キユーソー流通システムの連結除外(2021年・キユーピーの決断)

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論点 物流子会社を連結の範囲に残すか
キユーピー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式2%の売却による物流事業の分離と、食品事業への資源の集中

何をなぜ決めたか:株式2%の売却による物流事業の分離と、食品事業への資源の集中

概要

2021年1月7日、キユーピーの取締役会は、連結子会社キユーソー流通システム(KRS)の株式の一部売却を決議した。KRSが実施する立会外分売で253,600株を売却し、議決権所有割合を51.60%から49.56%へ引き下げる内容である。売却は1月18日に実行され、KRSと子会社14社は2021年11月期の期首から持分法適用関連会社となった。

売却した株は、KRSの発行済株式12,677,900株の2%にあたる。譲渡価額と譲渡損益は、重要性が乏しいとして記載されていない。決算では、過去にKRSへ譲渡した土地の未実現利益の実現分などを加えた結果、関係会社株式売却益291百万円を特別利益に計上した。売却後も、キユーピーは子会社分を含めてKRSの議決権の43.6%を持つ。

背景

KRSは1966年2月、キユーピーの倉庫部門を分離・独立させ、キユーピー倉庫として設立された。1989年12月にキユーピー流通システムへ商号を変更し、1995年9月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2000年4月にキユーソー流通システムとなった。2020年11月期のKRSの営業収益は171,171百万円で、そのうちキユーピーからの営業収益は11,182百万円、比率は6.53%だった。

キユーピーの連結決算で、物流事業は大きな比重を持っていた。連結から外れたことによる2021年11月期の減少影響は、売上高1,404億23百万円、営業利益28億37百万円である。2020年11月期の連結売上高531,103百万円の約4分の1にあたる。一方、KRSの経常利益は2016年11月期の5,050百万円から2020年11月期の2,611百万円へ減っていた。

内容

売却の理由は、両社で異なる。KRSにとっては、親子関係を解消して意思決定を速め、戦略的投資を自ら判断できるようにすることが企業価値の向上につながる。そのうえで国内の食品物流サービスを高め、海外での拡大を進める。キユーピーは、「めざす姿」の実現に向けて、国内・海外の食品事業へ経営資源をいっそう集中させることを理由に挙げた。

売却後も、KRSはキユーピーグループの物流を担い、両社は製造から配送までの物流品質の考え方を共有する。分売前の51.60%には、キユーピーの親会社である中島董商店の5.93%を含む共同保有分6.26%が入っていた。売却により、キユーピーはKRSの親会社から、主要株主およびその他の関係会社に変わった。

含意

連結から外れたことで、2021年11月期の連結売上高は407,039百万円となり、前期の531,103百万円から減った。従業員数は16,003人から10,719人へ減り、総資産は1,052億64百万円、負債は622億41百万円減少した。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失の減少により11,378百万円から18,014百万円へ増えた。

売却後のKRSは、持分法でキユーピーの損益に入る。持分法による投資利益は2021年11月期に998百万円、2025年11月期に1,632百万円だった。KRSが当期純損失1,334百万円を計上した2023年11月期には、持分法による投資損失343百万円を計上した。2026年1月時点で、キユーピーはKRS株の持分の見直しを検討しているが、決定した事項はない。

いつ何が起きたか 12件
当時の取締役 11名

当時の取締役(2020年2月株主総会決議)

  • 中島周:会長
  • 長南収:社長執行役員
  • 齋藤謙吾:専務執行役員
  • 勝山忠昭:常務執行役員
  • 井上伸雄:常務執行役員
  • 佐藤誠也:常務執行役員
  • 濱千代善規:上席執行役員
  • 姫野實:上席執行役員
  • 篠原真人:上席執行役員
  • 内田和成:社外取締役
  • 漆紫穂子:社外取締役
考察:2%の売却で組み替えた事業構成
考察

考察:2%の売却で組み替えた事業構成

なぜキユーピーは、KRSを連結から外したのか。KRSの営業収益のうち、キユーピーからの分は6.53%にすぎない。KRSは、すでに外部の顧客で成り立つ物流会社だった。それでもキユーピーの連結では、物流事業が売上高の約4分の1を占めていた。食品メーカーとしての姿が、数字の上では見えにくくなっていたのである。売却した株は発行済株式の2%だが、それだけで連結の範囲が変わる。少ない売却で事業の構成を組み替えられる点が、この方法を選んだ理由だと考えられる。

もっとも、49.56%という比率は、経営の自由を渡しながら資本の関係を残す位置にある。KRSは持分法でキユーピーの損益に入り続ける。KRSが当期純損失を計上した2023年11月期には、キユーピーも持分法による投資損失343百万円を計上した。連結から外しても、KRSの業績の影響を受けなくなったわけではない。KRSがグループの物流を担う関係も残った。物流を自ら持つか外部に任せるかという問いには、まだ答えを出していないとみられる。

その後の数字を見ると、両社とも成長している。キユーピーの売上高は2021年11月期の407,039百万円から、2025年11月期には513,417百万円へ増えた。経常利益は37,389百万円と、売却前の2020年11月期の28,989百万円を上回る。KRSも営業収益を202,602百万円へ伸ばした。ただし、キユーピーは2025年11月にアヲハタの完全子会社化を優先し、KRS株の持分の見直しは決まっていない。残した43.6%をどうするかで、この判断の評価は定まるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 2表

