クックパッド 縮小均衡への転換 動画レシピの台頭による会員離れと、身の丈に合わせた事業の畳み込み

更新:

時期 2019年12月
当時の社長 岩田林平
論点 動画競争と縮小均衡
何をなぜ決めたか
概要

2016年前後に台頭したスマホの短尺動画レシピにテキスト投稿型のクックパッドが出遅れ、有料会員と売上が縮むなか、希望退職と6事業廃止で費用を削り、規模を追わず縮小均衡へ転じた経営判断。2023年10月には創業者・佐野陽光氏が11年ぶりに社長へ復帰し、2024年に黒字へ戻したが売上は58億円まで縮んだ。

背景

delyの"クラシル"やエブリーの"DELISH KITCHEN"が動画の手軽さで利用者を集め、クラシルは2017年にレシピ動画数で世界一となった。文字と写真のクックパッドは目新しさを欠き、国内月間利用者は2年で約1,000万人減り、有料会員も2018年末の約205万人をピークに減少へ転じた。

内容

2023年2月に上限40名の希望退職と、食育"おりょうりえほん"や釣り"ツリバカメラ"など6事業の廃止を発表。海外でも人員を削り、連結従業員数は2020年末の547名から2024年末の117名へ縮んだ。同年10月には創業者・佐野陽光氏が11年ぶりに代表執行役CEOへ復帰した。

含意

売上収益は2016年の約168億円をピークに減り続け、2019年に上場来初の最終赤字、2021年から3期連続の営業赤字に沈んだが、費用圧縮で2024年に黒字転換した。ただし売上は58億円まで縮み、動画で先行したdelyは2024年に上場、クラシルの売上はクックパッドを規模で上回った。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

動画への出遅れが招いた縮小均衡

この判断の核心は、規模の追求をやめ、料理という本業に合わせて費用を絞ることで、赤字の連鎖を止めた点にある。クックパッドは投稿型レシピの草分けとして国内で圧倒的な利用者を抱えていたが、スマートフォンの短尺動画という新しい形式への対応が遅れ、無料の動画に利用者の時間と関心を奪われた。長年かけて蓄積した投稿レシピという資産は、形式の転換の前で競争力へ結びつきにくくなった。有料会員は2018年をピークに細り、2019年の最終赤字から2021年以降の3期連続の営業赤字へと沈んだ。希望退職と6事業の廃止で従業員を半分以下に減らし、収益に費用を合わせにいく縮小均衡が、黒字転換の前提を整えた。

もっとも、黒字への転換は事業の再拡大を意味しない。2024年に黒字へ戻した時点で、売上は58億円までしぼみ、有料会員の2023年末から2024年末への減少も続いていた。一方、動画で先行したdelyは2024年12月に東証グロースへ上場し、時価総額は約480億円に達した。設立から数年の後発が、先発のクックパッドを規模で上回るところまで育っていた。2026年初めにはクラシルの売上がクックパッドの3倍を超えたとされ、レシピ市場での規模は逆転していた。新しい技術の潮流への出遅れが競争上の立場を反転させ、縮小均衡は、失った規模を取り戻す道ではなく、残った本業を守るための選択として働いた。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
同じ問いに直面した会社

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社長交代と後継指名2019年曙ブレーキ工業560億円の債権放棄を前提とした国内外の生産拠点の縮小財務再建と生産拠点の再編
2023年住友ファーマ総額1,809億円の減損計上と、北米人員半減・パイプライン圧縮による構造改革主力品の独占販売終了後の収益消失と借入金への対応
1999年NEC過去最大の連結赤字の公表と、金子尚志社長の退任経営体制と多角化の重み
1994年三菱電機長く3位にとどまった地位からの脱却を掲げた改革と、半導体投資の誤算経営体制と構造改革
2021年DeNA10年ぶりの社長交代と、費用構造の筋肉質化による収益基盤の立て直し経営体制と固定費
固定費の削減2009年ソニーCEOと社長を一人へ集め、エレクトロニクスとゲームを一体で動かす体制への転換経営体制の一本化と事業構造の改革
1931年富士電機全従業員の16%に及ぶ人員削減と、これに伴う社長の退任創業期の赤字体質と経営再建
1998年ファミリーマート西友による1,350億円での保有株譲渡と、親会社の交代筆頭株主の交代とグループ帰属
1997年三菱石油山田菊男会長の引責と泉谷良彦社長の続投という責任の分け方不祥事の引責人事と経営体制
1997年松坂屋総会屋への利益供与事件を受けた経営陣の退任と、不採算店舗の閉鎖・人員削減経営体制の立て直しと不採算事業の整理
参考文献
出典・参考
  • クックパッド 各期決算説明資料・有価証券報告書

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