ZOZO ZホールディングスのTOB受け入れ 創業者による保有株の半分の売却と、独立を諦めての傘下入り

更新:

時期 2019年9月
当時の社長 前澤友作
論点 経営権の移転と創業者退任
何をなぜ決めたか
概要

2019年9月12日、Zホールディングス㈱との間で資本業務提携契約を締結し、同社による自社株式の公開買付けを受け入れた。買付けは同年9月30日から11月13日まで実施され、Zホールディングスは152,952,900株を11月20日付けで取得。発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する50.10%を握る親会社となり、ZOZOはその連結子会社となった。

創業から筆頭株主として経営権を掌握してきた前澤友作氏は、同年9月に代表取締役社長兼CEOを澤田宏太郎氏へ譲り、保有していた109,726,600株のうち半分を買付けに差し出した。

背景

前澤友作氏は2016年3月期に43.16%、2019年3月期にも35.94%を握る筆頭株主だった。株主構成は個人その他が43.72%、外国法人等が41.76%を占め、事業会社の持分はわずか0.32%にとどまる。創業者個人と海外の機関投資家だけで株式のほとんどが埋まる形である。業績は2019年3月期に経常利益が前期の32,740百万円から25,717百万円へ落ち、増収のまま利益が減る形に転じていた。創業者の持株の出口と、成長の踊り場が同時に訪れていた。

内容

締結した資本業務提携契約は、少数株主の利益に配慮しつつ両社の企業価値を向上させることの実現に向け、安定的な資本提携関係と、それを基礎とした強固な業務提携関係を築くことを目的とする。業務の中身は、Zホールディングスのメディアからのユーザーの送客と、同社が運営する「PayPayモール」への出店で、両社のファッションEC事業の拡大・進化に向けたものと位置づけた。

取得後の株主構成は一変した。その他の法人が0.32%から49.28%へ跳ね上がる一方、個人その他は43.72%から23.86%へ、外国法人等は41.76%から17.86%へ低下した。前澤友作氏の所有株式数は109,726,600株から54,554,900株へ減り、比率は17.87%となった。

含意

傘下入りののち、売上高は2020年3月期の125,517百万円から2025年3月期の213,131百万円へ、経常利益は27,644百万円から64,888百万円へ伸びた。「ZOZOTOWN」の「PayPayモール」出店を軸とした連携が数字に表れた形である。一方で株式の受け皿は移り替わり、前澤友作氏の持分は2024年3月期に3.69%、2025年3月期に1.34%まで細った。上場は保ったものの、親会社が株主総会の普通決議について決定権及び拒否権を有し、特別決議についても拒否権を含む重大な影響力を持つ構造が残った。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

守るための選択が、手放す結末を導いた

この決断の芯は、経営権を掌握し続けた創業者が、その持株の出口を自力で作れなかったところにある。前澤友作氏の持株比率は2016年3月期の43.16%から2019年3月期の35.94%へ緩やかに下がってはいたが、なお3分の1を超えていた。これだけの株数を市場で捌けば需給が崩れ、抱え続ければ創業者個人に依存した資本構成が残る。増資を避けて独立を保った資本政策が、成長の果てに自らの退路を塞いだのだと思われる。公開買付けは、その塞がった退路を一度に開ける手段でもあった。

もっとも、手放したのは独立であって事業ではない。傘下入り後の売上高は125,517百万円から213,131百万円へ伸び、「PayPayモール」への出店を軸とした連携は数字に表れた。ただし普通決議の決定権と特別決議の拒否権は親会社が握り、少数株主との利益調整は会社自身がリスクとして挙げ続けている。創業者が去ったあとのZOZOは、独立した事業会社ではなく、親会社の意向のもとで成長の速度を測られる立場へ移ったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
公開買付けを受け入れた条件

