スクウェア・エニックス・ホールディングス "FF14"の全面再開発 サービス崩壊を認め、吉田直樹氏を起用した"
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
-
2010年12月10日、スクウェア・エニックスは同年9月30日にサービスを始めた"ファイナルファンタジーXIV"の不振を受け、開発体制を全面刷新すると発表した経営判断である。和田洋一社長が公式に謝罪し、吉田直樹氏をプロデューサー兼ディレクターに起用して、旧版を延命しながらゲームをグラフィック・UI・ストーリーごと作り直す方針を決めた。
- 背景
-
"ファイナルファンタジーXIV"はサービス開始直後からユーザーインターフェースや操作レスポンスへの不満が噴出し、利用者が急速に離れた。"ファイナルファンタジー"の名を冠したタイトルの失敗は、ブランドそのものの信用に関わる問題として経営課題に浮上した。
- 内容
-
和田洋一社長は開発体制刷新を発表する記者会見で、同じ失敗を重ねることは許されないとの認識を示して謝罪し、当時のプロデューサーを退かせて吉田直樹氏を後任に起用した。吉田氏は就任後の調査の末、旧版に手を加えるのではなく作り直す方が早いと判断し、2013年8月に新生版"新生エオルゼア"をリリースした。
- 含意
-
稼働中のオンラインサービスを、延命ではなくゼロから作り直すという判断は当時の業界でも前例が乏しかった。新生版は軌道に乗り、FF14はその後同社のMMO事業を支える収益源として定着した。
いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
延命ではなく再開発するという賭け
この判断の核心は、稼働中のオンラインサービスを止めずに延命させながら、裏側でまったく別のゲームを作るという二正面作戦を選んだ点にある。パッチを重ねて改善する道の方が短期的には穏当だったはずだが、吉田氏はそれでは"ファイナルファンタジー"の名に見合う水準に届かないと判断した。ブランドの信用を守るために、目先の効率を犠牲にする選択であったと思われる。
和田洋一社長が公式に失敗を認めて謝罪した点も、この判断の異色さを支えている。経営トップが自ら非を認めることは往々にして難しいが、その率直さがあったからこそ、ゼロからの作り直しという大がかりな投資にユーザーと社内の理解を取り付けられたともいえる。もっとも、この成功体験が後年のFF16やFFVII REBIRTHの苦戦を防いだわけではない。危機を認めて作り直す胆力と、当たり外れの振れ幅を抱える内製モデルの宿命は、この会社のなかで表裏一体のまま今日まで続いているとうかがえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- スクウェア・エニックス・ホールディングス 決算短信
- スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書