データセンター投資後の引責辞任(2007年・さくらインターネットの決断)

更新:
論点債務超過の責任をどう明確にするか
さくらインターネット:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
債務超過を受けた社長交代と、上場後に増やした子会社の一斉整理

何をなぜ決めたか:債務超過を受けた社長交代と、上場後に増やした子会社の一斉整理

概要

2007年11月27日、さくらインターネットは笹田亮社長兼CEOが同月30日付で辞任し、取締役最高執行責任者で創業者の田中邦裕氏が社長兼最高経営責任者に就任すると発表した。2008年3月期の中間決算で多額の特別損失を計上して株主資本が大幅に減少し、債務超過の状態になったことを受けた交代である。

田中邦裕社長は就任にあたり、原点であるデータセンター運営事業への回帰と経営資源の集中を掲げ、不採算の事業や子会社は採算性を厳しく精査したうえで抜本的な事業構造改革を進めるとした。債務超過の解消策として示したのは、事業の一部売却と資本増強の二つである。

背景

2005年10月の東証マザーズ上場後、買収と新会社設立、オンラインゲーム運営へと事業を広げた。連結売上高は2007年3月期に4,703百万円と前期の1.7倍になった一方で、経常損失346百万円・当期純損失493百万円を計上し、拡大が収益に結びつかない状態が続いた。

同期の連結特別損失205百万円のうち161百万円は減損損失で、赤字のオンラインゲームが既にその中心にあった。上場後2年で従業員は109名から153名へ増え、固定費が先に立ち上がっていた。

内容

2008年3月期の連結特別損失は774百万円。オンラインゲームの固定資産を全額減損した減損損失367百万円、ライセンス契約の期間短縮に伴う違約金250百万円、投資有価証券評価損65百万円、のれん償却額54百万円が並ぶ。

減損の内訳は専用実施権210百万円、ソフトウェア126百万円、リース資産減損勘定18百万円で、データセンター運営事業の不稼動資産9百万円を含む。ノンコアと位置づけたインターネット接続事業は、2007年12月1日にDOMIRUへ営業譲渡した。

含意

2007年7月のイクスフェイズを皮切りに、2008年1月にカイロス、同年3月にさくらクリエイティブと米国法人SAKURA Internet (USA)の株式を手放した。関係会社株式売却益80百万円と営業譲渡益を含め、この期の特別利益は343百万円になった。

2008年2月13日には双日を引受先とする第三者割当増資12,718株・999,990千円で債務超過を解消し、翌2008年6月の定時株主総会で資本準備金729,232千円を減少させて欠損を填補した。上場から2年で広げた版図を2年で畳み、創業以来の一本足へ戻る選択であった。

いつ何が起きたか9件
考察:増やす計画のない再建案
考察

考察:増やす計画のない再建案

2007年11月に決まったのは、誰が社長を務めるかではなく、この会社が翌年から何を持たないかであった。田中邦裕社長が就任の挨拶に並べたのは、データセンター運営事業への回帰、不採算の事業と子会社の精査、事業の一部売却、資本増強で、増やす計画は一つも入っていない。上場から2年で買収と新会社設立とオンラインゲーム進出を重ねた会社が、次の2年ですることは外へ出すことと穴を埋めることだけになった。畳んだのが広げた本人であり、挨拶が謝罪から始まったところに、この交代の性格が表れている。

もっとも、本業へ絞る操作は、稼ぐ道を一本にすると同時に、選べる道も一本にした。翌2009年3月期に純利益3億7,400万円へ戻せたのは、月額課金で回るレンタルサーバとデータセンターだけを残し、現金を吸い出す先を外へ出したからであった。上場後に取得した4社が順に消え、同じ操作で、サーバを預かって動かす以外に現金を作る手段も消えている。畳んで一本に戻す再建は、残した一本が伸びているあいだしか成り立たない。数年後に営業キャッシュフローが石狩の土地と建物へ向かったのも、太らせる先がその一本しかなかったからであろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

さくらインターネット:業績の推移(提出会社)

