省庁関係者との会食問題(2021年・NTTの決断)

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論点監督官庁との会食をどう律するか
NTT:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
社外役員による特別調査委員会の設置と、会食ルールの策定による規律の引き直し2021年3月9日、特別調査委員会を設置した。調査の対象は、経営層と省庁関係者などとの会食である。委員長には社外取締役の榊原定征氏が、委員には社外監査役の飯田隆氏が就任した。

何をなぜ決めたか:社外役員による特別調査委員会の設置と、会食ルールの策定による規律の引き直し

概要

2021年3月9日、特別調査委員会を設置した。調査の対象は、経営層と省庁関係者などとの会食である。委員長には社外取締役の榊原定征氏が、委員には社外監査役の飯田隆氏が就任した。

委員会の報告を踏まえ、会食等に関するルールの策定を中核とする再発防止の取り組みを公表し、関係役員等に対して報酬減額等の処分を実施した。運用状況に関する適正な管理体制を構築することで、内部統制もあわせて強化するとした。

背景

持株会社と東西地域会社は、電気通信事業法に加えて日本電信電話株式会社等に関する法律の規制を受ける。定款の変更・合併・分割・解散の決議にも、事業計画とその変更にも総務大臣の認可が要り、代表取締役・取締役・監査役の就任と退任は総務大臣へ届け出る。監督官庁との距離は、この会社にとって事業の前提そのものだった。

2021年6月時点の取締役会は、独立社外取締役4名を含む取締役8名。執行役員制度を導入して決定・監督と業務執行を分け、取締役会を絞り込んだ直後にあたる。

内容

2020年度の取締役会の実効性評価では、第三者機関を起用した全取締役・監査役へのアンケートを通じて、コンプライアンスの体制と監督体制に改善すべき点があったことが指摘された。これを受け、会食等に関する社内ルールの見直しと厳格な運用を軸に、コンプライアンス体制の見直しと監督機能の強化を実施した。

監査役会は、特別調査委員会の報告とそれを踏まえた再発防止策を考慮に入れて必要な対応を行うとし、会食などに関する社内ルールの整備・運用状況を確認するとした。あわせて、リモートワークを基本とする新たな経営スタイルへの変革を掲げている。

含意

公表されたのは委員会の設置と再発防止の枠組み、そして関係役員等への報酬減額等の処分までで、誰にいくらの減額を科したかは開示されていない。連結業績への影響も示されていない。

2022年6月時点では、取締役会は独立社外取締役5名を含む10名、監査役会は独立社外監査役4名を含む6名となり、社外の目を増やすことで監督の体制が動いた。ただし監査役会は翌年に5名へ戻っている。

いつ何が起きたか6件
当時の取締役8名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

考察:認可で結ばれた相手との距離
考察

考察:認可で結ばれた相手との距離

この事案で問われたのは、会食という個々の行為の是非よりも、認可と届出で監督官庁と結ばれた会社が、その相手との距離をどう律するかという設計の問題だったと推察される。定款の変更にも事業計画にも総務大臣の認可が要り、役員の就任退任まで届け出る会社にとって、官庁との接触は避けられる類のものではない。だからこそ線引きは個人の良識ではなくルールで引くほかなく、会社が選んだのも、会食等のルールの策定と、その運用状況を管理する体制の構築だった。

もっとも、公表された対応は枠組みの提示にとどまる。処分は関係役員等への報酬減額等とだけ記され、対象も金額も外からは分からない。事案の記述は翌年の開示から消え、連結業績への影響も示されていない。外から確かめられる変化として残ったのは、独立社外取締役を4名から5名へ、独立社外監査役を3名から4名へ増やし、2025年には監査等委員会設置会社へ移って社外取締役比率を50%まで引き上げた、監督側の厚みだけだったのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

NTT:取締役会と監査役会の構成

取締役(名)独立社外取締役率(%)
NTT:取締役会と監査役会の構成
(名)取締役独立社外取締役監査役独立社外監査役備考
2016年3月期12253
2017年3月期12253
2018年3月期12253
2019年3月期15453独立社外取締役を2名から4名へ増やし、取締役会を12名から15名に広げた
2020年3月期8453執行役員制度の導入にあわせ、取締役会を15名から8名へ絞り込んだ
2021年3月期84532021年3月9日に特別調査委員会を設置。委員長は社外取締役、委員に社外監査役
2022年3月期10564独立社外取締役が5名、独立社外監査役が4名へ増加し、監査役会は6名となった
2023年3月期10553監査役会は5名へ戻った
2024年3月期10553
2025年3月期168−−2025年6月19日に監査等委員会設置会社へ移行し、監査役会を廃止した
2026年3月期168−−監査等委員会は監査等委員である取締役2名と同社外取締役3名の5名
出所:日本電信電話 有価証券報告書 第31〜41期(コーポレート・ガバナンスの状況等)。人数は各期の有価証券報告書提出日現在
出所:日本電信電話 有価証券報告書 第31〜41期(コーポレート・ガバナンスの状況等)。人数は各期の有価証券報告書提出日現在

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
調査の対象経営層と省庁関係者などとの会食会社が開示で用いた表現。会食の件数・相手方の氏名は公表していない
特別調査委員会の設置2021年3月9日社外取締役の榊原定征氏が委員長、社外監査役の飯田隆氏が委員として対応した
再発防止の取り組み会食等に関するルールの策定特別調査委員会の報告を踏まえて公表した
内部統制の強化運用状況に関する適正な管理体制の構築ルールを定めるだけでなく、その運用を管理する体制を置くとした
役員の処分報酬減額等関係役員等に対して実施。対象者と減額の幅は公表していない
コンプライアンス体制社内ルールの見直しと厳格な運用見直しを軸に、監督機能の強化をあわせて実施した
取締役会の実効性評価での指摘コンプライアンスの体制と監督体制2020年度の実効性評価での指摘。第三者機関を起用したアンケートによる
監査役会の対応社内ルールの整備・運用状況の確認特別調査委員会の報告と再発防止策を考慮に入れて必要な対応を行うとした
働き方の見直しリモートワークを基本とする経営スタイルビジネススタイルの刷新として、新たな時代に相応しい経営スタイルへの変革を掲げた
業績への影響記載なし連結財務諸表への影響は開示されていない
出所:日本電信電話 有価証券報告書 第36期(2021年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年7月13日・2021年10月20日)
出所:日本電信電話 有価証券報告書 第36期(2021年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年7月13日・2021年10月20日)
当時の取締役8名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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