みずほフィナンシャルグループ MINORIへ全面刷新 3行の勘定系を一元化し、業務ごとに組み直した次期システムへの全面刷新
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
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2011年3月のシステム障害の反省を踏まえ、同年6月に策定した業務改善計画に、みずほ銀行・みずほコーポレート銀行・みずほ信託銀行3行の勘定系システムを一元化し、新しい基盤のもとで構築することを据えた。2012年度末を目途に業務共通基盤を完成させ、以後2015年度末を目途に預金・為替・融資・外為・信託といったコンポーネントシステムを順次リリースする計画である。
旧3行の勘定系を残したまま相互に接続して延命する路線を捨て、機能単位に組み替えた基盤へ全面的に乗せ替える——統合から11年を経ての決断であった。
- 背景
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2002年4月、統合直後の切替でATMの停止と二重引落を伴う障害を起こした。2011年3月には振込取引を中心とした決済取引やATM・インターネットバンキング取引の不能が発生し、同年5月にみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行が金融庁から業務改善命令を受けた。
9年を隔てた二度の障害は、出身3行の論理を残したまま接続する設計の限界を示していた。業務改善計画は障害の発端となった大量データ処理の手当てにとどまらず、緊急時対応態勢の整備、経営管理態勢の改善、システムリスクの総点検までを含み、その先に勘定系の完全一元化を置いた。
- 内容
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新しい基盤は、勘定系の中核部分を預金・内国為替・融資・外国為替・信託といった業務・機能別のコンポーネントに分けて構成する。3つの勘定系を一元化してITシステムのスリム化・効率化と障害対応力の向上を図り、コンポーネント化によって新サービスへの柔軟な対応と新規開発の期間短縮・コスト削減につなげる設計であった。
業務共通基盤は2013年度から稼働し、勘定系中核部分の完成は当初2016年12月を見込んでいた。実際の移行開始は2018年6月11日で、2018年度は8回にわたりオンラインサービスを休止して段階的に営業部店を移している。
- 含意
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みずほ銀行は2019年7月までに移行を完了し、みずほ信託銀行も同月に移った。一方その前年の2019年3月期には、構造改革への取り組みを踏まえた固定資産の減損損失503,612百万円を計上している。内訳はその他の無形固定資産354,079百万円、ソフトウェア83,492百万円、土地・建物等66,039百万円であった。
連結の無形固定資産は2018年3月末の1兆927億円から2019年3月末の6,202億円へ落ち、経常利益6,141億円に対して親会社株主に帰属する当期純利益は965億円にとどまった。移行が完了した2020年3月末には、ソフトウェアが1,613億円から4,291億円へ立ち上がっている。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
完成は、安定を約束しなかった
この決断の核心は、障害の手当てを求められた場で、手当ての範囲を越えた作り直しを選んだことにある。2011年6月の業務改善計画は本来、大量データ処理の不具合と緊急時対応の態勢を正す文書であった。そこに3行の勘定系の完全一元化を書き込んだ意味は、二度の障害の原因を個別の欠陥ではなく、出身行ごとの勘定系を接続して使い続ける構えそのものに見定めた点にある。2016年12月としていた完成が2019年7月まで延びたのは、規模を読み違えたというより、作り直しの射程が当初から手当ての枠に収まらなかったためだと思われる。
もっとも、作り上げることは動かし続けることを約束しない。移行前年の2019年3月期に計上した減損損失503,612百万円のうち、その他の無形固定資産が354,079百万円を占める。長く育てた資産が一度に落ち、移行完了の期にソフトウェアが4,291億円へ立ち上がる——この落差が、開発の途中で価値の測り直しを迫られた年月の長さを映している。完成を目的に据えた投資ほど、稼働の先に残る運用の重さを軽く見積もりやすいのではないか。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
次期システムの条件
次期システムの条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 決めた時期 | 2011年6月 | 2011年3月のシステム障害の反省を踏まえて策定した業務改善計画に盛り込んだ |
