NIPPO談合と親子上場の解消(2021年・ENEOS HDの決断)

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論点違反を重ねる上場子会社をどう統治するか
ENEOS HD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
舗装子会社の非公開化とゴールドマン・サックスとの共同保有株式会社NIPPOは、2016年2月29日、東日本高速道路東北支社が発注する東日本大震災の舗装災害復旧工事の入札をめぐり東京地方検察庁から起訴された。同年9月6日には公正取引委員会の排除措置命令と課徴金納付命令を、9月15日には東京地方裁判所の有罪判決を受けている。2018年3月28日には東京都などが発注した舗装工事で再び排除措置命令と課徴金納付命令を受け、6月7日には国土交通省から30日間の営業停止処分を命じられた。

何をなぜ決めたか:舗装子会社の非公開化とゴールドマン・サックスとの共同保有

概要

株式会社NIPPOは、2016年2月29日、東日本高速道路東北支社が発注する東日本大震災の舗装災害復旧工事の入札をめぐり東京地方検察庁から起訴された。同年9月6日には公正取引委員会の排除措置命令と課徴金納付命令を、9月15日には東京地方裁判所の有罪判決を受けている。2018年3月28日には東京都などが発注した舗装工事で再び排除措置命令と課徴金納付命令を受け、6月7日には国土交通省から30日間の営業停止処分を命じられた。

2021年9月7日、ゴールドマン・サックス系の2合同会社と基本契約書・株主間契約書を結び、NIPPOの非公開化に合意する。2022年3月29日に上場が廃止され、5月10日には保有株式の全てを譲渡した。

背景

グループでの独占禁止法違反はNIPPOが最初ではない。連結子会社のJX日鉱日石エネルギーは、1995年11月から1998年11月までの防衛庁に納入する石油製品の入札に関し、2008年1月16日付で総額21億5,601万円の課徴金納付命令を受けた。審判手続で争ったものの、2011年2月16日付で主張を退ける審決を受け、これに応諾して課徴金を納付している。

NIPPOの違反はその後も出てくる。2019年7月30日には、遅くとも2011年3月頃から2015年1月27日までの間、他の事業者8社と共同してアスファルト合材の販売価格について独占禁止法違反行為を行っていたと認定された。課徴金減免制度の適用が認められ、納付は命じられていない。

内容

処分のたびに掲げたのは指導の強化だった。2016年は独占禁止法遵守の周知徹底、2018年3月の処分を受けては社内規程・マニュアルの見直しと内部監査部門によるモニタリング、翌期にはそこへ法務部門と弁護士を加えている。2019年の認定後は、他の事業者と価格に関する情報交換を行わないことを監視する体制の構築と社内規程類の整備を、NIPPOの取締役会が決議した。

2021年9月の非公開化はこの延長線上にない。事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化の一環として、親子上場を解消した。上場廃止は2022年2月25日の臨時株主総会で決めた16,972,584株を1株とする株式併合によるもので、5月10日の自己株式取得に応じたことにより、ロードマップ・ホールディングスがNIPPOの議決権の100%を握った。

含意

NIPPOは連結から外れていない。ロードマップ・ホールディングスの普通株式50.1%とA種種類株式19.9%を保有し、両株式を合わせた出資比率は35.0%にとどまるが、議決権は過半を握る。IFRS第10号に基づき両社を連結範囲に含めており、その他の事業の売上高は非公開化の前後で5,000億円前後から動いていない。失ったのは持分ではなく、上場子会社という体裁だった。

グループの独占禁止法違反はその後も途切れていない。石油製品ほかセグメントの子会社である株式会社ENEOSウイングは、2025年5月と9月に公正取引委員会の立入検査を受け、2026年4月17日に刑事告発されて、同日、東京地方検察庁により起訴された。

いつ何が起きたか11件
当時の取締役16名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

考察:失ったのは持分ではなく体裁だった
考察

考察:失ったのは持分ではなく体裁だった

この非公開化は、違反を犯した子会社を切り離す処分ではなかった。NIPPO株式そのものは売却したが、ロードマップ・ホールディングスを通じた連結支配は残っている。変わったのは資本の所在ではなく、上場会社としてのNIPPOが消えたことだと読み替えたほうがよい。上場子会社には少数株主がいて、親会社の指導は市場の目と二重になる。3年のあいだに4度の処分を受けても止まらなかった以上、その二重性こそが統治の隙間だったと会社は見たのだろう。ゴールドマン・サックス・グループを共同保有者に迎えたのは、監督の担い手を不特定の株主から一人の投資家へ入れ替える選択でもあった。

