法的整理
法的整理は長く、債務を清算して会社を終わらせる手続きだった。戦後の出発点も清算型の手続きである。戦時補償の打ち切りで企業が債務超過に陥り、企業再建整備法が旧勘定と新勘定を分けて旧債務を切り離した。法人は解散し、事業だけが新会社へ移った。沖電気工業は旧法人を解散して第二会社へ事業を承継した。目的は債権者への配当の確定にあった。
会社更生法は、法人を解散して事業だけを移す清算型の手続きとは逆に、会社そのものを存続させる。権利関係を凍結し、計画で債務を圧縮する。前提に置かれたのは事業の継続である。ブルドックソースは佐藤和雄氏が法的整理で立て直し、大王製紙は三島工場の操業を止めずに手続きへ入った。ただし手続きは重い。経営陣は退いて管財人に代わり、計画の認可までに年単位の時間がかかる。取引先は申請を知った時点で与信を絞るため、申請そのものが事業価値を毀損する。行き詰まった企業が私的な調整に依存したのは、経営陣の退任と年単位の期間という負担のためである。
1997年の金融危機では対応が分かれた。三洋証券は会社更生法を申請し、山一證券は法的再建を選ばず自主廃業に踏み切った。顧客の資産を預かる業種では、手続きの期間そのものが事業を成り立たなくする。その後、2000年施行の民事再生法が申請の敷居を下げた。経営陣が残ったまま申請でき、手続き開始までが速い。そごうは私的整理の頓挫を経て負債1兆8,700億円の処理へ進んだ。
申請の意味も変わった。会社を終わらせる最後の手段ではなく、事業譲渡の手順の一部になった。以後は申請と同時に譲渡先が決まるようになる。エルピーダメモリは会社更生法を申請して米マイクロンへ、タカタは民事再生法でキー・セイフティーへ事業を全面承継させた。どちらも設備・技術者・供給責任が揃ってはじめて価値が付く事業であり、手続きが長引けば引受先そのものを失う。
つまり法的整理の目的は、債権者への配当から事業の引受先探しへ移っている。配当の多寡は事業の売却価格で決まり、売却価格は手続きに入る前に買い手が決まっているかどうかで決まる。申立ての準備そのものが、債権者へ返る額をあらかじめ決めている。
財務諸表のどこを見るか
法的整理は申請の前後で有報の読み方が変わる。申請前は継続企業の前提に関する重要事象等の記載と監査報告書の意見、資金繰りの裏づけとして一年内返済予定の長期借入金が流動負債へ振り替わる動きを見る。申請後は更生債権・再生債権への計上替えと、更生計画の認可に伴う債務免除益、資産の再評価による評価損の額を確かめる。事業を他社へ渡した場合は事業譲渡益と譲渡した資産・負債の内訳が特別損益と注記に出るので、承継の範囲はそこで数えられる。