| 一元化の対象 | 3行の勘定系システム | みずほ銀行・みずほコーポレート銀行・みずほ信託銀行の勘定系を新しい基盤のもとで統合する |
| 構成 | 業務・機能別のコンポーネント | 預金・内国為替・融資・外国為替・信託に分ける。チャネル系を含む完全一元化は検討事項とした |
| 業務共通基盤 | 2012年度末を目途に完成 | 2013年度から稼働。以後2015年度末を目途にコンポーネントを順次リリースする計画であった |
| 当初の完成予定 | 2016年12月 | 勘定系中核部分として預金・為替・融資・外為等を再構築し、現行システムを吸収・閉塞する |
| 移行の開始 | 2018年6月11日 | みずほ銀行とみずほ信託銀行が順次、次期勘定系システムへの移行を進めた |
| 移行の回数 | 2018年度に8回 | オンラインサービスを休止して営業部店を段階的に移す。安全・着実な移行を優先した |
| 移行の完了 | 2019年7月 | みずほ銀行が移行を完了し、みずほ信託銀行も同月に移った |
| 投資の総額 | 公表されていない | 【設備の新設、除却等の計画】にシステム投資の記載はなく、総額を示した開示もない |
| 経費への織り込み | グループ経費率60%程度 | 2018年度の財務目標。次期システム等関連経費を除くと50%台後半とした |
| 減損損失 | 503,612百万円 | 2019年3月期。その他の無形固定資産354,079・ソフトウェア83,492・土地建物等66,039 |
| 連結の一時損失 | 6,954億円 | 2019年3月期の構造改革への取り組みを踏まえた損失。業績指標はこの反映前でも示される |
出所:みずほフィナンシャルグループ 統合報告書 ディスクロージャー誌2011(業務改善計画)・2015(IT戦略)・2017(次期システム概要)・2018(CEOメッセージ)/有価証券報告書 第16期(2018年3月期)・第17期(2019年3月期)
無形固定資産とソフトウエアの推移
みずほフィナンシャルグループ:無形固定資産とソフトウエアの推移
| (百万円) | 無形固定資産 | ソフトウエア | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2012年3月期 | 485,995 | 216,066 | 2011年6月の業務改善計画に3行の勘定系の完全一元化を据えた期 |
| 2013年3月期 | 477,546 | 210,244 | |
| 2014年3月期 | 531,501 | 286,028 | 業務共通基盤が稼働した年度。ソフトウエアが758億円増えた |
| 2015年3月期 | 657,556 | 309,207 | |
| 2016年3月期 | 804,567 | 318,920 | |
| 2017年3月期 | 1,045,486 | 308,595 | 開発中の資産を含む無形固定資産が1兆円を超えた |
| 2018年3月期 | 1,092,708 | 285,284 | |
| 2019年3月期 | 620,231 | 161,364 | 減損損失503,612百万円を計上し、無形固定資産が4,724億円減った |
| 2020年3月期 | 636,139 | 429,136 | 2019年7月に移行が完了し、ソフトウエアが1,613億円から4,291億円へ立ち上がった |
| 2021年3月期 | 620,224 | 410,026 | |
| 2022年3月期 | 601,292 | 371,534 |
出所:みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書 第10〜20期(連結貸借対照表)
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参考文献
- みずほフィナンシャルグループ 統合報告書「ディスクロージャー誌2011「〈みずほ〉の『変革』プログラムの進捗」」
- みずほフィナンシャルグループ 統合報告書「ディスクロージャー誌2015「IT戦略」」
- みずほフィナンシャルグループ 統合報告書「ディスクロージャー誌2017「IT戦略」」
- みずほフィナンシャルグループ 統合報告書「ディスクロージャー誌2018「CEOメッセージ」」
- みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書「第16期(2018年3月期)【事業等のリスク】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
- みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書「第17期(2019年3月期)【連結財務諸表注記】【業績等の概要】」
- みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書「第10〜20期(連結貸借対照表)」