前澤友作氏の社長退任と澤田宏太郎氏への継承(2019年・ZOZOの決断)

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論点 創業者の後継をどう選ぶか
ZOZO:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
創業者・前澤友作氏の辞任と、社長を選ぶ手続きの新設

何をなぜ決めたか:創業者・前澤友作氏の辞任と、社長を選ぶ手続きの新設

概要

2019年9月、創業者で代表取締役社長の前澤友作氏が辞任し、2013年6月から取締役を務めていた澤田宏太郎氏が代表取締役社長兼CEOに就任した。代表取締役の異動を届け出た臨時報告書は同年9月12日付で、Zホールディングスとの資本業務提携契約を締結した日と重なる。

交代は人の入れ替えにとどまらなかった。2020年1月28日、親会社から川邉健太郎氏が取締役に加わったのと同じ日に指名・報酬諮問委員会が設置され、社長・CEOの選解任と後継者計画が取締役会への意見表明の対象に置かれた。

背景

前澤友作氏は1998年5月の設立時から代表取締役を務め、2017年4月に代表取締役社長となった。経営方針や事業戦略の決定など事業活動全般で極めて重要な役割を果たす一方、過度に同氏へ依存しないための経営幹部の拡充・育成と権限委譲が、第21期まで事業等のリスクに「特定の経営者への依存」として掲げられていた。2019年3月期は営業利益25,654百万円と前期から21.5%減り、上場来初の減益となる。このときの取締役会は取締役6名、うち社外取締役2名である。

内容

指名・報酬諮問委員会は、全ての独立社外取締役と親会社からの派遣取締役1名、業務執行取締役1名の計5名で構成し、委員長は社外取締役の小野光治氏が務める。付議事項は取締役の選解任に関する株主総会議案、社長・CEO・代表取締役の選解任、社長・CEOの後継者計画、そして業務執行取締役の報酬・賞与等。2020年2月と3月に計4回開かれ、各回とも全委員が出席して、報酬の方針と基本設計、業績連動報酬の設計について取締役会への答申案を決めた。取締役の任期は2019年6月25日の定時株主総会終結の時から2年である。

含意

取締役会は2019年3月期の6名(うち社外2名)から、2025年3月期には11名(うち非業務執行8名)へ広がり、「特定の経営者への依存」は第22期から記載が消えた。商品取扱高は交代期の345,085百万円から2025年3月期の614,361百万円へ、営業利益は27,888百万円から64,756百万円へ伸びている。前澤友作氏は54,554,900株・17.87%を持つ第2位株主として残ったが、退任後の第22期に役員及び主要株主等との取引はない。

いつ何が起きたか 5件
当時の取締役 6名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

考察:創業者の属人性を規程に置き換える
考察

考察:創業者の属人性を規程に置き換える

この交代の実質は、社長が入れ替わったことよりも、社長を選ぶ手続きが会社の内側に据えられたことにあったと思われる。前澤友作氏が果たしていた役割は事業活動全般に及び、それを補う手立ては経営幹部の拡充と権限委譲という運用上の努力にとどまっていた。2020年1月28日に設けられた委員会は、社長・CEOの選解任と後継者計画を付議事項として文書に書き込んでいる。人望や実績に頼っていた創業者の属人性は、次を選ぶ規程へ置き換えられたのだと思われる。

もっとも、この組み替えは会社が自ら望んだというより、資本業務提携に伴う経営体制の変更が引き金となった面が強い。委員会の5名には親会社からの派遣取締役が入り、非業務執行の取締役は2名から8名へ増えた。監督の層が厚くなったぶん、経営の速度をどこで確保するかという問いは残る。商品取扱高が614,361百万円まで伸びた事実は澤田宏太郎社長の実務を裏づけるが、この手続きが本当に働いたかどうかは、次の社長を委員会が選ぶ日まで判定できないだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

