TOTOKU・UACJなど売却(2022年・古河電工の決断)

更新:
論点非中核事業を売却し光事業へ集中するか
古河電工:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
非中核事業の切り離しとデータセンター向け光事業への集中

何をなぜ決めたか:非中核事業の切り離しとデータセンター向け光事業への集中

概要

2022年5月、2025年度を最終年度とする中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」を策定し、事業の縮小・撤退に係る社内基準として投下資本利益率(ROIC)と投下資本付加価値額(FVA)を設定した。

銅管、太物巻線、東京特殊電線、UACJ株式、古河電池と、系列の事業・子会社を順に売却していく。資金と経営資源はデータセンター向けの光ファイバ・光部品へ振り向けられ、2025年4月には日本・米国・ブラジルの3事業ユニットが実質的に統合され、持株会社Lightera Holding合同会社の完全子会社として並んだ。

背景

2022年3月期の連結売上高9,304億円に対し、連結営業利益は114億円にとどまった。電装エレクトロニクスのセグメント利益は123百万円まで減少し、低採算の事業と上場子会社を並べたまま資本効率が沈んでいた。

中期経営計画が掲げた2026年3月期の到達目標は、ROIC(税引後)6%以上、ROE11%以上、連結売上高1.1兆円以上、連結営業利益580億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上。グループ内の事業の位置づけを可視化し、投資配分を最適化することを基本方針に置いた。

内容

2020年4月に銅管事業を会社分割し、6月1日にDaishin P&T株式を譲渡して事業譲渡損3,770百万円を計上。同年10月1日には太物巻線等の事業をEssex Furukawa Magnet Wire LLCへ現物出資し、持分変動損失487百万円を計上した。

2022年12月28日、連結子会社の東京特殊電線(現TOTOKU)の全株式をTTCホールディングスへ譲渡し、投資有価証券売却益10,846百万円を計上。2024年6月にはUACJ株式2,600,000株を市場で売却し、持分比率を19.75%へ落として持分法適用範囲から外した。

含意

古河電池は1950年9月に電池部門を分離独立させて設立され、1972年8月に東証市場第一部へ上場した子会社である。2024年7月23日の取締役会で公開買付けへの不応募契約を決議し、2025年12月24日に所有株式18,781,200株(所有割合57.30%)の全てを譲渡した。

連結から外れた事業の規模は売上高58,953百万円・営業利益1,802百万円。ただし全て売却したのではなく、買収側の持株会社の普通株式を取得し、古河電池株式の約20%を間接的に保有し続ける関係が残った。

いつ何が起きたか12件
当時の取締役11名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

考察:二十年抱えた事業が主役に戻るまで
考察

考察:二十年抱えた事業が主役に戻るまで

切る基準を先に決めたことが、売却する順番を決めた。2022年5月の中期経営計画は、事業の縮小・撤退に係る社内基準としてROICとFVAを置いている。そこから銅管、太物巻線、東京特殊電線と外側から剥がれ、最後に残ったのが1950年に自ら分離独立させ、1972年に上場させた古河電池であった。長く抱えた子会社の株を売却する判断は、個々の事業の良し悪しの積み上げではなく、全社に一つの物差しを通したことで始動したと思われる。指標を入れ替えるという、社外からは地味に見える決定が、事業の顔ぶれを変える力を持った例といえる。

もっとも、集中した先は新しく買った事業ではない。データセンター向けの光ファイバと光部品は、2001年のOFS買収で引き継いだ資産の延長にあり、2025年4月にその3事業ユニットがLighteraの名で一つに統合された。売却で得た資金は、長く低採算に沈んでいた事業の増産へ戻された形になる。古河電池株式の約20%を持株会社経由で残した設計も含め、この判断は切ることと持ち続けることの配分を組み替えたものであった。中期経営計画の最終年度に営業利益は掲げた水準を越えたが、ここから先は売却できる対象がもう多くない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

