経営再建
経営再建に要る資金を、どこから調達するか。日本企業の再建は、この原資の出所で三度変わってきた。
高度成長期の企業は、設備資金を主力銀行からの借入で調達し、株式は取引先と相互に保有する持ち合いの関係にあった。行き詰まったとき、追加の資金を出せるのは既に融資している銀行と、同じ系列の取引先しかいなかった。銀行には既存の債権を保全するためにも追加融資に応じる動機があり、返済の猶予と役員の派遣が伴った。原資は預金であり、対価は金利と取引の継続だった。1965年に山一證券は日本銀行の特別融資で新旧勘定を分離し、損失を旧勘定に閉じ込めたまま営業を続けた。1980年にはジェイテクトがトヨタ自動車工業へ支援を要請し、第三者割当増資で資本関係を深めている。いずれも系列の内側で完結する再建である。
しかしバブル崩壊で、銀行の融資という原資が尽きた。銀行自身が不良債権を抱えて新規融資ができず、持ち合いも解消された。代わって現れたのが、国外の事業会社と投資ファンドである。借入は返済すれば関係が終わるが、出資に返済という手続きはない。出資を受ける企業が差し出す対価は持分であり、それに伴う人事の決定権である。日産自動車はルノーの出資を受け入れ、シャープは鴻海の傘下で戴正呉氏に再建を託した。パイオニアはベアリングPEの資本と引き換えに上場を廃止し、株式市場から資金を調達する資格を失っている。
破綻が取引先と利用者へ広く波及する企業では、三つ目の原資が使われた。公的資金である。りそなホールディングスは預金保険法102条で1兆9,600億円を受け、ダイエーは産業再生機構に再建を委ね、日本航空は会社更生法の下で稲盛和夫氏を招いた。いずれも、制度が資金と経営者を同時に供給する仕組みである。原資が公的である以上、再建の計画は外部へ開示され、達成の可否も公に測られる。
原資が融資から出資と公的資金へ移り、対価も変わった。金利を払い終えれば切れる借入と違い、渡した持分は業績が戻っても戻らない。再建を果たした企業の多くが危機の前とは違う資本の下にあるのは、そのためである。
財務諸表のどこを見るか
再建の資金と権限がどこから来たかを見る。株主資本等変動計算書と資本金・資本剰余金の増減で第三者割当増資や優先株の発行額を押さえ、大株主の状況で筆頭株主の交代を確かめる。借入については有利子負債の残高と返済期限の内訳、注記の債務免除益と借入条件の変更を読む。再建の切迫度は継続企業の前提に関する注記と重要事象等の記載に出る。役員の状況で外部から招いた社長・会長の前歴をたどると、誰が経営権を掌握したかが分かる。