ZOZO ZOZOSUITへの投資撤退 採寸データを武器に自社ブランドへ踏み出し、海外事業からの撤退と特別損失で1年余りで畳んだ判断
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
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2017年11月に採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」の無料配布の予約受付を始め、2018年1月31日にプライベートブランド「ZOZO」の販売を開始した。計測した体型データに基づいて一人ひとりの体型に合う商品を売る事業で、当初の品目はTシャツとデニムの2種、翌期には10〜20アイテムへ広げ、2018年7月からは世界72か国での販売を掲げた。
だが1年余りで計画は畳まれた。2019年2月にZOZO Germany GmbHの会社清算を取締役会で決議し、ZOZO Apparel USA, Inc.とあわせ海外事業から撤退。2019年3月期は減損損失1,407百万円・たな卸資産評価損876百万円・事業整理損失822百万円を含む特別損失3,394百万円を計上し、営業利益は25,654百万円と前期比21.5%減の上場後初の減益となった。
- 背景
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出店ブランドの商品を預かって売る受託販売モールとして高成長を続け、2018年3月期の商品取扱高は270,543百万円、営業利益率は対商品取扱高12.1%に達していた。他社に依存しない自社商品と、ネット通販の弱点である「サイズが合わない」問題の解決を軸に、次の主力事業を探していた。
掲げた課題の筆頭がプライベートブランドの国内外における販売の垂直立ち上げで、目指したのはベーシックアイテムであり、安く、サイズが合っており、すぐに届くこと。エンジニアを200名程度から数年後に1,000名態勢とし、ファッションEC事業者から「ファッションテクノロジーカンパニー」へ移ることも同じ課題に並べられた。
- 内容
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ZOZOSUITは無料で配り、その計測データを入り口にPBを売る組み立てだった。費用は広告宣伝費に立ち、2019年3月期は6,065百万円と前期の1,552百万円から4倍に膨らんだ。自社で在庫を持つため棚卸資産も積み上がり、2019年3月末の商品は4,533百万円、原材料は1,352百万円と、前期末の2,194百万円・195百万円から大きく増えた。
それでもPB事業の商品取扱高は2,763百万円にとどまり、全社の商品取扱高に占める割合は0.9%。2018年9月7日には蓄積した体型データによる体型推測アルゴリズムを導入し、ZOZOSUITでの計測なしにカジュアルラインを買える手法へ切り替えたが、規模は伸びなかった。
- 含意
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失った額は2期にまたがる。2018年3月期にニュージーランド・オークランドの製造設備で減損損失1,486百万円と部材のたな卸資産評価損263百万円、2019年3月期に減損損失1,407百万円・たな卸資産評価損876百万円・事業整理損失822百万円。PB事業の商品取扱高は2020年3月期に1,255百万円、2021年3月期に188百万円まで縮み、その後は事業区分から消えた。
残ったのはデータである。ZOZOSUITで得た100万以上の体型データを出店ブランドに開き、ブランドの商品を多サイズ展開するMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業として2019年9月6日に受注予約を開始。商品取扱高は初年度752百万円から翌期1,260百万円へ伸び、自らつくる道ではなく預かって売る本業へ技術を戻す形で残った。
いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
配ったのは服ではなく、体型データを取る装置だった
この判断は、アパレルへの参入というより、体型データを取るための装置を全国にばらまく投資だっただろう。無料配布の費用は広告宣伝費に立ち、2019年3月期は6,065百万円と前期の4倍に膨らんだ。それでいてPB事業の商品取扱高は2,763百万円、全社の0.9%にすぎない。売る商品より計測する体を集めることが先に来ていた構図で、装置と在庫を自前で抱えた瞬間に、受託販売モデルの身軽さが失われたのだと思われる。
もっとも、失敗の後始末として残ったものは小さくない。撤退で消えたのは海外拠点と製造設備であって、100万以上の体型データはMSP事業として出店ブランドに開かれ、初年度752百万円から翌期1,260百万円へ伸びた。自らつくり手に回る道は畳まれたが、預かって売る本業を厚くする資産としては生き延びている。1年余りで畳む速さも含め、創業社長の求心力で振り切った投資が、業態の境界を試した末に元の場所へ着地した判断であったといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
参入と撤退の条件
参入と撤退の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 立ち上げたブランド | プライベートブランド「ZOZO」 | ZOZOSUITで計測した体型データに基づき、体型に合った商品を販売する事業 |
| 配布と販売の開始 | 2018年1月31日 | 2017年11月にZOZOSUITの無料配布の予約受付を開始。当初の品目はTシャツとデニム |
| 掲げた品揃え | 翌期に10〜20アイテム | 2018年7月にビジネススーツなどフォーマルラインを追加、第4四半期に20アイテム |
| 掲げた海外展開 | 2018年7月より世界72か国 | 拠点はZOZO Germany GmbHとZOZO Apparel USA, Inc.の2社 |
| 広告宣伝費 | 6,065百万円 | 2019年3月期。前期は1,552百万円。ZOZOSUITの無料配布に伴う増加。他の広告費を含む |
