ファナック 筑波工場でロボドリル増産 短期の大口需要に生産能力を合わせ、月産2,500台を5,000台へ引き上げた設備投資

更新:

時期 2011年
当時の社長 稲葉善治
論点 短期需要への設備投資と収益の変動
何をなぜ決めたか
概要

筑波工場のロボドリル(小型マシニングセンタ)の生産能力を、2012年末までに月産5,000台へ引き上げる設備投資に踏み切った。2011年度の下期に月産2,500台を達成したうえでの倍増計画である。

2012年3月期の連結設備投資総額は457億19百万円で、前期の98億00百万円の4.7倍にあたる。翌2013年3月期も450億91百万円を投じ、筑波地区に新しいロボドリル工場を建設した。

背景

ロボマシン部門の連結売上高は、2010年3月期の483億48百万円から2011年3月期に1,205億45百万円へ149.3%増えた。ロボドリルの生産は期中を通じて過去最高の水準が続き、中国を中心としたアジア向けが高原状態で推移した。全連結売上高に対する構成比も19.1%から27.0%へ上がった。

東日本大震災による直接の被害はなく、旺盛な需要に応えるべく工場の自動化とロボット化を推し進め、FA・ロボット・ロボマシンの生産能力を大幅に増強する方針を掲げた。

内容

2012年12月、筑波地区に新ロボドリル工場を建設した。2013年3月期の建物の増加額は筑波曙杉工場建築の152億50百万円、建設仮勘定は同工場に172億71百万円。2014年3月期には機械及び装置として筑波ロボドリル製造設備87億87百万円を取得している。

筑波工場の帳簿価額は2011年3月末の167億76百万円から2014年3月末に444億21百万円へ2.6倍となった。同じ期間の従業員数は223人から219人でほぼ変わらず、人ではなく設備だけが厚くなっている。

含意

ロボマシン部門の売上高は2013年3月期に1,791億28百万円・構成比35.9%まで伸びたのち、2014年3月期は814億67百万円へ54.5%減った。下期にIT関連の設備需要が減少したためである。

2015年3月期には一部IT産業からの短期的な需要が期を通して続き、2,951億87百万円・構成比40.5%と3.6倍に跳ね上がって過去最高益を生んだ。ただし2017年3月期には939億39百万円・17.5%へ戻り、部門の売上は3年で山と谷を往復した。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

短期の需要に能力を合わせるという賭け

ロボドリルの増産は、工作機械向けNCという寡占事業の外側に、まったく性質の違う収益源を抱える選択だったと思われる。NCが乗るのは各国の設備投資の波だが、ロボドリルが取り込んだのは、ある最終製品の量産立ち上げに合わせて一時に発注され、量産が終われば消える短期の需要である。能力を積み増すほど拾える山は高くなり、同時に谷も深くなる。増産の判断は、その振れ幅ごと引き受けるという意思表示でもあった。

もっとも、2015年3月期のロボマシン部門2,951億87百万円という売上は、能力を持っていたからこそ拾えたものだ。設備は2014年3月末までに帳簿価額444億21百万円まで積み上がり、その後も取り崩されていない。谷の期にも償却の負担を抱え続ける形になったが、ファナックはこの部門を畳まず、四つ目の柱として残した。短期の需要の振れをどこまで自社の収益構造として引き受けるかという問いは、次の大口需要が現れるたびに突きつけられるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
増産投資の条件

増産投資の条件

科目 概要 備考
対象の設備 筑波工場のロボマシン部門の生産設備 茨城県筑西市。土地の面積は316,290㎡。ロボドリル(小型マシニングセンタ)を生産する
引き上げた生産能力 月産5,000台 2011年度の下期に月産2,500台を達成したうえで、2012年末までに倍へ引き上げる計画
設備投資総額(2012年3月期) 457億19百万円 連結。前期の98億00百万円の4.7倍。本社地区のロボット工場の建設を含む
設備投資総額(2013年3月期) 450億91百万円 連結。筑波工場の新ロボドリル工場の建設と、白山支店の土地購入・建屋建設を含む
新工場の建設 2012年12月・筑波地区 2013年3月期の増加額は建物152億50百万円・建設仮勘定172億71百万円(筑波曙杉工場建築)
生産設備の取得 87億87百万円 2014年3月期の機械及び装置の増加額。筑波ロボドリル製造設備
筑波工場の帳簿価額 444億21百万円(2014年3月末) 投資前の2011年3月末は167億76百万円。3期で2.6倍になった
設備の新設、除却等の計画 重要な設備の新設はない 2012年3月期・2013年3月期とも、計画としての記載は置かれていない

