高浜町元助役からの金品受領(2019年・関西電力の決断)

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論点 金品受領の責任を経営陣がどう取るか
関西電力:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
第三者委員会の設置と指名委員会等設置会社への移行

何をなぜ決めたか:第三者委員会の設置と指名委員会等設置会社への移行

概要

2019年9月、役員らが高浜原子力発電所を擁する福井県高浜町の元助役・森山栄治氏から金品を受け取っていた問題が明るみに出た。10月には客観的かつ徹底的な調査を行うため、中立・公正な社外委員のみで構成する第三者委員会を設置し、同月9日には取締役2名が辞任した。

2020年3月14日に調査報告書を受領して同日に経営刷新本部を設置、同月29日に経済産業省から電気事業法に基づく業務改善命令を受け、30日に業務改善計画を経済産業大臣へ提出した。

背景

第三者委員会が挙げた根本的な原因は、「ユーザー目線」の欠落と、コンプライアンスよりも業績や事業活動を優先する内向きの企業体質であった。ガバナンス、コンプライアンス、工事発注、役員退任後の嘱託等の報酬と、指摘は多岐にわたった。

前年の2018年9月には金品受領に関する社内調査報告書がまとまっていたが、取締役会にも株主総会にも報告されないまま伏せられていた。問題の大半は原子力事業本部でなされていた。

内容

業務改善計画は三つの柱からなる。コンプライアンス体制の抜本的強化として、社外の弁護士を委員長とし社外有識者を過半数とする5名のコンプライアンス委員会を取締役会直下に新設した。工事の発注・契約では、新設した調達等審査委員会が発注・契約手続きと寄付金・協力金の拠出を外部の専門家の視点で事後審査する仕組みを設けた。

三つめが執行と監督を明確に分離する指名委員会等設置会社への移行である。役員退任後の嘱託等の報酬については正当性を認めることは困難との指摘を受け、自主返還を要請して全額の返還が完了した。

含意

2020年6月25日の第96回定時株主総会で移行が承認され、取締役13名のうち8名を独立社外取締役が占める体制となった。取締役会長と議長は独立社外取締役が務め、指名委員会と報酬委員会は独立社外取締役のみ、監査委員会も6名中4名が社外取締役である。前経団連会長の榊原定征氏が取締役会長と指名委員会委員長に就任した。

移行前の2019年3月期は取締役13名のうち社外取締役が4名にとどまっており、監督の外部化はこの問題を境に一気に進んだ。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 13名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 八木誠:会長
  • 岩根茂樹:社長
  • 土井義宏:副社長執行役員
  • 森本孝:副社長執行役員
  • 彌園豊一:副社長執行役員
  • 稲田浩二:副社長執行役員
  • 森中郁雄:副社長執行役員
  • 島本恭次:常務執行役員
  • 松村孝夫:常務執行役員
  • 井上礼之:取締役
  • 沖原隆宗:取締役
  • 小林哲也:取締役
  • 槇村久子:取締役
考察:制度で断てるものと、断てないもの
考察

考察:制度で断てるものと、断てないもの

この問題が示したのは、金品を受け取った個々の役員の倫理にとどまらず、それを長く伏せてきた組織の構えであった。前年に社内調査がまとまりながら取締役会にも株主総会にも上がらなかった——不祥事そのものより、それを内部で処理できると考えた統治の閉鎖性のほうに、問題の重さがあったとみられる。根本原因として挙げられた「ユーザー目線」の欠落も、業績を優先する内向きの体質も、結局は外の目が届かない構造の言い換えであった。経営陣の退任と第三者委員会の設置は当然の後始末であり、指名委員会等設置会社への移行は、外部の目を制度として常設する点で、閉じた意思決定への一つの歯止めになりうる。

ただし、機関設計を替えれば統治が働くとまでは言い切れない。関電の問題の根は、地域独占のもとで電気料金として集めた資金が原発の立地地域へ流れ、そこで築かれた関係が返礼を生むという、公益事業の構造そのものにあった。社外取締役を過半に増やしても、その構造を現場で見抜き、声を上げる意思がなければ"お飾り"に終わりかねない。制度で断てるものと、風土として残るもの——関電のガバナンス再建がどこまで実質を伴うかは、その後の情報開示と社外の目の使い方に懸かっていると推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

関西電力:取締役会の構成

取締役(名)うち社外取締役率(%)
関西電力:取締役会の構成
(名) 取締役うち社外取締役 備考
2015年3月期 163
2016年3月期 163
2017年3月期 143
2018年3月期 143
2019年3月期 134 監査役会設置会社。監査役は7名で、うち4名が社外監査役
2020年3月期 138 2020年6月25日に指名委員会等設置会社へ移行した後の構成。社外取締役が取締役会長
2021年3月期 148
2022年3月期 138
2023年3月期 138
2024年3月期 138
2025年3月期 138
出所:関西電力 有価証券報告書 第91〜101期【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】(各期の提出日現在の構成)
出所:関西電力 有価証券報告書 第91〜101期【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】(各期の提出日現在の構成)

