筆者の見解
市場を創る力と、育てきれないもろさ
この投資判断の核心は、市場を先駆けて創ることに長けた会社が、それを継続的な収益へ育てる力を欠いたまま、装置産業という後戻りの効かない領域へ社運を懸けた点にある。パイオニアはレーザーディスクでも記録型DVDでもプラズマでも、いち早く市場を開拓した。だが記録型DVDが大手に押されて短期間でシェアを落としたように、先駆の優位を利益へ変え続けることは難しかった。慎重居士が慎重さを捨てた大勝負は、価格急落という市場の力の前で、そのもろさを最も重い形で露わにしたと推察される。
パネルまで自ら作るからこそ差別化できるという伊藤周男氏(社長)の論理は、それ自体としては筋が通っていた。問題は、その論理が成り立つには、価格の下落を上回るコストダウンを続けられる規模と体力が要ったことにある。松下やサムスンが備えた量産の力と資本の厚みを持たないまま、パイオニアは同じ土俵に上がった。新しい市場を最初に開く才能と、その市場を長く握り続ける体力は別のものである——プラズマへの賭けが両者を取り違えた代償は、後年の撤退に至るまで尾を引いた。
Yutaka Sugiura, 2026年7月