筆者の見解
大手を避けることの強さと危うさ
この判断の核心は、正面から戦えば競争優位を築けない相手を、あえて避けることで戦える場を作った点にある。巨額投資が要る先端メモリーの量産競争に中堅が挑めば消耗は避けられない。ロームは大手が高集積度へ移って手を抜いた旧世代品に狙いを定め、回路図の購入や混流ラインで後発の不利を打ち消した。競争の土俵を選び直すこの発想は、資源の限られた企業がどこで戦うかを問う好例と推察される。大手が力を抜いた頃合いを見極める眼が、この戦略の生命線であった。
もっとも、大手を避け続ける戦略には危うさも伴う。旧世代品の需要はいつか細り、大手が本気で値を下げれば、限界供給部分の採算はたちまち崩れる。佐藤研一郎社長自身が量産への過度な傾斜を戒め、SRAMの生産量を全体の1割以下に抑えようとしたのも、その脆さを見越してのことであった。避けることで得た地歩を、次にどの市場へ移し替えるか——ロームの"3番手戦略"は、大手と同じ土俵に乗らないという規律と、その規律に安住しない機敏さの両方を問い続ける。
Yutaka Sugiura, 2026年7月