古河電工:売却した事業を含む報告セグメントの推移

電装エレクトロニクス売上高(百万円)電装エレクトロニクス営業利益率(%)
古河電工:売却した事業を含む報告セグメントの推移
(百万円)電装エレクトロニクス売上高電装エレクトロニクス営業利益機能製品売上高機能製品営業利益備考
2018年3月期502,52118,360144,19814,032
2019年3月期535,65919,469140,74813,539
2020年3月期493,73414,818110,4787,467
2021年3月期423,0265,858108,6486,298銅管を期首に、太物巻線を10月に分離。いずれも電装エレクトロニクスに含まれていた
2022年3月期488,849123123,7157,583電装エレクトロニクスのセグメント利益が123百万円まで減少した期
2023年3月期599,4964,694120,2894,179中期経営計画の初年度。12月に東京特殊電線を機能製品から切り離した
2024年3月期644,08418,702110,9835,509
2025年3月期727,69432,295140,94713,957翌期の有報では組替後に電装32,619・機能14,127。表は各期の当期欄で揃えた
2026年3月期756,17033,887150,80415,37912月に古河電池が連結から外れた。全社の営業利益は63,856百万円
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第195〜204期【セグメント情報等】
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第195〜204期【セグメント情報等】

古河電工:持分法による投資損益と投資有価証券売却益

投資有価証券売却益(百万円)持分法による投資損益(百万円)
古河電工:持分法による投資損益と投資有価証券売却益
(百万円)持分法による投資損益投資有価証券売却益特別利益合計備考
2018年3月期4,3112209,776
2019年3月期1,6854,9529,887
2020年3月期2,4587,49414,934
2021年3月期△8939,52133,430営業外費用に持分法による投資損失893百万円を計上した期
2022年3月期9,0451,8599,580
2023年3月期5,99115,27917,642投資有価証券売却益に東特の10,846百万円を含む。持分法損益は翌期に3,610へ遡及修正
2024年3月期6,32311,98314,908UACJがIFRSを任意適用し、持分法損益は遡及適用後の基準で並ぶ
2025年3月期10,60210,40619,821
2026年3月期16,53519,29440,159特別利益には退職給付制度改定益19,437百万円も含まれる
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第195〜204期(連結損益計算書)
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第195〜204期(連結損益計算書)

売却した事業・子会社の条件

売却した事業・子会社の条件
科目概要備考
銅管事業(Daishin P&T)2020年6月1日/事業譲渡損3,770百万円分離先はCTJホールディングス2。移転した資産15,741・負債6,707百万円。電装エレクトロニクス
太物巻線事業2020年10月1日/持分変動損失487百万円合弁会社へ現物出資。出資後の持分比率は当社側39%、Superior Essex側61%。売上9,070百万円
東京特殊電線(現TOTOKU)2022年12月28日/投資有価証券売却益10,846百万円分離先はTTCホールディングス。移転した資産27,304・負債7,338百万円。機能製品に区分
東特の分離前の損益売上高13,390百万円/営業利益3,691百万円2023年3月期の連結損益計算書に含まれていた分離事業の概算額
UACJ株式2024年6月12日受渡/2,600,000株売却損益は個別で約60億円、連結で約△12億円。売却後の持分比率19.75%で持分法適用外へ
古河電池2025年12月24日/移転損益624百万円18,781,200株・所有割合57.30%を譲渡。移転した資産72,554・負債52,504百万円
古河電池の分離前の損益売上高58,953百万円/営業利益1,802百万円分離後も買収側の持株会社を介して古河電池株式の約20%を間接保有する
瀋陽古河電纜2026年2月10日/移転損益98百万円分離先は安徽偉光電纜股份有限公司。移転した資産23,304・負債23,818百万円。インフラ
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第199期(2021年3月期)・第201期(2023年3月期)【企業結合等関係】、第202期(2024年3月期)【重要な後発事象】、第204期(2026年3月期)【企業結合等関係】
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第199期(2021年3月期)・第201期(2023年3月期)【企業結合等関係】、第202期(2024年3月期)【重要な後発事象】、第204期(2026年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役11名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 古河電気工業 有価証券報告書【沿革】
  • 古河電気工業 有価証券報告書 第195〜204期(連結損益計算書・セグメント情報等)
  • 古河電気工業 有価証券報告書「第199期(2021年3月期)【企業結合等関係】」
  • 古河電気工業 有価証券報告書「第200期(2022年3月期)【対処すべき課題等】」
  • 古河電気工業 有価証券報告書「第201期(2023年3月期)【企業結合等関係】」
  • 古河電気工業 有価証券報告書「第202期(2024年3月期)【重要な後発事象】」
  • 古河電気工業 有価証券報告書「第204期(2026年3月期)【企業結合等関係】」
  • 古河電気工業 説明会資料「中期経営計画2022~2025(25中計)進捗」
  • 古河電気工業 決算説明会資料「通期決算プレゼンテーション(2025年3月期)」
  • 古河電気工業 統合報告書「統合報告書2025」

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