三陽商会 バーバリーライセンス喪失 ライセンス契約の終了と、後継ブランドへの売場の置き換え

更新:

時期 2014年5月
当時の社長 杉浦昌彦
論点 ライセンス依存モデルの終焉と自社企画ブランドへの転換
何をなぜ決めたか
概要

2014年5月19日、ライセンサーである英国バーバリー・リミテッドおよびバーバリー・ジャパン、共同ライセンシーの三井物産と協議し、バーバリーロンドンの婦人服ならびに紳士服を2015年春夏シーズンをもって終えることで合意した。2000年7月1日に始まった契約は2015年6月30日で満了し、子供服はバーバリーグループへ移管、ブルーレーベルとブラックレーベルはバーバリーの名称を外して新たな契約で残った。

同じ日、失う売上をどう埋めるかを描いた中期5ヵ年経営計画(2014年〜2018年)を発表している。

背景

1965年のバーバリーコートの日本における輸入販売を契機に、1970年に日本国内でのアパレル商品の企画・製造・販売についてライセンスの供与を受けた。1996年にバーバリー・ブルーレーベル、1998年にバーバリー・ブラックレーベルを立ち上げ、約半世紀にわたって事業を広げてきた。

ライセンスブランドの総売上高はグループ売上高の過半を占めており、契約更改時の条件によっては経営成績に影響が及ぶことを、自ら事業等のリスクに挙げていた。契約の帰趨を決めるのはライセンサーの側であった。

内容

合意は3つに分かれた。バーバリーロンドンの婦人服・紳士服は2015年春夏で事業終了、グローバルコレクションを扱っていた子供服は同シーズン終了後にバーバリーグループへ移管、ブルーレーベルとブラックレーベルは2015年秋冬シーズンからバーバリーの名称を付さず新たなサブブランドを付して継続する。企画・製造・マーケティング・販売は従来と同じ体制で引き続き三陽商会が担った。

中期5ヵ年経営計画はマッキントッシュ ロンドンをバーバリーロンドン事業の後継と位置づけ、基幹3事業の2018年度前売額をマッキントッシュ300億円、ポール・スチュアート200億円、エポカ150億円と置いた。

含意

後継ブランドはバーバリーの規模を短期には代替できなかった。2015年12月期の売上高は974億円と前年から12.2%減り、契約満了の翌期にあたる2016年12月期は売上高676億円、営業損失84億円、当期純損失114億円と過去最大の赤字に沈んだ。

2018年度に売上高1,000億円・営業利益50億円を置いた計画に対し、実績は売上高591億円・営業損失22億円である。外部の判断で収益基盤を失った企業が、まず規模の代替に向かった初動の限界がここに表れた。

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筆者の見解
筆者の見解

失うことより、埋め合わせることの難しさ

この判断の核心は、三陽商会が自ら望んで下したものではない点にある。契約の帰趨を決めるのはライセンサーの側であり、会社に残された選択は、失う事実そのものではなく、失ったあとの売場をどう埋めるかにあった。畳むのでなく後継ブランドで置き換える道を選んだのは、百貨店ルートという販売網と1,100億円という事業規模を保とうとする、経営として自然な発想だったといえる。中期5ヵ年経営計画が2018年度に売上1,000億円を置いたのは、その発想を数字にしたものだろう。

もっとも、ブランドの力は売場の数では代替できなかった。バーバリーの看板がもたらしていた集客と単価を、立ち上げたばかりの後継ブランドが短期に引き受けるのは難しく、規模の維持をめざした初動は、かえって赤字の深さを増した面がある。のちに再建を担った経営陣は、規模への執着そのものを手放すことで黒字化へたどり着く。外部の判断で収益基盤を失った企業がまず規模の代替へ走ったこの局面は、失ったものの大きさと、それを埋め合わせることの難しさを、同時に映している。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
ライセンス契約終了の条件

ライセンス契約終了の条件

科目 概要 備考
合意の公表日 2014年5月19日 同日に中期5ヵ年経営計画(2014年〜2018年)を発表
契約の相手方 英国バーバリー・リミテッド、バーバリー・ジャパン 共同ライセンシーは三井物産。3者との協議による合意
契約期間 2000年7月1日から2015年6月30日まで 商標使用権の許諾、技術情報の提供、製造権および販売権の許諾
終了するブランド バーバリーロンドンの婦人服ならびに紳士服 2015年春夏シーズンをもって事業を終了
移管するブランド バーバリー子供服 グローバルコレクションを販売。2015年春夏シーズン終了後にバーバリーグループへ移管
名称を変えて残すブランド ブルーレーベル、ブラックレーベル 2015年秋冬シーズンよりバーバリーの名称を付さず、新たなサブブランドを付して継続
継続分の新契約期間 2015年7月1日から2018年6月30日まで ブルーレーベル・クレストブリッジ、ブラックレーベル・クレストブリッジとして展開
継続分の運営体制 企画・製造・マーケティング・販売を三陽商会が担当 これまでと同じ体制を維持する条件で新たなライセンス契約を締結
ライセンスブランドの売上比率 グループ売上高の過半 ブランド別の売上内訳は開示されていない
当期業績への影響 軽微 2014年12月期の業績予想の修正は行っていない
取引の始まり 1965年 バーバリーコートの輸入販売。1970年にアパレル商品のライセンス供与を受けた

出所:三陽商会「バーバリーのライセンス契約について」(2014年5月19日)、有価証券報告書 第71期・第72期【経営上の重要な契約等】

売上高と営業利益の推移

三陽商会:売上高と営業利益の推移

(百万円) 売上高売上総利益営業利益 備考
2009年12月期 114,23148,731△5,208
2010年12月期 112,05752,3902,446
2011年12月期 104,61449,6282,084
2012年12月期 107,63051,7935,855
2013年12月期 106,35051,5587,053
2014年12月期 110,99653,62310,213 5月にライセンス契約の終了で合意。売上高・営業利益ともこの期が最高
2015年12月期 97,41548,0076,577 6月30日で契約満了。秋冬から後継ブランドを一斉に立ち上げた
2016年12月期 67,61128,230△8,430 契約満了後の初めての通期。在庫評価損16億円を計上
2017年12月期 62,54929,149△1,907
2018年12月期 59,09028,583△2,176
2020年2月期 68,86831,934△2,875 決算期変更により2019年1月から2020年2月までの14ヶ月。前後の期と長さが違う
売上高と売上総利益
売上総利益(百万円)売上原価(百万円)

出所:三陽商会 有価証券報告書 第67〜77期(連結損益計算書)

中期5ヵ年経営計画の数値計画と実績

三陽商会:中期5ヵ年経営計画の数値計画と実績

(百万円) 売上高(計画)売上高(実績)営業利益(計画)営業利益(実績) 備考
2013年 −106,350−7,053 計画の起点に置かれた実績値
2014年 107,000110,9967,20010,213
2015年 96,00097,4152006,577 契約満了の年。計画は営業利益が2億円まで減少する想定だった
2016年 85,00067,611△2,000△8,430 計画は赤字を織り込んでいたが、売上・損失とも計画から大きく外れた
2017年 90,00062,5492,000△1,907
2018年 100,00059,0905,000△2,176 最終年度は売上1,000億円・営業利益50億円の想定。実績は591億円・22億円の損失

出所:三陽商会「中期5ヵ年経営計画(2014年〜2018年)」(2014年5月19日) / 三陽商会 有価証券報告書 第71〜76期(連結損益計算書)

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参考文献
出典・参考

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