サクセッションプランの再構築(2024年・ENEOS HDの決断)

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論点後継者の指名の仕組みをどう作り直すか
ENEOS HD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
社長が6代続けて3年以内に退いた会社の指名の仕組みの見直し持株会社の発足から2024年までに社長は6代替わり、いずれも在任は3年以内で終わった。初代の高萩光紀氏が26か月、松下功夫氏と内田幸雄氏が各36か月、杉森務氏が24か月、大田勝幸氏が22か月、齊藤猛氏が20か月である。

何をなぜ決めたか:社長が6代続けて3年以内に退いた会社の指名の仕組みの見直し

概要

持株会社の発足から2024年までに社長は6代替わり、いずれも在任は3年以内で終わった。初代の高萩光紀氏が26か月、松下功夫氏と内田幸雄氏が各36か月、杉森務氏が24か月、大田勝幸氏が22か月、齊藤猛氏が20か月である。

2022年8月12日に監査等委員でない取締役1名が辞任し、2023年12月19日には監査等委員でない取締役2名が退任した。2年連続で経営トップがENEOSグループ理念に反する不適切な行為に及んだことを痛恨の極みとし、2024年4月に宮田知秀氏が社長へ就任したうえで、後継者計画の再構築と取締役会の組み替えに入った。

背景

仕組みそのものは早くからあった。取締役会の諮問機関である指名諮問委員会は、会長および社長並びに主要な事業会社の社長の後継者計画を諮問される建て付けで、十分な時間と資源をかけるために毎年複数回開く決まりになっていた。2018年6月27日の第8回定時株主総会終結の時をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へも移っている。

社長の顔ぶれは出身母体の順送りで動いてきた。高萩光紀氏・松下功夫氏・内田幸雄氏は日本鉱業に入った旧日鉱系、杉森務氏・大田勝幸氏・齊藤猛氏は日本石油に入った旧日石系、2024年の宮田知秀氏は東燃に入った旧東燃ゼネラル系である。統合で生まれた持株会社が、統合前の系列を3代ずつ回してきた。

内容

報酬の取り戻しから入った。2022年8月12日に辞任した取締役については、2022年7月分と8月分の月額報酬12百万円の返還を請求して全額を受け取り、2022年度分の賞与12百万円相当と2020年度から2022年度までの株式報酬36百万円相当の没収を取締役会が決めた。2023年12月19日に退任した取締役1名についても、2023年10月分から12月分までの月額報酬18百万円の全額の返還を受けている。役員任用契約と役員処分手続規則に基づき、返還または没収を請求できる報酬の上限は原則として報酬等の4事業年度分と定めた。

選任の側も組み替えた。取締役候補者の人材デュー・デリジェンスでは第三者機関による本人インタビューとウェブテストを実施し、詳細な結果を指名諮問委員会へ報告する。会食に出席する取締役およびその同行者に関するルールを制定し、履践状況を取締役どうしで相互に監視させたうえで、定期的な360度評価の進捗を監査等委員会が確認する体制を置いた。

含意

取締役会の顔ぶれも変えた。2024年度から社外取締役の割合を50%超に引き上げ、取締役会の議長を社外取締役から選んでいる。次世代のENEOSグループを担う人材像を定義し直したうえで後継者計画を組み立て、取締役会がその磨き上げと監視を続けるという建て付けである。2024年度には経営層に求められる要件設定の明確化と、リーダーの選抜・育成の仕組みづくりも進めた。

指名諮問委員会の開催は、2023年3月期と2024年3月期が各7回、2025年3月期が6回、2026年3月期が5回。審議の中身は代表取締役およびグループCEOのあり方から、取締役選任プロセスのあり方、そして中長期的な成長に資する後継者計画の重要性へと移っている。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役16名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:順番が読める会社の後継者計画
考察

考察:順番が読める会社の後継者計画

6代続けて3年以内という並びは、人の問題というより設計の結果だとみられる。統合で生まれた持株会社が旧日鉱系を3代、旧日石系を3代と出身母体ごとに回してきた以上、次に誰が来るかは早い段階で読めてしまう。順番が読めているところでは、後継者計画は選ぶための仕組みではなく、決まっている人を確かめる手続きになりやすい。2年続けてトップが職を離れたあとに着手したのが、人材像の定義のやり直しと、第三者機関による本人インタビューやウェブテストという社外の目だったことは、そこを自ら認めた形に見える。

