ENEOS HD和歌山製油所の閉鎖と次世代燃料拠点への転換
- 概要
- 2022年1月、ENEOSホールディングスは和歌山製油所を2023年10月をめどに閉鎖すると発表し、予定どおり稼働を止めた。国内需要の縮小と脱炭素に対応して精製能力を絞り込み、跡地を次世代航空燃料などの拠点に転換する事業構造改革の一環にあたる。
- 背景
- 人口減少によるガソリン需要の縮小と脱炭素の潮流で、石油元売り各社は精製能力の過剰を抱えていた。ENEOSはすでに室蘭・知多で製造を停止し、根岸でも1ラインを廃止する計画を進めており、赤字が続く和歌山製油所も整理の対象となった。
- 内容
- 和歌山製油所の原油処理能力は日量12.8万バレルで、同社の原油処理能力の7%に相当する。大田勝幸社長は1月25日の会見で採算と能力の低さを閉鎖理由に挙げ、見直しは続くと述べた。和歌山県の仁坂吉伸知事は本社へ直談判して雇用維持を要求し、ENEOSは跡地利用の検討会設置を提案した。
- 含意
- 和歌山製油所は2023年10月に稼働を停止し、次世代航空燃料などのプラントへ転換する道を歩んだ。石油精製を縮小して次世代燃料へ主力を移す構造改革を、地域経済への打撃と引き換えに進めた判断であった。
筆者の見解
筆者見解
和歌山製油所の閉鎖は、石油元売りが避けられない需要縮小に対して、拠点の順次整理という漸進的な手法で向き合ってきたことの一断面といえる。室蘭・知多・根岸に続く整理として和歌山を止めた流れは、痛みの大きい一度の大リストラを避け、採算の悪い設備から段階的に落とす選択であったとみることができる。跡地を次世代航空燃料に振り向けた点には、精製から撤退するのでなく燃料事業の内側で作り替えるという同社なりの筋の通し方がうかがえる。
一方で、この判断が地域に残した課題は企業の財務では測りきれない。製造品出荷額の9割を一社の一工場が担う町では、閉鎖は雇用と税収の同時喪失を意味した。跡地の検討会が地元の不満を呼んだ経緯は、精製能力の集約が全国の企業城下町で今後も繰り返されうることを示唆する。事業構造の転換が地域の存立とどう折り合うのかは、和歌山にとどまらず脱炭素期の日本の重化学工業全体に投げかけられた問いとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
- ENEOSホールディングス 有価証券報告書(2022年3月期・連結)