この判断の核心には、何が会社を動かしたのか、という問いが残る。実際、変化は父・清右衛門名誉会長の退場による経営体制の刷新から始まっており、その延長線上に還元と対話の強化を置くこともできる。外からの圧力と内側の世代交代のどちらを主因とみるかで、この"豹変"の意味は違って見えてくる。
確かなのは、潤沢な手元資金を抱える高収益企業が、その資金の置き場所を市場に問われる時代に入っていたことである。ファナックが数字で示した還元の約束は、稼ぐ力と資本の効率を切り分けて評価する視線を、日本の優良企業に向けさせる一例となった。もっとも、変動の大きい主力事業を抱える同社にとって、80%という還元の水準を長い目でどう保つかは、その後も問われ続ける論点であったのだろう。沈黙をやめた企業が、開示と還元と成長投資のあいだでどう均衡を取るのか——その問いは今日にも通じている。