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図と表

キユーピー:キユーピーの売上高・経常利益・持分法損益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)

物流事業の除外で、2021年11月期の売上高は前期から約1,241億円減った

キユーピー:キユーピーの売上高・経常利益・持分法損益の推移
(百万円) 売上高経常利益総資産持分法による投資損益 備考
2016年11月期 552,30631,364384,263295
2017年11月期 561,68832,511417,71093
2018年11月期 573,52534,349419,736130
2019年11月期 545,72333,275444,309168
2020年11月期 531,10328,989451,723116 売却前の最終期。物流セグメントの売上高は140,423
2021年11月期 407,03929,698381,003998 期首からKRSと子会社14社を持分法適用関連会社へ移行
2022年11月期 430,30427,249403,384928
2023年11月期 455,08620,490426,006△343 持分法による投資損失343を計上
2024年11月期 483,98536,874462,3721,371
2025年11月期 513,41737,389480,5311,632 11月にアヲハタを株式交換で完全子会社化
出所:キユーピー 有価証券報告書 第108期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーピー 有価証券報告書 第113期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーピー 有価証券報告書 第105期〜第113期【連結損益計算書】(持分法による投資損益)
出所:キユーピー 有価証券報告書 第108期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーピー 有価証券報告書 第113期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーピー 有価証券報告書 第105期〜第113期【連結損益計算書】(持分法による投資損益)

キユーピー:キユーソー流通システムの営業収益と経常利益

KRS営業収益(百万円)KRS経常利益率(%)
キユーピー:キユーソー流通システムの営業収益と経常利益
(百万円) KRS営業収益KRS経常利益 備考
2016年11月期 153,0345,050
2017年11月期 159,7224,993
2018年11月期 169,1554,822
2019年11月期 172,1854,350
2020年11月期 171,1712,611 11月にインドネシアの物流4社を取得
2021年11月期 175,9673,306 1月にキユーピーの連結子会社から持分法適用関連会社へ
2022年11月期 179,6493,259
2023年11月期 184,6173,470 当期純損失1,334を計上
2024年11月期 195,1924,887
2025年11月期 202,6024,820
出所:キユーソー流通システム 有価証券報告書 第55期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーソー流通システム 有価証券報告書 第60期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:キユーソー流通システム 有価証券報告書 第55期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】 / キユーソー流通システム 有価証券報告書 第60期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】
当時の取締役 11名

当時の取締役(2020年2月株主総会決議)

  • 中島周:会長
  • 長南収:社長執行役員
  • 齋藤謙吾:専務執行役員
  • 勝山忠昭:常務執行役員
  • 井上伸雄:常務執行役員
  • 佐藤誠也:常務執行役員
  • 濱千代善規:上席執行役員
  • 姫野實:上席執行役員
  • 篠原真人:上席執行役員
  • 内田和成:社外取締役
  • 漆紫穂子:社外取締役
参考文献

参考文献

参考
  • キユーピー 有価証券報告書 第109期(2021年11月期)【注記事項】(企業結合等関係)
  • キユーピー 有価証券報告書 第108期(2020年11月期)【注記事項】(重要な後発事象)
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書 第60期(2025年11月期)【沿革】
  • キユーピー 有価証券報告書 第109期(2021年11月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • キユーピー 有価証券報告書 第108期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書 第55期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書 第55期(2020年11月期)【関係会社の状況】
  • キユーピー 有価証券報告書 第109期(2021年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • キユーピー 有価証券報告書 第109期(2021年11月期)【連結損益計算書】
  • キユーピー 有価証券報告書 第113期(2025年11月期)【連結損益計算書】
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書 第60期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • キユーピー 有価証券報告書 第111期(2023年11月期)【連結損益計算書】
  • キユーピー 2025年度決算説明会 主な質疑応答(2026年1月14日)
  • キユーピー 有価証券報告書 第113期(2025年11月期)【沿革】
  • キユーピー 有価証券報告書 第113期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • キユーピー 有価証券報告書 第105期〜第113期【連結損益計算書】(持分法による投資損益)
  • キユーピー 適時開示「連結子会社の異動を伴う株式の一部売却に関するお知らせ」
  • キユーピー 適時開示「Notice regarding Partial Sale of Shares (Update of the Previous Disclosure)」
  • キユーピー 決算説明会資料「2025年度上期決算説明会 主な質疑応答」
  • キユーピー 決算説明会資料「2025年度決算説明会 主な質疑応答」
  • キユーピー 有価証券報告書「第108期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】【注記事項】(重要な後発事象)」
  • キユーピー 有価証券報告書「第109期(2021年11月期)【主要な経営指標等の推移】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【注記事項】(企業結合等関係)」
  • キユーピー 有価証券報告書「第113期(2025年11月期)【主要な経営指標等の推移】【沿革】【連結損益計算書】」
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書「第55期(2020年11月期)【主要な経営指標等の推移】【関係会社の状況】」
  • キユーソー流通システム 有価証券報告書「第60期(2025年11月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】」

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