みずほフィナンシャルグループ 米グリーンヒル買収 買収による、M&A助言機能を自社内へ取り込む体制づくり

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時期 2023年5月
当時の社長 木原正裕
論点 海外展開と投資銀行ビジネス
何をなぜ決めたか
概要

2023年5月22日、みずほフィナンシャルグループは子会社の米州みずほLLCを通じ、米独立系M&A助言会社グリーンヒル(Greenhill & Co., Inc.)の全株式を1株当たり15米ドルの全額現金で取得することに合意した。引き受ける負債を含む企業価値は約5億5,000万米ドルである。

関連当局の認可等を経て同年12月1日に買収を完了し、発行済株式の100%を取得して完全子会社とした。

背景

みずほは世界最大のフィーウォレットを擁する米国資本市場でのビジネスを重点施策に据え、債券引受等のデットビジネスで市場シェアを高めてきた。投資銀行の収益源として欠けていたのがM&Aアドバイザリーで、買収の狙いはM&Aビジネスの強化に求められる「人材」と、実績に裏打ちされた「企業ブランド」を獲得し、グローバルなアドバイザリー機能を内製化することにあった。

獲得した人員は約370名。この規模を採用で揃えるのは容易ではなく、ケイパビリティとともに時間を買う面もあった。

内容

買収対象は1996年創業・2004年NYSE上場のグリーンヒルで、米欧亜に15の拠点を持つ。米国ニューヨーク州ニューヨーク市に本店を置く持株会社で、資本金は307,334千米ドル。取得した議決権比率100.0%はすべて米州みずほLLCを通じた間接所有であり、Greenhill & Co., Inc.他58社が2024年3月期から連結の範囲に入った。

買収完了後もGreenhillのコーポレートブランドを活用する方針をとり、米州の銀行部門にM&A・リストラクチャリング助言の事業として組み入れている。

含意

グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニーののれん未償却残高は、2023年3月期末の3,036百万円から2024年3月期末には73,337百万円へ増えた。連結ののれんも49,613百万円から116,417百万円へ膨らんでいる。償却は20年以内の効果の及ぶ期間にわたる均等償却である。

みずほは米州の投資銀行ビジネスにM&Aアドバイザリーを加え、機能を自前でそろえる路線から、外の事業を買って成長を取り込む方針へ切り替えた。

いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
筆者の見解

足りない機能を、時間ごと買う

債券引受で米国のデットビジネスに食い込んだ銀行にとって、M&Aアドバイザリーは最後まで欠けたピースだった。人材と顧客基盤、そして四半世紀かけて積み上がった看板は、一から育てれば十年単位の時間を要する。約370名を一度に迎え、ブランドを残したまま米州の銀行部門に組み入れた判断が示すのは、足元の利益ではなく、助言という機能をいますぐ動かせる状態そのものを買ったということだと推察される。

もっとも、買収がみずほの投資銀行を一段上へ押し上げたと言い切るには、まだ時間が要る。グローバルコーポレートカンパニーののれんは前期末の3,036百万円から73,337百万円へ跳ね、20年以内の均等償却が毎期の損益にのしかかる。同カンパニーの業務純益は買収を挟んで3,300億〜3,700億円の幅を出ておらず、獲得した機能が数字となって表れるのはこれからだろう。日本の金融機関が海外の助言機能をどう自社のものにしていくか——危機下のモルガン・スタンレー救済出資とは異なる、平時の品ぞろえづくりとしての海外買収が、ここで一つの型を示した。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 Greenhill & Co., Inc. 米国ニューヨーク州ニューヨーク市に本店を置く持株会社。M&Aアドバイザリーを担う
買収の主体 米州みずほLLC(Mizuho Americas) みずほフィナンシャルグループの米国子会社。関連当局の認可等の取得を前提に全株式を取得した
合意の公表 2023年5月22日 全額現金による取得で合意。買収完了後もGreenhillのコーポレートブランドを活用する方針
買付価格 1株当たり15米ドル 全額現金による取得
企業価値 約5億5,000万米ドル 引き受ける負債を含む
買収の完了 2023年12月1日 米州みずほLLCが発行済株式の100%を取得し、完全子会社化した
取得した議決権比率 100.0% すべて米州みずほLLCを通じた間接所有
被取得企業の資本金 307,334千米ドル 2024年3月期末。持株会社として米州みずほLLCの傘下に置かれた
連結の範囲 2024年3月期から連結 Greenhill & Co., Inc.他58社を株式取得等により連結の範囲に含めた
承継した人員 約370名 M&Aビジネスの強化に求められる人材と企業ブランドの獲得が狙い
GCIBCののれん 73,337百万円 2024年3月期末の未償却残高。前期末は3,036百万円。Greenhillが属する区分
のれんの償却 20年以内の均等償却 効果の及ぶ期間にわたる。金額に重要性が乏しいものは発生年度に全額償却
企業結合等関係の注記 記載がない 取得原価とその配分、のれんの発生要因は有価証券報告書に開示されていない

出所:みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書 第22期(2024年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】【セグメント情報等】

グローバルコーポレートカンパニーののれん

みずほフィナンシャルグループ:グローバルコーポレートカンパニーののれん

(百万円) GCIBCのれん未償却残高連結のれん未償却残高 備考
2019年3月期 4,42765,495
2020年3月期 3,89961,276
2021年3月期 2,64856,249
2022年3月期 2,47352,547
2023年3月期 3,03649,613 買収前。この区分ののれんは償却で毎期減り続けていた
2024年3月期 73,337116,417 2023年12月1日にGreenhillを完全子会社化した期。前期末から70,301増えた
2025年3月期 68,446108,029 2024年4月に各セグメント間の配賦方法を見直した期
2026年3月期 78,027140,127
のれん未償却残高
GCIBCのれん未償却残高(百万円)他の区分ののれん(百万円)

出所:みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書 第17〜24期(セグメント情報等)

グローバルコーポレートカンパニーの業績

みずほフィナンシャルグループ:グローバルコーポレートカンパニーの業績

(百万円) GCIBC業務粗利益GCIBC経費GCIBC業務純益 備考
2019年3月期 416,096251,877171,198
2020年3月期 417,770249,044178,712
2021年3月期 450,623251,133210,043
2022年3月期 518,765267,680263,911
2023年3月期 672,208322,981371,268 2023年4月に組織の一部と配賦方法を見直しており、翌期とは連続しない
2024年3月期 670,215352,425337,414 買収を完了した期。Greenhillの連結は12月からの4か月分
2025年3月期 792,244453,040358,329 2024年4月に各セグメント間の配賦方法を見直した期
2026年3月期 856,952510,695367,735
業務粗利益と業務純益率
GCIBC業務粗利益(百万円)GCIBC経費(百万円)GCIBC業務純益率(%)

出所:みずほフィナンシャルグループ 有価証券報告書 第17〜24期(セグメント情報等)

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参考文献
出典・参考

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