もっとも、形を変えれば違反が止まるわけではない。ENEOSウイングは2025年5月と9月に立入検査を受け、2026年4月には刑事告発と起訴に至っている。防衛庁向けの入札、舗装工事、そして軽油の販売と、事業も年代も離れた三つの場面で同じ法律に触れた。処分のたびに持株会社が返してきたのは、引き続き指導するという同じ形の応答であり、それが18年にわたって並んでいることのほうが、個々の命令よりも重いのかもしれない。非公開化が効いたかどうかは、掲げられたNIPPOの再上場が現実の日程に乗るときに、初めて問われることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

ENEOS HD:その他の事業(NIPPOを含む)の業績

売上高(億円)営業利益率(%)
ENEOS HD:その他の事業(NIPPOを含む)の業績
(億円)売上高営業利益備考
2017年3月期4,846471東北支社発注分の排除措置命令・課徴金納付命令と有罪判決を受けた期
2018年3月期5,438426東京都等が発注した舗装工事の処分は2018年3月28日
2019年3月期5,27642430日間の営業停止処分を受けた期
2020年3月期5,074411
2021年3月期5,042491
2022年3月期4,9844942021年9月に非公開化で合意し、2022年3月29日に上場が廃止された
2023年3月期5,128465非公開化後もロードマップを通じて連結範囲に含めている
2024年3月期4,920512
2025年3月期5,025504
2026年3月期5,200928金属事業がその他の事業に移り、前期までの区分と連続しない
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第7〜16期(セグメントごとの業績)
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第7〜16期(セグメントごとの業績)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
先行事案の課徴金21億5,601万円防衛庁に納入する石油製品の入札。2008年1月16日にJX日鉱日石エネルギーが受けた命令
先行事案の決着2011年2月16日審判請求を退ける審決を受け、これに応諾して課徴金を納付した
NIPPOの起訴2016年2月29日東日本高速道路東北支社が発注する東日本大震災の舗装災害復旧工事の入札
排除措置命令・課徴金納付命令2016年9月6日同じ震災復旧工事の入札をめぐる独占禁止法違反による
有罪判決2016年9月15日東京地方裁判所。NIPPOと同社関係者が対象となった
関東支社発注分の処分2016年9月21日同じ震災復旧工事をめぐり、公正取引委員会から排除措置命令を受けた
東京都等発注工事の処分2018年3月28日東京都・東京港埠頭・成田国際空港が発注した舗装工事。排除措置命令と課徴金納付命令
営業停止処分30日間2018年6月7日に国土交通省が建設業法に基づき命じた。6月22日から7月21日まで
アスファルト合材の価格カルテル2019年7月30日2011年3月頃から2015年1月27日まで他8社と共同。課徴金減免で納付命令はなし
再発防止策の決議NIPPOの取締役会価格に関する情報交換を監視する体制の構築と、社内規程類の整備・周知徹底
非公開化の合意2021年9月7日ゴールドマン・サックス系の2合同会社と基本契約書・株主間契約書を締結した
非公開化の位置づけ事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化その一環として親子上場を解消し、再上場を目指すとした
上場廃止2022年3月29日2022年2月25日の臨時株主総会で決議した16,972,584株を1株とする併合による
保有株式の譲渡2022年5月10日NIPPOの自己株式取得に応じ、保有する同社株式の全てを譲渡した
譲渡後の議決権ロードマップが100%ロードマップ・ホールディングスはENEOSとGSSPCが出資する子会社
ロードマップへの出資比率35.0%普通株式50.1%とA種種類株式19.9%。GSSPCは両株式を合わせて65.0%
資本取引の影響連結損益計算書への影響はない2023年3月期に資本剰余金が約130億円、非支配持分が約110億円減少する見込みとした
グループの直近の事案2026年4月17日ENEOSウイングが軽油の販売をめぐり刑事告発され、東京地方検察庁が起訴した
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第1期(2011年3月期)【訴訟等】、第6〜10期(2016年3月期〜2020年3月期)【業績等の概要】、第12期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】、第16期(2026年3月期)【訴訟等】
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第1期(2011年3月期)【訴訟等】、第6〜10期(2016年3月期〜2020年3月期)【業績等の概要】、第12期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】、第16期(2026年3月期)【訴訟等】
当時の取締役16名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第1期(2011年3月期)【訴訟等】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第6期(2016年3月期)【業績等の概要】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第7期(2017年3月期)【業績等の概要】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第8期(2018年3月期)【業績等の概要】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第9期(2019年3月期)【業績等の概要】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第10期(2020年3月期)【業績等の概要】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第12期(2022年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第12期(2022年3月期)【連結財務諸表注記】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第16期(2026年3月期)【訴訟等】」

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