東京スカイツリー建設に投資(2006年・東武鉄道の決断)

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論点 沿線価値向上のための巨額単独投資
売上高(億円)当期純利益率(%)
1,349億円を投じた、電波塔を核とする街づくりへの転換

1,349億円を投じた、電波塔を核とする街づくりへの転換

概要

地上デジタル放送用の新しい電波塔の建設地として、東武鉄道が押上・業平橋地区に保有する用地が選ばれた。2006年3月期の対処すべき課題に新タワーを核とした業平橋・押上プロジェクトが掲げられ、2008年7月にタワー本体と足元の街区開発が同時に着工した。

タワーは特定子会社の東武タワースカイツリーが建設し、商業施設とオフィス施設は東武鉄道自身が手がけた。2012年2月にタワーが竣工して引き渡しを受け、同年5月22日に東京スカイツリータウンが開業した。

背景

2002年1月に策定した中期経営計画「東武グループ再構築プラン」は、最終年度の2005年度に当期利益155億円・有利子負債1兆円・欠損金の解消という所期の目標をすべて達成した。

それでも2006年3月期末の有利子負債は965,605百万円が残り、財務体質の強化と並行してタワー建設の投資が始まる。必要資金は主として社債と金融機関からの外部借入れで調達しており、金利上昇は業績を左右する要因として挙げられていた。

内容

東京スカイツリー建設工事の投資予定金額は、2009年3月期の65,000百万円から2010年3月期に59,600百万円へ見直された。足元の商業施設「東京ソラマチ」とオフィス施設「東京スカイツリーイーストタワー」を含む業平橋押上地区街区開発建設工事には75,358百万円を投じた。

資金の調達方法はいずれも自己資金と借入金である。2008年10月には自立式電波塔として世界一を目指し、高さを634メートルに決めた。

含意

2011年3月期の設備投資額は113,948百万円と2006年3月期の1.9倍に膨らみ、うちレジャー事業が20,683百万円、不動産事業が55,686百万円を占めた。タワー本体の区分も2011年3月期から不動産事業をレジャー事業へ移している。

開業した2013年3月期、レジャー事業の営業利益は前期の620百万円の損失から10,593百万円へ転じた。東京スカイツリーは開業から3月末までに約554万人を集め、FMラジオ放送やタクシー無線で電波塔としての利用も始まった。

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筆者の見解 巨額投資と、その先に残る問い
筆者の見解

巨額投資と、その先に残る問い

有利子負債965,605百万円を抱えたさなかに1,349億円を投じるという判断は、電波塔という一見畑違いの案件を、沿線価値向上のための都市開発として引き受けた点に核心があったと思われる。その性格は投資の内訳にも表れている。タワー本体の596億円より、足元の商業施設とオフィス施設に充てた753億円のほうが大きい。押上・業平橋の自社用地と地上デジタル放送への移行という外部の制度変更が重なった機会を、鉄道会社が街づくりへ転換した例といえる。

もっとも、開業直後の数字だけでこの判断を測るのは早い。レジャー事業の営業利益は2013年3月期に10,593百万円へ跳ねたが、展望施設はリピーターが生まれにくく、多くの集客施設は開業時を頂点として入場者を減らしていく。2011年3月期の設備投資額113,948百万円が示すとおり、この会社は有利子負債を抱えたまま投資の山を越えた。回収がどこまで進んだかは、鉄道・流通・不動産へ広がった波及も含めて、なお長い時間をかけて見るほかないのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

数字で見る 3表
投資の条件

投資の条件

科目 概要 備考
事業主体 東武タワースカイツリー株式会社 東武鉄道の特定子会社。足元の商業・オフィス施設は東武鉄道自身が建設する
所在地 東京都墨田区 押上・業平橋地区 玄関口の業平橋駅は2012年3月にとうきょうスカイツリー駅へ改称した
投資予定金額(東京スカイツリー建設工事) 59,600百万円 第189期は65,000百万円。第190期に59,600百万円へ見直した
投資予定金額(業平橋押上地区街区開発建設工事) 75,358百万円 第189〜191期は75,283百万円。東京ソラマチと東京スカイツリーイーストタワー
着工 2008年7月 タワー本体と街区開発の双方が同月に着工した
完成予定 2012年2月 第189・190期は2011年12月。街区開発の完成予定は2013年3月
資金の調達方法 自己資金、借入金
高さ 634メートル 2008年10月に自立式電波塔として世界一を目指して決定した
報告セグメント レジャー事業(タワー業) 第189・190期は不動産事業。第191期からレジャー事業へ区分を変更した
開業 2012年5月22日 東京スカイツリータウンとして開業。タワーは同年2月に竣工し引き渡された

出所:東武鉄道 有価証券報告書 第189期(2009年3月期)〜第192期(2012年3月期)【設備の新設、除却等の計画】

設備投資額の推移

東武鉄道:設備投資額の推移

(百万円) 設備投資額(連結)レジャー事業不動産事業 備考
2006年3月期 61,4764,0683,465 新タワーを核とした業平橋・押上プロジェクトを対処すべき課題に掲げた期
2008年3月期 68,4238,8795,340
2009年3月期 64,70212,97010,208 7月に東京スカイツリーが着工。不動産事業に計上している
2010年3月期 71,1437,51022,378 複合商業街区の本格的な工事に着手した
2011年3月期 113,94820,68355,686 タワーはレジャー事業、東京ソラマチなど街区開発は不動産事業
設備投資額(連結)(百万円)

出所:東武鉄道 有価証券報告書 第186期・第188〜192期【設備投資等の概要】

レジャー事業・不動産事業の営業収益と営業利益

東武鉄道:レジャー事業・不動産事業の営業収益と営業利益

(百万円) レジャー事業 営業収益レジャー事業 営業利益不動産事業 営業収益不動産事業 営業利益 備考
2005年3月期 87,4421,06840,0736,993 営業収益は外部顧客に対する営業収益。以下の期も同じ
2006年3月期 84,7911,32253,95810,478
2007年3月期 85,3451,44760,6469,579
2008年3月期 82,4861,47834,1728,443
2009年3月期 78,3381,32640,3086,430
2010年3月期 71,16218840,5106,861 業平橋押上地区開発の進捗にともなう費用が不動産事業の利益を圧迫した
2011年3月期 66,2481,12031,4704,273 2011年3月期から事業の種類別セグメント情報が報告セグメントへ移行した

出所:東武鉄道 有価証券報告書 第186期・第188〜190期【事業の種類別セグメント情報】、第191期【セグメント情報】

参考文献
出典・参考
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第186期(2006年3月期)【対処すべき課題】【設備投資等の概要】」
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第189期(2009年3月期)【設備の新設、除却等の計画】」
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第190期(2010年3月期)【業績等の概要】【設備の新設、除却等の計画】」
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第191期(2011年3月期)【設備の新設、除却等の計画】」
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第192期(2012年3月期)【設備投資等の概要】」
  • 東武鉄道 有価証券報告書「第193期(2013年3月期)【業績等の概要】」

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