| 積み上がった在庫 | 商品4,533百万円 | 2019年3月末。ほかに原材料1,352百万円。前期末は商品2,194・原材料195百万円 |
| PB事業の商品取扱高 | 2,763百万円 | 2019年3月期。全社の商品取扱高に占める割合は0.9%。前期は買取ショップの内数 |
| 海外事業の撤退 | 2019年2月 | ZOZO Germany GmbHの会社清算を取締役会で決議し、清算手続きに入った |
| 前期に計上した減損損失 | 1,486百万円 | 2018年3月期。オークランドの製造設備。仕様変更で今後の利用が見込めなくなった |
| 減損損失 | 1,407百万円 | 2019年3月期の通期。オークランド1,308・千葉市の商標権92・ロサンゼルス2・ベルリン4 |
| たな卸資産評価損 | 876百万円 | 2019年3月期の通期。第4四半期分は海外撤退691・旧型ZOZOSUITの機材と部材184 |
| 事業整理損失 | 822百万円 | 2019年3月期第4四半期。PB事業の海外展開を見直した結果として計上 |
| 撤退後に残したもの | MSP(マルチサイズプラットフォーム)事業 | ZOZOSUITで得た100万以上の体型データを活用。2019年9月6日に受注予約を開始 |
出所:株式会社ZOZO(第20期は株式会社スタートトゥデイ) 有価証券報告書 第20期(2018年3月期)・第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)
商品取扱高と営業利益率の推移
ZOZO:商品取扱高と営業利益率の推移
| (百万円) | 商品取扱高 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 114,674 | 12,388 | |
| 2015年3月期 | 129,059 | 15,084 | |
| 2016年3月期 | 159,500 | 17,756 | |
| 2017年3月期 | 212,090 | 26,284 | |
| 2018年3月期 | 270,543 | 32,669 | PB「ZOZO」の販売を1月31日に開始。営業利益率は対商品取扱高12.1% |
| 2019年3月期 | 323,129 | 25,654 | 営業利益率は対商品取扱高7.9%。商品取扱高は当期より値引額控除前の額で表示 |
| 2020年3月期 | 345,085 | 27,888 | 営業利益率は対商品取扱高8.1% |
| 2021年3月期 | 419,438 | 44,144 | |
| 2022年3月期 | 508,876 | 49,656 | |
| 2023年3月期 | 544,317 | 56,421 | |
| 2024年3月期 | 574,373 | 60,079 |
出所:株式会社ZOZO(第20期以前は株式会社スタートトゥデイ) 有価証券報告書 第16〜26期(経営成績の状況)
PB事業の規模と、特別損失に計上した損失
ZOZO:PB事業の規模と、特別損失に計上した損失
| (百万円) | PB事業の商品取扱高 | 減損損失 | たな卸資産評価損 | 事業整理損失 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | − | − | − | 15 | PB事業の開始前 |
| 2015年3月期 | − | 471 | − | − | PB事業の開始前 |
| 2017年3月期 | − | 1,483 | − | − | PB事業の開始前。減損はアラタナののれんの未償却残高の全額 |
| 2018年3月期 | − | 1,486 | 263 | − | PBを開始。取扱高は買取ショップの内数。減損はオークランドの製造設備 |
| 2019年3月期 | 2,763 | 1,407 | 876 | 822 | 海外事業から撤退。特別損失は合計3,394百万円 |
| 2020年3月期 | 1,255 | − | − | − | PBは前期比54.6%減。MSP事業の商品取扱高は752百万円 |
| 2021年3月期 | 188 | − | − | − | PBは前期比85.0%減。MSP事業の商品取扱高は1,260百万円 |
| 2022年3月期 | − | 81 | − | 218 | 事業区分からPBが消える。損失は中国のZOZOTOWN事業からの撤退 |
| 2023年3月期 | − | 27 | − | − | 減損はyutoriが譲り受けた事業ののれん |
出所:株式会社ZOZO(第20期以前は株式会社スタートトゥデイ) 有価証券報告書 第16〜26期(連結損益計算書・減損損失・事業別の商品取扱高)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- 株式会社ZOZO ニュースリリース 2017年11月22日「採寸用ボディースーツ『ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)』を無料配布 本日より予約受付開始」
- 株式会社ZOZO ニュースリリース 2018年4月27日「スタートトゥデイ、世界展開を見据えた初の中期経営計画を発表。今後10年以内に時価総額5兆円を目指す」
- 株式会社ZOZO ニュースリリース 2018年5月1日「スタートトゥデイの『ZOZOSUIT』、予約数100万件を突破。プライベートブランド『ZOZO』の初年度売上高200億円を目指す」
- 株式会社ZOZO ニュースリリース 2018年7月3日「プライベートブランド『ZOZO(ゾゾ)』、カジュアル商品のラインナップを拡充」
- 株式会社ZOZO ニュースリリース 2019年4月25日「ZOZOTOWN、有料会員制の割引サービス『ZOZOARIGATOメンバーシップ』の終了を決定」
- 株式会社スタートトゥデイ 有価証券報告書「第20期(2018年3月期)」
- 株式会社ZOZO 有価証券報告書「第21期(2019年3月期)」
- 株式会社ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)」
- 株式会社ZOZO 決算説明会資料「2019年3月期 決算説明会資料」