筆者の見解
だれの経営で立て直すか、という問い
この判断の核心は、石油危機という外部要因への対応にとどまらず、21年におよぶ自らの経営そのものへ川崎千春氏が向き合った点にあるだろう。京成は国鉄と並んで走らざるを得ないという構造上の不利を抱えており、それを補う手立てとして副業へ進出した。地下鉄への乗り入れやオリエンタルランドの設立以降、成長を支えたのはこの副業である。皮肉なことに、石油危機でもっとも深い打撃を受けたのも、手を付けるのが遅れたその副業であった。同じ人物が20年にわたって社長を務めるのは筋が通らない、と川崎氏本人が口にしたところにも、経営者としての率直さが表れている。
もっとも、この危機からの回復は速いものではなかった。空港線は開通後も空港ビルへの乗り入れが実現せず、経常損益は1985年3月期まで赤字が続いた。副業を武器にしてきた私鉄経営が、その副業ゆえに大きな打撃を受け、立て直しに長い年月を要した経緯は、本業だけでは立ち行かない構造と、副業に頼ることの代償という、私鉄経営に特有の緊張を映しているといえる。京成が空港アクセス輸送で改めて競争力を試されるのは、この10年余りのちのことである。
Yutaka Sugiura, 2026年7月