公開買付けを受け入れた条件

科目 概要 備考
決議日 2019年9月12日 取締役会で資本業務提携契約の締結を決議し、同日付けで締結した
公開買付者 Zホールディングス株式会社 旧商号はヤフー株式会社
公開買付期間 2019年9月30日〜11月13日
取得された株式数 152,952,900株 2019年11月20日付けでZホールディングス㈱が取得した
取得後の議決権比率 50.10% 2020年3月31日現在。発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合
親会社の異動 2019年11月13日 ソフトバンクグループ㈱・ソフトバンク㈱も間接保有で同日付けの親会社となった
主要株主の異動 2019年11月20日 公開買付けの結果、Zホールディングス㈱が主要株主となった
前澤友作氏の所有株式数(買付前) 109,726,600株 2019年3月31日現在。発行済株式(自己株式を除く)の35.94%で筆頭株主
前澤友作氏の所有株式数(買付後) 54,554,900株 2020年3月31日現在。同17.87%。筆頭株主はZホールディングス㈱へ移った
業務提携の内容 メディアからの送客とPayPayモールへの出店 両社のファッションEC事業の拡大・進化に向けた業務提携
代表取締役の異動 2019年9月12日 同日に代表取締役の異動に係る臨時報告書を提出。澤田宏太郎氏が就任した

出所:ZOZO 有価証券報告書 第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】【大株主の状況】【役員の状況】

株主構成の推移(区分別の所有株式数の割合)

ZOZO:株主構成の推移(区分別の所有株式数の割合)

(%) その他の法人個人その他外国法人等(法人)金融機関 備考
2015年3月期 0.2753.4336.29.27
2016年3月期 0.2950.2836.0612.66
2017年3月期 0.2644.0841.6611.45
2018年3月期 0.2842.6241.6512.66
2019年3月期 0.3243.7241.7613.36 前澤友作氏は109,726,600株・35.94%を持つ筆頭株主
2020年3月期 49.2823.8617.868.51 公開買付けでZホールディングス㈱が50.10%を取得。その他の法人が49.28%へ跳ねた
2021年3月期 49.2217.7323.398.29
2022年3月期 49.2216.4922.2410.04
2023年3月期 49.213.4825.810.2
2024年3月期 51.016.5929.9411.27 前澤友作氏の持株比率は3.69%まで下がった
2025年3月期 50.993.9623.0119.95 前澤友作氏の持株比率は1.34%。金融機関が19.95%へ上がった
2020年3月期の大株主(発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合)
  • Zホールディングス株式会社 50%
  • 前澤友作 18%
  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3%
  • 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 2%
  • BNYM AS AGT/CLTS 10 PERCENT 1%
  • その他 26%

出所:ZOZO 有価証券報告書 第17〜27期【所有者別状況】 / ZOZO 有価証券報告書 第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)【大株主の状況】

業績の推移

ZOZO:業績の推移

(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2015年3月期 41,18215,1398,999
2016年3月期 54,42217,88311,988
2017年3月期 76,39326,44217,035
2018年3月期 98,43232,74020,156
2019年3月期 118,40525,71715,985 増収のまま経常利益が前期比で7,023減った
2020年3月期 125,51727,64418,804 期中の2019年11月にZホールディングス㈱の連結子会社となった
2021年3月期 147,40244,38630,932
2022年3月期 166,19949,65534,492
2023年3月期 183,42356,71639,526
2024年3月期 197,01659,76444,341
2025年3月期 213,13164,88845,346
売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:ZOZO 有価証券報告書 第21期(2019年3月期)・第27期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / ZOZO 有価証券報告書 第22期(2020年3月期)(連結損益計算書・当連結会計年度の経営成績)

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参考文献
出典・参考
  • ZOZO 適時開示「新社長就任のお知らせ」
  • ZOZO 臨時報告書「親会社の異動及び主要株主の異動に関する臨時報告書」
  • ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)【関係会社の状況】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第21期(2019年3月期)・第22期(2020年3月期)【大株主の状況】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第17〜27期【所有者別状況】【主要な経営指標等の推移】」
  • ZOZO 有価証券報告書「第22期(2020年3月期)【事業等のリスク】」

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