売上高(千円)経常損益率(%)
さくらインターネット:業績の推移(提出会社)
(千円)売上高経常損益当期純損益備考
2003年3月期1,039,933△63,868△74,709
2004年3月期1,436,800152,477150,546
2005年3月期1,930,064132,44370,835
2006年3月期2,758,593207,417116,28710月に東証マザーズへ上場。第7期から連結財務諸表の作成が始まった
2007年3月期4,398,489△162,170△358,238連結では売上高4,703,286・経常損失346,062・当期純損失493,723千円
2008年3月期6,204,92885,171△619,786連結では売上高6,478,353・経常損失25,135・当期純損失632,876千円
2009年3月期7,106,794349,312374,126子会社を全て手放し、第10期以降は連結財務諸表を作成していない
2010年3月期7,812,463723,854567,098営業活動によるキャッシュ・フローが2,021,514千円へ伸びた期
2011年3月期8,584,3891,194,601572,818
2012年3月期9,164,627808,411556,507
2013年3月期9,482,400812,600479,019
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第7期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の経営指標等)
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第7期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の経営指標等)

さくらインターネット:純資産額と総資産額の推移(提出会社)

純資産額(千円)純資産額率(%)
さくらインターネット:純資産額と総資産額の推移(提出会社)
(千円)純資産額総資産額備考
2003年3月期164,274588,715
2004年3月期314,820830,561
2005年3月期371,2551,001,013
2006年3月期815,3432,596,501上場に伴う公募増資で資本金が366,500千円へ増えた期
2007年3月期519,1035,078,947子会社と設備の取得で総資産が2倍になる一方、純資産は減った
2008年3月期932,0555,097,779中間期末の債務超過を、2月の第三者割当増資で期末までに解消した
2009年3月期1,313,5924,791,589
2010年3月期1,755,0465,077,518
2011年3月期2,284,1079,809,1152010年11月に石狩市の土地を取得し、2011年2月にデータセンターの建設を決議した期
2012年3月期2,738,59811,141,020
2013年3月期3,174,20412,513,149
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第7期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の経営指標等)
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第7期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の経営指標等)

債務超過とその解消の条件

債務超過とその解消の条件
科目概要備考
債務超過の発生2008年3月期の中間決算多額の特別損失の計上に伴い株主資本が大幅に減少し、中間期末に債務超過の状態になった
減損損失367,242千円(連結)専用実施権210,753、ソフトウェア126,369、リース資産減損勘定18,818千円ほか
減損の対象コンテンツ配信事業のオンラインゲーム収益力が低下し将来回復の見込みも乏しいとして、関連する固定資産を全額減損した
連結特別損失の合計774,882千円減損損失のほかライセンス契約改定違約金250,028、投資有価証券評価損65,483千円
事業の一部売却2007年12月1日/譲渡損益263,473千円ノンコアのインターネット接続事業をDOMIRUへ営業譲渡。受取対価は現金等の財産のみ
子会社の整理2007年7月〜2008年3月に4社イクスフェイズ、カイロス、さくらクリエイティブ、SAKURA Internet (USA)の全株式を譲渡
第三者割当増資の決議2008年1月25日の取締役会割当先は双日。この増資により当社は双日の関連会社となった
払込期日と発行株式数2008年2月13日/12,718株発行済株式総数は32,270株から44,988株へ増えた
発行価額と払込総額1株78千円/999,990千円資本金を500,008千円、資本準備金を499,982千円それぞれ増加させた
双日の所有比率発行済株式の28.26%筆頭株主となった。関係会社の状況に載る議決権の直接所有割合は28.3%
欠損填補資本準備金729,232千円を減少2008年6月25日の定時株主総会で決議。当期の配当は見送った
連結従業員数153名→141名2007年3月期末から2008年3月期末。臨時雇用者は63名から78名へ増えた
経営陣の交代2007年11月笹田亮社長が辞任し、取締役最高執行責任者の田中邦裕氏が社長兼最高経営責任者に就任
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第9期(2008年3月期)【対処すべき課題】【発行済株式総数、資本金等の推移】【連結損益計算書関係】【企業結合等関係】【役員の状況】
出所:さくらインターネット 有価証券報告書 第9期(2008年3月期)【対処すべき課題】【発行済株式総数、資本金等の推移】【連結損益計算書関係】【企業結合等関係】【役員の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • さくらインターネット お知らせ「社長就任のご挨拶」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第9期(2008年3月期)【対処すべき課題】」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第9期(2008年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第9期(2008年3月期)【連結損益計算書関係】」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第9期(2008年3月期)【企業結合等関係】」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第9期(2008年3月期)【沿革】【役員の状況】」
  • さくらインターネット 有価証券報告書「第7期(2006年3月期)・第14期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

次に読む決断

免責事項およびポリシー