もっとも、仕組みで人を選べても、任期の短さが直るとは限らない。社外取締役を過半に据え、議長も社外へ渡した取締役会が、次のトップを長く置くのか短く替え続けるのかは、まだ何も決まっていない。返還と没収の上限を報酬等の4事業年度分と定めたのは、辞めさせたあとに取り戻す備えであって、辞めさせずに済ませる備えではない。宮田知秀社長は旧東燃ゼネラル系から初めて出たトップで、系列の順送りが一巡したところに立っている。7代目が3年を越えられるかどうかが、組み立て直した後継者計画に返ってくる最初の答えになるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

ENEOS HD:持株会社発足後の社長の在任

在任月数(か月)
ENEOS HD:持株会社発足後の社長の在任
(か月)在任月数備考
初代 高萩光紀(2010年4月〜2012年6月)26新日鉱ホールディングス社長から、統合で発足した持株会社の初代社長へ
2代 松下功夫(2012年6月〜2015年6月)36
3代 内田幸雄(2015年6月〜2018年6月)36旧日鉱系が3代続いた最後の社長
4代 杉森務(2018年6月〜2020年6月)24退任後は代表取締役会長グループCEO
5代 大田勝幸(2020年6月〜2022年4月)22退任後は取締役副会長、2022年10月から取締役会長
6代 齊藤猛(2022年4月〜2023年12月)202023年12月19日に退任。監査等委員でない取締役2名が同日で退いた
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第1〜16期【役員の状況】
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第1〜16期【役員の状況】

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
2022年の辞任2022年8月12日監査等委員でない取締役1名が辞任した
返還を請求した月額報酬12百万円2022年7月分と8月分。当該取締役から全額の返還を受けた
没収を決めた賞与・株式報酬48百万円相当2022年度分の賞与12百万円相当と、2020年度から2022年度までの株式報酬36百万円相当
2023年の退任2023年12月19日監査等委員でない取締役2名が退任。同日付で報酬の没収・減額・自主返上を公表した
返還を受けた月額報酬18百万円2023年12月19日に退任した取締役1名の2023年10月分から同年12月分まで
報酬決定の委任先の交代2023年12月19日齊藤猛氏から宮田知秀氏へ。取締役会決議に基づく委任先を同日で改めた
会社の原因認識2年連続で経営トップが不適切な行為に及んだENEOSグループ理念に反する行為であり、痛恨の極みであるとした
返還・没収の上限報酬等の4事業年度分役員任用契約と役員処分手続規則に基づき、原則としてこの範囲で請求できる
取締役選任プロセスの強化人材デュー・デリジェンス第三者機関による本人インタビューとウェブテストの結果を指名諮問委員会へ報告
取締役の行動管理会食のルールを制定会食に出席する取締役およびその同行者に関する定めを置いた
取締役のモニタリング360度評価履践状況を取締役どうしに相互監視させ、進捗を監査等委員会が確認する
後継者計画再構築次世代のENEOSグループを担う人材像を定義し直したうえで組み立てる
社外取締役の割合50%超2024年度から引き上げた。2026年3月期の中期目標でも50%以上の維持を掲げる
取締役会の議長社外取締役2024年度から社外取締役のなかから選定している
指名諮問委員会の開催年5〜7回2023年3月期・2024年3月期が各7回、2025年3月期が6回、2026年3月期が5回
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第13期(2023年3月期)・第14期(2024年3月期)・第15期(2025年3月期)・第16期(2026年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の報酬等】
出所:ENEOSホールディングス 有価証券報告書 第13期(2023年3月期)・第14期(2024年3月期)・第15期(2025年3月期)・第16期(2026年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の報酬等】
当時の取締役16名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第13期(2023年3月期)【役員の報酬等】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第14期(2024年3月期)【対処すべき課題】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第14期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第14期(2024年3月期)【役員の報酬等】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第15期(2025年3月期)【人的資本経営】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第16期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ENEOSホールディングス 有価証券報告書「第1〜16期【役員の状況】」

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