日本精工ステアリング事業の全株買戻し:いったん分社し投資ファンドへ渡した過半株式の2年での取り戻し
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- 概要
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日本精工は2023年4月にステアリング事業を子会社へ吸収分割し、同年8月に株式50.1%を投資ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)傘下のファンドへ譲渡して連結から外した。2年後の2025年5月12日、JISが持つ50.1%を買い取って完全子会社に戻すと発表し、同年9月1日に取得した。手放す判断と取り戻す判断を、同じ経営陣が2年で行った往復である。
- 背景
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2018年3月期に売上の73%を占めた自動車事業は、2021年3月期に40億円のセグメント損失へ転じ、連結営業利益は63億円まで縮んだ。市井明俊社長は産業機械への比重移しを掲げていた。欧州の電動パワーステアリング事業の採算改善をめぐるドイツ・ティッセンクルップとの合弁交渉は、2023年春に難しいと判断されて実らなかった。
- 内容
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分社した会社の株式50.1%をJIS傘下のファンドへ渡し、日本精工は49.9%の持分法適用会社として残った。譲渡契約には買い戻しの条項が書き込まれていた。JIS主導の2年間で、売却時に約90億円あった赤字は2024年3月期に43億円の利益へ入れ替わり、利益改善の幅は約150億円に達した。買戻価格は開示されていない。
- 含意
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完全子会社に戻したあとも、戦略的パートナーを探して事業を切り出す方針は変わっていない。2028年度に見込むステアリング事業の営業利益率は3〜4%で、会社全体で掲げる8〜10%とは開きが残る。赤字事業を外部の手で立て直してから戻すという道筋が、次のカーブアウトの前提になっている。
外の手を借りて直し、戻してから出す
売却時に約90億円あった赤字が、2年後には43億円の利益に入れ替わっていた。同じ資産、同じ製品、同じ顧客のまま、過半の株主が入れ替わり、独立した会社として売価を交渉できるようになったことが数字を変えた。日本精工が自ら抱えていたあいだは動かなかった調達や価格の見直しが、連結の外へ出た2年で進んだ事実は、この往復のなかでもっとも重い。事業の採算は事業そのものだけで決まるのではなく、誰の傘の下に置かれているかにも左右されるとみることができる。
ただし、戻したことは決着ではない。会社は買い戻しの後も、戦略的パートナーを探して切り出す方針を変えていないと明言し、2028年度のステアリング事業の営業利益率を3〜4%と見込んでいる。会社全体で掲げる8〜10%との差は残り、この事業を抱えたままでは目標に届かない構造も変わっていない。ティッセンクルップとの合弁が実らず、ファンドの手を借り、いったん取り戻したうえで次の相手を待つ——1960年に前橋で生まれた事業の身の置き所は、2年の往復を経てもなお定まっていないといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
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