ZOZO:商品取扱高・売上高・営業利益の推移

商品取扱高(百万円)営業利益率(%)
ZOZO:商品取扱高・売上高・営業利益の推移
(百万円) 商品取扱高売上高営業利益 備考
2015年3月期 129,05941,18215,084
2016年3月期 159,50054,42217,756
2017年3月期 212,09076,39326,284
2018年3月期 270,54398,43232,669
2019年3月期 323,129118,40525,654 営業利益は前期比21.5%減。上場来初の減益
2020年3月期 345,085125,51727,888 商品取扱高は前期比6.6%増。期初計画の成長率には届かなかった
2021年3月期 419,438147,40244,144 その他商品取扱高を除いた商品取扱高は407,774
2022年3月期 508,876166,19949,656 その他商品取扱高を除いた商品取扱高は462,175
2023年3月期 544,317183,42356,421 その他商品取扱高を除いた商品取扱高は501,108
2024年3月期 574,373197,01660,079 その他商品取扱高を除いた商品取扱高は536,907
2025年3月期 614,361213,13164,756 その他商品取扱高を除いた商品取扱高は574,666
出所:ZOZO 有価証券報告書 第17〜27期【経営成績等の状況の概要】
出所:ZOZO 有価証券報告書 第17〜27期【経営成績等の状況の概要】

ZOZO:取締役会の構成と従業員数

ZOZO:取締役会の構成と従業員数
(人) 取締役うち社外取締役うち非業務執行取締役従業員(連結) 備考
2015年3月期 81−642
2016年3月期 81−783
2017年3月期 91−800
2018年3月期 91−904
2019年3月期 62−1,094 前澤友作社長のもと取締役6名。事業等のリスクに「特定の経営者への依存」
2020年3月期 6−21,158 2019年9月に社長交代。第22期から内数は社外取締役を含む非業務執行取締役の人数
2021年3月期 8−51,297
2022年3月期 8−51,435
2023年3月期 8−51,555
2024年3月期 11−81,693 第26期は監査等委員会設置会社。11名のうち3名が監査等委員である社外取締役
2025年3月期 11−81,761
出所:ZOZO 有価証券報告書 第17〜27期【コーポレート・ガバナンスの状況等】【従業員の状況】
出所:ZOZO 有価証券報告書 第17〜27期【コーポレート・ガバナンスの状況等】【従業員の状況】

交代の経緯と対応

交代の経緯と対応
科目 概要 備考
代表取締役の異動の届出 2019年9月12日 内閣府令第19条第2項第9号(代表取締役の異動)に基づく臨時報告書を関東財務局長へ提出
辞任した代表取締役 前澤友作氏 1998年5月の設立時から代表取締役、2017年4月から代表取締役社長。2019年9月に辞任
就任した代表取締役 澤田宏太郎氏 2013年6月から当社取締役。2019年9月に代表取締役兼CEO。役職名は代表取締役社長兼CEO
取締役の任期 2021年3月期に係る定時株主総会の終結の時まで 2019年6月25日開催の定時株主総会終結の時から。監査役の任期は4年
親会社からの取締役 川邉健太郎氏 2020年1月28日開催の臨時株主総会で選任。非業務執行取締役
指名・報酬諮問委員会の設置決議 2020年1月28日 取締役会で規程を制定し、経営陣の指名および報酬決定の審議・諮問機関として設置
設置に至った理由 コーポレートガバナンス体制の強化 前代表取締役の辞任と資本業務提携契約に関連した経営体制の変更に伴い喫緊の課題となった
委員会の構成 5名(委員長は社外取締役) 全ての独立社外取締役、親会社からの派遣取締役1名、業務執行取締役1名。委員長は小野光治氏
委員会の付議事項 社長・CEO・代表取締役の選解任 取締役の選解任に関する株主総会議案、社長・CEOの後継者計画、業務執行取締役の報酬等
委員会の活動状況 2020年2月・3月に計4回開催 各委員全員が出席。報酬の方針・基本設計・業績連動報酬の設計を審議し答申案を決定
「特定の経営者への依存」の記載 第22期に消滅 第21期の事業等のリスクに掲げられていた項目。第22期以降は記載がない
辞任した創業者の所有株式 54,554,900株(17.87%) 2020年3月31日現在の第2位株主。2019年3月31日現在は109,726,600株・35.94%
退任後の関連当事者取引 該当なし 第22期の役員及び主要株主等との取引に記載なし。第21期は自己株式の取得24,412百万円
出所:ZOZO 有価証券報告書 第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【大株主の状況】【関連当事者情報】
出所:ZOZO 有価証券報告書 第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【大株主の状況】【関連当事者情報】
当時の取締役 6名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ZOZO 臨時報告書「代表取締役の異動(企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第9号)」
  • ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)【役員の状況】【大株主の状況】【関連当事者情報】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第21期(2019年3月期)【事業等のリスク】【役員の状況】」

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