1兆円を返し終えたところで、ネットDERは18.6倍から20.8倍へ悪化していた。返済が足りなかったのではなく、返す原資を作るたびに株主資本のほうも削られる構造にあった。安武史郎氏がこの3年で残したものを一つ選ぶなら、負債の額よりも、役員任期を1年に縮め、社外の3氏に社長の進退を勧告させる仕組みのほうであろう。派閥抗争が繰り返され、賃金を2割削減してなお動かねばならない会社で、まず手を入れたのが意思決定の側だった点に、この再建の性格がうかがえる。
もっとも、その仕組みが会社を救ったわけではない。本体には偶発債務7744億円が残り、ITXも鉄鋼も天然ガスも、切り離した先で伸びるかどうかは相手方の手に移っている。2003年4月に上場を終えるまで日商岩井が答えられなかったのは、負債を1兆円減らしたあとに何で稼ぐのかという一点であったといえる。