2度の希望退職と新経営計画(2017年・三陽商会の決断)

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論点 主力喪失後の再建をどう進めるか
三陽商会:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
Sanyo Innovation Plan 2017 の始動と、2年で修正に追い込まれた定量計画

何をなぜ決めたか:Sanyo Innovation Plan 2017 の始動と、2年で修正に追い込まれた定量計画

概要

2017年2月14日、3ヵ年の新経営計画「Sanyo Innovation Plan 2017」を発表した。2018年度の営業黒字化と2019年度の営業利益20億円を掲げ、不採算ブランド・売場から退いて直営店とEコマースへ資源を移す構えである。

計画は同時に、中期の姿として売上高800億円、営業利益率5%、ROE5%を置いた。前の期にあたる2016年12月期は売上高676億円、営業損失84億円で、過去最大の赤字を記録したところであった。

背景

バーバリーのライセンス契約が2015年6月末で満了し、2016年12月期の売上高は2014年12月期の1,110億円から4割減った。杉浦昌彦社長のもとで2016年6月24日に希望退職の募集を決議し、249名が同年12月31日付で退職、特別退職金と再就職支援の費用約26億円を特別損失に計上している。

2017年1月1日に岩田功氏が社長に就任し、2月の新経営計画はその最初の仕事となった。

内容

計画は営業販売改革、業務改革、MD改革、既存事業強化、Eコマース・デジタル、新規事業開発の6本立てで、百貨店の売上構成比を2016年度の69%から2019年度に63%へ下げる想定を置いた。不採算ブランド・売場の撤退には聖域を設けなかった。

2018年7月には臨時雇用者約800名を正社員化して店頭の人員を自社に抱え直す一方、同年9月21日に2度目の希望退職を決議し、247名が12月31日付で退職、約22億円を特別損失に計上した。10月30日には計画2年目の定量計画を修正している。

含意

営業損益は2017年12月期が19億円の損失、2018年12月期が22億円の損失で、掲げた2018年度の黒字化には届かなかった。中期に置いた売上高800億円に対し、2018年12月期の実績は591億円である。

削減は人と売場に及んだが、収益の傾きは戻らなかった。2019年10月に岩田功社長の退任が決まり、立て直しの課題はそのまま次の体制へ渡った。

いつ何が起きたか 8件
考察:削ったものと、抱え直したもの
考察

考察:削ったものと、抱え直したもの

6本立ての施策それ自体が的を外していたわけではない。読み替えるべきは、この計画が最終年度に売上高650億円という「戻る」形を描いたことのほうだろう。百貨店の構成比を6ポイント下げる程度の組み替えは、卸売の商習慣そのものには手が届かない。2度の希望退職で合わせて496名が去りながら営業赤字が続いたのは、削ったのが人と売場であって、値引きを前提にした商いの作法ではなかったからなのだろう。

もっとも、この3年が無駄に費やされたとは言い切れない。2018年7月の臨時雇用者約800名の正社員化は、削減の途中で店頭の人を自社の側へ抱え直す選択で、削ることと抱えることを同時に進める不整合をあえて引き受けたものであった。この不整合は、次の体制が粗利率という一本の物差しを立てるまで解けない。岩田功元社長の3年は、処方を並べても測り方を替えなければ収益は戻らないことを、身をもって示した期間だったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

三陽商会:売上高・販管費と営業損益の推移

販売費及び一般管理費(百万円)販売費及び一般管理費以外(百万円)
三陽商会:売上高・販管費と営業損益の推移
(百万円) 売上高販売費及び一般管理費営業利益 備考
2012年12月期 107,63045,9385,855
2013年12月期 106,35044,5047,053
2014年12月期 110,99643,40910,213
2015年12月期 97,41541,4306,577
2016年12月期 67,61136,660△8,430 1度目の希望退職249名。事業構造改善費用約26億円は特別損失で販管費には入らない
2017年12月期 62,54931,057△1,907 2月に新経営計画を公表。販管費は前期から56億円減ったが営業損失が残った
2018年12月期 59,09030,759△2,176 2度目の希望退職247名。7月に臨時雇用者約800名を正社員化
2020年2月期 68,86834,810△2,875 決算期変更により2019年1月から2020年2月までの14ヶ月。4期連続の営業損失
2021年2月期 37,93923,429△8,913
2022年2月期 38,64219,605△1,058
2023年2月期 58,27333,8742,235 収益認識会計基準を適用し販売手数料が販管費へ移った。前期と販管費の範囲が違う
出所:三陽商会 有価証券報告書 第70〜80期(連結損益計算書)
出所:三陽商会 有価証券報告書 第70〜80期(連結損益計算書)

三陽商会:従業員数の推移

三陽商会:従業員数の推移
(名) 連結従業員数臨時従業員数 備考
2012年12月期 1,729−
2013年12月期 1,400−
2014年12月期 1,351−
2015年12月期 1,3284,199
2016年12月期 1,2903,924 249名の希望退職者を含む。退職日が期末のため当期の人員には残っている
2017年12月期 9913,274 前期末の希望退職が効き、連結従業員数は1年で299名減った
2018年12月期 1,8042,154 7月より臨時雇用者約800名を正社員化。増加はこの振り替えによる
2020年2月期 1,6502,145
2021年2月期 1,5721,923
2022年2月期 1,2351,589
2023年2月期 1,1791,454
出所:三陽商会 有価証券報告書 第70〜80期【従業員の状況】
出所:三陽商会 有価証券報告書 第70〜80期【従業員の状況】

構造改革の条件

構造改革の条件
科目 概要 備考
新経営計画の公表日 2017年2月14日 計画名は「Sanyo Innovation Plan 2017」。2017年度からの3ヵ年
計画が掲げた黒字化の時期 2018年度 2017年度は営業損失30億円(利益率▲4.8%)を織り込んでいた
計画の最終年度目標 売上高650億円、営業利益20億円 2019年度。営業利益率3.1%。この20億円を必達目標と位置づけた
中期に掲げた姿 売上高800億円、営業利益率5%、ROE5% 3ヵ年計画のさらに先に置いた目標で、達成の期限は示していない
百貨店の売上構成比 2016年度69%から2019年度63%へ 直営店とEコマースへ構成を移す想定。撤退には聖域を設けない方針
1度目の希望退職の決議日 2016年6月24日 杉浦昌彦社長のもとでの決議。対象は販売職を除く従業員、募集人員250名程度
1度目の募集期間と退職日 2016年10月11日〜10月21日、退職日は12月31日 会社都合として扱い、所定の退職金に加えて特別退職金を支給
1度目の応募者数と費用 249名、約26億円 2016年12月期第4四半期に事業構造改善費用として特別損失に計上
2度目の希望退職の決議日 2018年9月21日 岩田功社長のもとでの決議。対象・募集人員とも1度目と同じ条件
2度目の募集期間と退職日 2018年10月29日〜11月26日、退職日は12月31日 大量退職に該当し、退職給付制度の一部終了に準じた処理を行った
2度目の応募者数と費用 247名、約22億円 同時に2018年12月期の通期業績予想を下方修正した
計画の修正 2018年10月30日 2年目の定量計画を修正し「今後の成長戦略について」を公表
出所:三陽商会「新経営計画について『Sanyo Innovation Plan 2017』」(2017年2月14日)、「希望退職者募集に関するお知らせ」(2016年6月24日・2018年9月21日)およびその結果開示
出所:三陽商会「新経営計画について『Sanyo Innovation Plan 2017』」(2017年2月14日)、「希望退職者募集に関するお知らせ」(2016年6月24日・2018年9月21日)およびその結果開示
参考文献

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