出所:ファナック 有価証券報告書 第42期(2011年3月期)〜第45期(2014年3月期)【設備の状況】

ロボマシン部門の売上高と設備投資額の推移

ファナック:ロボマシン部門の売上高と設備投資額の推移

(百万円) ロボマシン部門売上高連結売上高設備投資総額 備考
2007年3月期 73,404419,56015,078
2008年3月期 83,562468,39923,645
2009年3月期 57,727388,27124,493
2010年3月期 48,348253,3938,118 世界金融危機で連結売上高が前期比34.7%減。設備投資も81億18百万円まで絞った
2011年3月期 120,545446,2019,800 ロボマシン部門が149.3%増。ロボドリルの生産は期中を通じて過去最高の水準
2012年3月期 156,122538,49245,719 筑波工場のロボドリル増産投資。設備投資総額は前期の4.7倍
2013年3月期 179,128498,39545,091 筑波地区に新ロボドリル工場を建設。下期にIT関連の設備需要が減少
2014年3月期 81,467450,97613,906 ロボマシン部門が54.5%減。設備投資は139億6百万円へ縮小
2015年3月期 295,187729,76026,628 一部IT産業からの短期的な需要が期を通して続き、構成比は40.5%
2016年3月期 183,011623,418113,315 設備投資総額1,133億15百万円は本社地区の新工場などによるもの
2017年3月期 93,939536,94283,207
ロボマシン部門の売上高と連結売上高に占める構成比
ロボマシン部門売上高(百万円)ロボマシン部門売上高率(%)

出所:ファナック 有価証券報告書 第38〜48期【業績等の概要】商品部門別の状況・【設備投資等の概要】

筑波工場の設備と従業員数の推移

ファナック:筑波工場の設備と従業員数の推移

(百万円) 建物及び構築物機械装置及び運搬具帳簿価額合計従業員数 備考
2007年3月期 3,2144255,750126 土地の面積は69,548㎡。翌期に316,290㎡へ広がる
2008年3月期 5,67685014,343137
2009年3月期 7,5172,11117,009158
2010年3月期 7,1733,60918,229171
2011年3月期 6,6442,77016,776223 増産投資の前。帳簿価額は167億76百万円
2012年3月期 9,4776,05823,102212 生産能力を月産2,500台へ。機械装置及び運搬具が前期の2.2倍
2013年3月期 25,1794,77837,352211 新ロボドリル工場の建設で建物及び構築物が251億79百万円へ
2014年3月期 23,52813,00944,421219 筑波ロボドリル製造設備87億87百万円の取得で機械装置及び運搬具が最大に
2015年3月期 21,85510,64140,053236
2016年3月期 21,6238,32837,350248
2017年3月期 20,2696,84634,561256 この期からロボット部門との併用拠点になる
筑波工場の帳簿価額と従業員数
帳簿価額合計(百万円)従業員数(人)

出所:ファナック 有価証券報告書 第38〜48期【主要な設備の状況】提出会社・筑波工場

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • ファナック 有価証券報告書「第42期(2011年3月期)【設備の状況】【対処すべき課題】」
  • ファナック 有価証券報告書「第43期(2012年3月期)【設備投資等の概要】【業績等の概要】」
  • ファナック 有価証券報告書「第44期(2013年3月期)【設備投資等の概要】【有形固定資産等明細表】」
  • ファナック 有価証券報告書「第45期(2014年3月期)【有形固定資産等明細表】【業績等の概要】」
  • ファナック 有価証券報告書「第46期(2015年3月期)【業績等の概要】」

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