過去最大級の赤字と構造改革
2025年実施米州事業で468億円の減損を計上し二期連続の赤字へ沈むなか、藤原憲太郎社長CEOはなぜ痛みを先取りする道を選んだのか
- 概要
- 2025年11月、資生堂は2025年12月期の連結最終損益を520億円の赤字へ下方修正した。米州事業で約468億円ののれん減損を計上し、2024年からの国内外の早期退職と合わせ、藤原憲太郎社長CEOのもとで勝てる分野への集中投資へと事業を絞り込んだ構造改革の判断。会計基準や決算期の変更を除く比較では過去最大級の赤字となった。
- 背景
- 米国のスキンケアブランド「ドランクエレファント」など過去に買収した海外ブランドの販売不振で米州事業の収益性が低下し、のれんの減損が避けられなくなっていた。従来予想は60億円の黒字だったが、468億円の減損計上で520億円の最終赤字へ転じ、2001年3月期の450億円を上回る規模となった。
- 内容
- 資生堂は減損の計上と並行して人員削減を重ねた。2024年に国内で1477人、2025年に米国子会社で約300人を削減し、さらに本社などで約200人の早期退職を追加募集した。藤原社長は2026年に250億円の効果実現の目処が立ったとし、米州事業の立て直しと固定費削減を前倒しで進める方針を示した。
- 含意
- 減損は過去の海外ブランド買収の清算であり、早期退職は費用構造の調整にあたる。2025年12月期は406億円の最終赤字で二期連続の赤字となったが、コア営業利益は445億円へ改善した。2026年は純利益420億円の黒字と米州の黒字化を掲げ、赤字を出し切った先の再成長が翌年の課題として残った。
赤字を出し切る、という選択
この構造改革の核心は、業績の落ち込みそのものよりも、過去の海外ブランド買収がもたらした損失に正面から向き合った点にある。資生堂は米州で膨らんだのれんを一度に切り下げ、二期連続の赤字という痛みを引き受けた。同時に、2024年からの国内外の人員削減を積み重ね、勝てる分野へ資源を絞り込む再設計を進めた。減損は過去の投資判断の清算であり、早期退職は身の丈に合った費用構造への調整にあたる。過去の拡大路線が残した重荷を、赤字を出し切る形で処理する選択であった。
もっとも、赤字を計上して構造を整えたことが、そのまま再成長を約束するわけではない。減損で米州の帳簿を軽くし、固定費を下げても、ドランクエレファントをはじめとする海外ブランドが再び売れなければ、米州事業の黒字化という2026年の目標は宙に浮く。国内化粧品市場の成熟や海外の需要変動という逆風も消えてはいない。資生堂の再建は、赤字を出し切った2025年をどう次の成長へつなげるかにかかっている。老舗が挑む立て直しの成否は、いまだ数字として現れていない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
過去最大級の赤字への下方修正
資生堂は2025年11月10日、2025年12月期の連結業績予想を下方修正した。最終損益は従来予想の60億円の黒字から一転して520億円の赤字となる見通しで、営業損益も135億円の黒字から420億円の赤字へ沈む。会計基準や決算期の変更を除いて比べると、この赤字幅は2001年3月期の450億円を上回り、資生堂として過去最大の規模にあたる。国内化粧品首位として長く安定した収益を保ってきた老舗が、二期続けての最終赤字へ向かっていた[1][2]。
米州事業の減損とブランド買収の後始末
赤字転落の主因は、米州事業で計上したのれんの減損損失にあった。資生堂が抱える米国のスキンケアブランド「ドランクエレファント」は販売不振が続き、米国事業の収益性が低下して、のれんの価値を約468億円分切り下げた。かつて成長の柱と見込んだ海外ブランドの買収が、数年を経て多額の損失となって現れた。米州は資生堂にとって、投資に見合う収益を生み出せない事業として重くのしかかっていた[3][4]。
決断
国内外で重ねた人員削減
減損の計上と並んで、資生堂は人員削減を段階的に重ねた。2024年には日本の従業員の約1割にあたる美容部員ら1477人が早期退職に応じ、2025年には米国子会社で1割超にあたる約300人の削減に踏み切った。そのうえで今回の下方修正にあわせ、本社および国内の一部子会社で新たに約200人の早期退職者を募集すると発表した。募集期間は2025年12月8日から26日まで、退職日は2026年3月31日と定めた。二年あまりの間に、国内外で大規模な人員の整理が続いた[5][6]。
「勝てる分野に絞って投資」という再設計
一連の削減は、単なる縮小ではなく事業の絞り込みを狙ったものだった。藤原憲太郎社長CEOは業績予想の下方修正を発表した席で、構造改革の効果について「2026年には250億円の効果実現の目処が立った。苦しい構造改革期を経て、新たな成長軌道へと舵を切る」と述べた。米州事業の立て直しと固定費の削減を前倒しで進め、勝てる分野へ経営資源を集中する——痛みを伴う整理の先に、翌年からの収益回復を見据える構えであった[7][8]。
結果
二期連続の赤字と、2026年の反攻計画
募集した早期退職には、想定を上回る応募が集まった。資生堂は2026年1月6日、国内で計257人の退職が決まったと発表した。約200人の枠に対する超過であり、勤続年数や年齢に応じた特別加算金を通常の退職金に上乗せして支給する。続く2月10日に開示した2025年12月期の通期実績は、最終損益が406億円の赤字で、前期の108億円に続く二期連続の赤字となった。売上高は前期比2.1%減の9699億円、本業のもうけを示すコア営業利益は22.4%増の445億円だった[9][10]。
藤原社長は2025年を「単なる構造改革の年ではなかった。将来の飛躍に向けた最も重要な基盤構築を完了させた年だ」と振り返り、2026年へ向けて「準備は整いました」と語った。資生堂が示した2026年12月期の予想は、売上高が前期比2.1%増の9900億円、コア営業利益が55%増の690億円、そして純利益は420億円の黒字である。二年続いた赤字からの黒字転換と、米州事業の収益改善を翌年に実現できるかどうかが、次の課題として残った[11][12]。
- 日本経済新聞(2025年11月10日)「資生堂が過去最大赤字520億円、25年12月期最終 新たに200人削減」
- 日本経済新聞(2025年11月10日)「資生堂、通期の最終損益予想を下方修正 60億円の黒字から520億円の赤字に」
- WWDJAPAN(2025年11月10日)「資生堂が業績予想を下方修正、520億円の最終赤字 新たに国内で200人削減」
- 日本経済新聞(2026年1月6日)「資生堂、国内257人希望退職 特別加算金も支給」
- WWDJAPAN(2026年2月10日)「資生堂、25年12月期は2期連続の最終赤字 26年は復活へ『準備は整った』」
- 日本経済新聞(2026年1月21日)「資生堂の藤原社長、業績低迷脱却へ『勝てる分野に絞って投資』」