MTG 大田嘉仁氏の会長招聘 不適切な会計処理を受けた取締役会の刷新と、京セラ出身の会長の招聘

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時期 2019年9月
当時の社長 松下剛
論点 不適切な会計処理後の統治の立て直し
何をなぜ決めたか
概要

2019年、連結子会社のMTG上海と中国向け越境EC事業で不適切な営業取引行為と会計処理が行われていたことが第三者委員会の調査で判明した。MTGは過年度の決算を訂正し、12月の定時株主総会で取締役会を刷新して会計監査人も入れ替え、9月には京セラ出身の大田嘉仁氏を会長に迎えた。松下剛社長は辞任せず、 『私の責任の取り方は経営者として業績を回復させていくことにある』 と、業績の回復を自らの責任の取り方に挙げた。

背景

2018年7月の上場から一年で業績が崩れた。中国電子商取引法の施行で韓国と香港のインバウンド需要が大きく減り、香港での継続したデモ活動と韓国国内の日本製品不買運動が重なって、グローバル事業の売上高は前期比69.1%減の6,136百万円、経常損失は5,796百万円となった。2019年9月期は売上高36,046百万円、営業損失14,421百万円、親会社株主に帰属する当期純損失26,207百万円で、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在した。

内容

第三者委員会の調査報告書を2019年7月11日に受領し、翌12日に第23期の有価証券報告書と内部統制報告書、第24期第1四半期報告書の訂正報告書を提出した。財務報告に係る内部統制は有効でない。7月18日の取締役会で再発防止策を決議し、東京証券取引所へ改善報告書を提出した。9月に大田嘉仁氏が会長へ就任し、12月25日の定時株主総会で取締役10名のうち社外4名とする取締役会へ改め、監査等委員会を社外取締役3名で構成した。会計監査人は有限責任監査法人トーマツからPwC京都監査法人へ替わった。

含意

創業から一人で社長を務めてきた人物が席にとどまったまま、統治の担保を社外から調達した点にこの判断の特徴がある。制度の側では目標値の策定・進捗管理・修正の各過程が見直され、卸先が消費者へ販売した数量と売上を示すセルスルー情報が、本社管理部門の最重要指標に据えられた。2021年1月1日には経営の指針が光フィロソフィとして新たに策定されている。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

速さを疑うところから始めた再建

赤字を知らないまま上場した会社だった。売上高は2014年9月期の15,317百万円から2018年9月期の58,377百万円へ4年で3.8倍に伸び、その速さのまま最初の通期を迎えている。再発防止策の筆頭に挙がったのが人の入れ替えではなく、現場の実態を軽視した過度な目標値の設定を防ぐ管理体制であり、策定の裏付けとなる資料と、卸先から消費者へ渡った実数を示すセルスルー情報を本社管理部門が検証する仕組みだったのは、数字が現場へ降りる経路そのものを作り替えなければ同じことが起きると見たからだろう。

もっとも、刷新の対象にならなかったものもある。松下剛社長は責任の取り方を業績の回復に置いて席にとどまり、大田嘉仁会長は役員から課長までの研修を担った。統治の担保を社外から招いた一人に負わせた形であり、その効き目を数字だけで切り分けることは難しい。2020年9月期の営業利益1,219百万円は販管費39億円の削減に支えられたもので、不正の舞台となったグローバル事業の売上高は2024年9月期になっても1,666百万円と、赤字が続いている。立て直したのは統治であって、中国事業ではなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

業績の推移
経緯と対応

経緯と対応

科目 概要 備考
第三者委員会の調査報告書 2019年7月11日 連結子会社のMTG上海で会計監査人への虚偽の説明と不適切な営業取引行為が行われていた
不適切な会計処理の範囲 MTG上海と中国向け越境EC グローバルブランド事業本部が扱う中国向け越境EC事業の取引でも会計処理が不適切だった
過年度決算の訂正 2019年7月12日 第23期の有価証券報告書と内部統制報告書、第24期第1四半期報告書の訂正報告書を提出
財務報告に係る内部統制 有効でない 第23期の内部統制報告書の訂正報告書に記載した
再発防止策の決議 2019年7月18日 取締役会で決議。指摘と提言を踏まえ東京証券取引所へ改善報告書を提出した
会長の招聘 2019年9月 大田嘉仁氏。京セラ出身で日本航空の管財人代理を務め、2018年4月から当社顧問
取締役会長への就任 2019年12月25日 定時株主総会で取締役に選任。任期は1年以内に終了する事業年度の定時株主総会まで
取締役会の構成 10名のうち社外4名 髙橋昭夫氏、大畠豊氏、井関新吾氏、清水綾子氏が社外取締役。女性は1名
監査等委員会 社外取締役3名 委員長は大畠豊氏、委員は井関新吾氏と清水綾子氏。任期は2年
会計監査人の交代 PwC京都監査法人 有限責任監査法人トーマツが再発防止策の実行途上で監査工数の増加を理由に更新を辞退
目標値の管理 セルスルー情報を最重要指標 策定・進捗管理・修正の各過程を見直し、本社管理部門が実需との整合を検証する

出所:MTG 有価証券報告書 第24期(2019年9月期)【事業等のリスク】【対処すべき課題】【役員の状況】・第25期(2020年9月期)【会計監査人の異動】

業績の推移

MTG:業績の推移

(百万円) 売上高経常損益親会社株主に帰属する当期純損益 備考
2016年9月期 29,4803,4942,421
2017年9月期 45,3256,1204,306
2018年9月期 58,3776,9364,002 2018年7月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場
2019年9月期 36,046△14,698△26,207 大田嘉仁氏が会長に就任。営業損失14,421百万円。継続企業の前提に重要事象
2020年9月期 34,8451,6721,525 営業利益1,219百万円で黒字化し、継続企業の前提に関する重要事象は解消
2021年9月期 42,7994,2135,592
2022年9月期 48,9843,7242,685
2023年9月期 60,1544,1681,984
2024年9月期 71,8653,6762,279
売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常損益率(%)

出所:MTG 有価証券報告書 第21〜29期(【主要な経営指標等の推移】連結経営指標等)

不正の舞台となったグローバル事業の推移

MTG:不正の舞台となったグローバル事業の推移

(百万円) グローバル事業売上高グローバル事業経常損益 備考
2017年9月期 11,6671,670
2018年9月期 19,8392,515
2019年9月期 6,136△5,796 売上高は前期比69.1%減。報告セグメントの区分を当期より変更している
2020年9月期 3,256△809
2021年9月期 3,076△558
2022年9月期 1,887△604
2023年9月期 1,290△1,050
2024年9月期 1,666△615
グローバル事業の売上高と経常損益率
グローバル事業売上高(百万円)グローバル事業経常損益率(%)

出所:MTG 有価証券報告書 第21〜29期(【セグメント情報等】・経営成績等の状況の概要)

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参考文献
出典・参考

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