2,616円・最低942円と年内で6割超下げ、第22期には最低287円まで沈んだ。営業利益は2015年12月期の6,398百万円を頂点に、2018年12月期には1,665百万円まで減少している。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

創業者の持株が決めた監督機構の顔ぶれ

この交代でほんとうに動いたのは、執行の側ではなく監督の側だっただろう。クックパッドは2007年7月から監督と執行を分け、社外取締役が過半を占める取締役会と三つの委員会が執行役を見張る器を備えていた。ところが2016年3月の総会を境に、指名・報酬・監査の委員長がそろって新任の社外取締役に替わっている。監督する側の顔ぶれごと入れ替わったのだから、器は残っても中身は別物になった。発行済株式総数の43.57%という持株は、執行役の首だけでなく、その首を判定する機構の構成までを決める力を持っていた。

もっとも、取り戻した経営権が何をもたらしたかは別の問いである。連結従業員数は2015年12月期末の519名から翌期末に321名へ減り、みんなのウェディングは持分法適用関連会社へ戻った。売上収益は2016年12月期の16,846百万円を頂点にその後は下がり続け、2021年12月期には営業赤字に沈んでいる。料理レシピへの集中は、多角化が積み上げた売上をいったん手放す選択でもあった。絞り込んだ先に何を積み直すのか——交代から5期を経てもなお、その答えは数字の上に現れていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経営権の交代と経緯

経営権の交代と経緯

科目 概要 備考
対象の総会 2016年3月24日 第12回定時株主総会 第19期の連結財務諸表も同じ日に代表執行役が承認している
筆頭株主の所有株式数 46,582,800株・43.57% 2015年12月31日現在の佐野陽光氏。議決権では1,068,874個のうち465,828個
取締役の員数 7名から9名へ 社外取締役は5名から6名へ。改選の前後とも社外が過半を占める
新任の取締役 岩田林平氏ほか4名 北川徹氏・柳澤大輔氏・出口恭子氏・藤井宏一郎氏。いずれも2016年3月就任
退いた取締役 熊坂賢次氏・山田啓之氏・岩倉正和氏 3名とも社外取締役。熊坂賢次氏は指名委員長、山田啓之氏は監査委員長だった
代表執行役の交代 穐田誉輝氏から岩田林平氏へ 穐田氏は2012年5月から代表執行役。交代後は取締役兼執行役として残った
新代表執行役の前歴 マッキンゼー・アンド・カンパニー 2005年9月入社、2013年4月にプリンシパル。2016年2月に当社執行役へ
3委員会の委員長 全員が新任の社外取締役へ 指名は柳澤大輔氏、報酬は藤井宏一郎氏、監査は北川徹氏に替わった
取締役の任期 2016年3月24日の総会から1年 選任の翌年に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時まで
前代表執行役の退任 2017年3月23日 定時株主総会の終結をもって任期満了により取締役を退任した
前代表執行役の持株比率 14.76%から2.39%へ 2015年12月末15,781,200株、2016年12月末2,566,200株
みんなのウェディングの扱い 連結子会社から持分法適用関連会社へ 2016年12月22日の取締役会で穐田誉輝氏との株主間契約を解約した

出所:クックパッド 有価証券報告書 第18期(2014年12月期)・第19期(2015年12月期)・第20期(2016年12月期)【役員の状況】【大株主の状況】【経営上の重要な契約等】

取締役会の構成と連結従業員数の推移

クックパッド:取締役会の構成と連結従業員数の推移

(名) 取締役うち社外取締役連結従業員数 備考
2012年4月期 74102 連結決算の前で、従業員数は提出会社のもの
2013年4月期 74125 連結決算の前で、従業員数は提出会社のもの
2014年4月期 75207 初の連結決算。単一セグメント
2014年12月期 75245 決算期変更による8か月決算。EC事業が加わる
2015年12月期 96519 取締役は2016年3月24日の総会で選任された9名。従業員は274名増
2016年12月期 75321 交代後の初年度。関連会社化と事業の整理・売却で198名減
2017年12月期 53389
2018年12月期 53476
2019年12月期 53502
2020年12月期 53547
2021年12月期 64487
連結従業員数
連結従業員数(名)

出所:クックパッド 有価証券報告書 第15〜25期【役員の状況】【従業員の状況】

業績の推移

クックパッド:業績の推移

(百万円) 売上高営業利益当期利益 備考
2012年4月期 3,9101,9291,110 単体・日本基準。当期利益は当期純利益
2013年4月期 4,9822,6451,617 単体・日本基準。当期利益は当期純利益
2014年4月期 6,5723,1321,869 連結・日本基準。当期利益は当期純利益
2014年12月期 6,2132,8391,797 8か月決算。国際会計基準へ移行し、以降は親会社帰属の当期利益
2015年12月期 13,3386,3984,091 みんなのウェディングの連結子会社化で売上収益が倍増した
2016年12月期 16,8465,013933 総会で取締役と代表執行役が入れ替わった期
2017年12月期 13,4085,3913,491
2018年12月期 11,8761,665407
2019年12月期 11,753307△969
2020年12月期 11,096227479
2021年12月期 10,004△2,633△2,380
売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:クックパッド 有価証券報告書 第16〜25期【主要な経営指標等の推移】(連結損益計算書・連結損益計算書及び連結包括利益計算書)

事業年度別の最高・最低株価

クックパッド:事業年度別の最高・最低株価

(円) 最高株価最低株価 備考
2012年4月期 2,4241,460 2013年5月と2015年7月の株式分割の前の基準
2013年4月期 4,0203,505 2013年5月1日の株式分割(1株→2株)の権利落後
2014年4月期 3,8801,991 2015年7月の株式分割の前の基準
2014年12月期 4,2701,880 8か月決算。2015年7月の株式分割の前の基準
2015年12月期 2,8801,971 2015年7月1日の株式分割(1株→3株)の権利落後
2016年12月期 2,616942 総会のあった期。年内の高値から安値まで6割超下げた
2017年12月期 1,155605
2018年12月期 681287

出所:クックパッド 有価証券報告書 第20期・第21期・第22期【株価の推移】(最近5年間の事業年度別最高・最低株価)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • クックパッド 第12回定時株主総会招集ご通知(2016年2月)
  • クックパッド 有価証券報告書「第18期(2014年12月期)【役員の状況】」
  • クックパッド 有価証券報告書「第19期(2015年12月期)【役員の状況】【大株主の状況】【議決権の状況】」
  • クックパッド 有価証券報告書「第20期(2016年12月期)【経営上の重要な契約等】【従業員の状況】【株価の推移】」
  • クックパッド 有価証券報告書「第22期(2018年12月期)【株価の推移】」

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