関西電力:連結業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
関西電力:連結業績の推移
(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2015年3月期 3,406,030△113,052△148,375 原子力発電所の停止が続き、火力燃料費の増加で3期連続の経常赤字
2016年3月期 3,245,906241,651140,800
2017年3月期 3,011,337196,125140,789
2018年3月期 3,133,632217,104151,880
2019年3月期 3,307,661203,636115,077
2020年3月期 3,184,259211,541130,002 問題の公表後も業績予想は据え置かれ、経常利益は前期比3.9%の増益となった
2021年3月期 3,092,398153,850108,978
2022年3月期 2,851,894135,95585,835
2023年3月期 3,951,884△6,66617,679 燃料価格の高騰と市場価格の上昇で経常赤字
2024年3月期 4,059,378765,970441,870
2025年3月期 4,337,111531,686420,364
出所:関西電力 有価証券報告書 第91〜101期(連結損益計算書・日本基準)
出所:関西電力 有価証券報告書 第91〜101期(連結損益計算書・日本基準)

経緯と対応

経緯と対応
科目 概要 備考
問題の公表 2019年9月 役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題が明るみに出た
第三者委員会の設置 2019年10月 客観的かつ徹底的な調査を行うため、中立・公正な社外委員のみで構成した
取締役の辞任 2019年10月9日に2名 2020年3月14日にさらに1名、同年3月31日に1名が辞任した
調査報告書の受領 2020年3月14日 同日に経営刷新本部を設置し、再発防止対策を取りまとめた
指摘された根本原因 「ユーザー目線」の欠落と内向きの企業体質 コンプライアンスよりも業績や事業活動を優先する体質にあると結論づけられた
業務改善命令 2020年3月29日 経済産業省から電気事業法に基づいて受領した
業務改善計画の提出 2020年3月30日 経済産業大臣へ提出し、三つの柱からなる再発防止策を掲げた
再発防止策① コンプライアンス体制の抜本的強化 社外の弁護士を委員長とし社外有識者を過半数とする5名の委員会を取締役会直下に新設
再発防止策② 工事の発注・契約に係る業務運営体制の確立 新設した調達等審査委員会が発注・契約手続きと寄付金・協力金の拠出を事後審査する
再発防止策③ 新たな経営管理体制の構築 執行と監督を明確に分離し、指名委員会等設置会社へ移行する
機関設計の変更 2020年6月25日 第96回定時株主総会の承認を得て指名委員会等設置会社へ移行した
移行後の取締役会 取締役13名のうち独立社外取締役8名 独立社外取締役が議長を務め、社内取締役3名と監査を行う社内取締役2名を加えた構成
法定三委員会 委員長はいずれも社外取締役 指名委員会と報酬委員会は独立社外取締役のみ、監査委員会は6名中4名が社外取締役
嘱託等の報酬の返還 全額の返還が完了 正当性を認めることは困難との指摘を受け、退任役員に自主返還を要請した
旧役員への訴訟 損害賠償請求訴訟を提起 金品受取り問題と役員退任後の嘱託等の報酬に関する問題をめぐるもの
業績予想と配当 据え置き 問題の公表後も2019年度の業績予想と1株当たり50円の配当予想を見直さなかった
出所:関西電力 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第97期(2021年3月期)【監査の状況】、2019年度第2四半期 会社説明会 主なQA
出所:関西電力 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【コーポレート・ガバナンスの状況等】・第97期(2021年3月期)【監査の状況】、2019年度第2四半期 会社説明会 主なQA
当時の取締役 13名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 八木誠:会長
  • 岩根茂樹:社長
  • 土井義宏:副社長執行役員
  • 森本孝:副社長執行役員
  • 彌園豊一:副社長執行役員
  • 稲田浩二:副社長執行役員
  • 森中郁雄:副社長執行役員
  • 島本恭次:常務執行役員
  • 松村孝夫:常務執行役員
  • 井上礼之:取締役
  • 沖原隆宗:取締役
  • 小林哲也:取締役
  • 槇村久子:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • 関西電力「金品受取り問題に関する第三者委員会からの調査報告書の受領について」(2020年3月14日)
  • 関西電力「電気事業法に基づく経済産業大臣からの業務改善命令の受領について」(2020年3月)
  • 関西電力「指名委員会等設置会社への移行と本店組織の一部改正について」(2020年4月28日)
  • 関西電力「再発防止に向けた業務改善計画について」
  • 関西電力 決算説明会質疑応答「2019年度 第2四半期 会社説明会 主なQA」
  • 関西電力 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 関西電力 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【事業等のリスク】」
  • 関西電力 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 関西電力 有価証券報告書「第97期(2021年3月期)【監査の状況】」

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